2024年09月06日
「自立」と「自律」。
似たようでいて少し違う2つの言葉の意味を説明できるでしょうか。
特に、現代のビジネス環境では、自立と自律の両方が求められる場面が多くあります。2つの言葉の違いをきちんと理解することで、さらなる自己成長のヒントが得られるかもしれません。
まず、「自立」について考えてみましょう。
自立とは、他人の支援を受けずに、生活や仕事に取り組み、問題を解決していけることを意味します。
大学生活の始まりや就職を機に家族から離れて一人で生活したり、仕事を通じてお金を稼いだり、自分の生活を管理することが「自立」にあたります。これは、家族や友達に頼らず、自分の力で生きていく能力を指します。自立ができるようになると、他人に依存せずに、自分の人生を自分でコントロールできている実感をもつことができます。
自立とは他人に頼らず自分で物事を進めることですが、自律はこれとは少し異なります。
「自律」は、自立に比べて、より心理的な側面に重点を置いた意味となり、自分の感情や欲望に流されず、冷静に考えて行動できる能力のことです。
例えば、友達に誘われて遊びに行きたいけれど、自身で決めた勉強やトレーニングなどを優先する場合、これは自律したことになります。自分の欲求や楽しみを一時的に我慢して、長期的な目標を優先することができるのが自律した人といってよいでしょう。
自立と自律の大きな違いは、自立が「外部的な行動」に焦点を当てているのに対して、自律は「内部的なコントロール」に焦点を当てている点です。自立するためには、自分で行動する力が必要ですが、自律するためには、自分の感情や思考をしっかりと管理する力が求められます。
自分でコントロールするという意味では、「自主性」も似た意味を持つ言葉ですが、自立や自律との違いはなんでしょうか。自主性は、自分の意志で行動を起こすことを意味します。自主性を持つ人は、指示を待たずに自分から進んで物事を行うことができます。
自立と自主性は似ているように思えますが、自主性は「自分から動く」という意欲や行動力に重きを置いている点が特徴です。
自立は、他人に頼らずに生活する能力を含みますが、自主性はその中でも「自分から行動する」という積極性に特に焦点を当てています。
また、自律とも違いがあります。自主性は「行動を起こすこと」にフォーカスしているのに対して、自律は「感情やそれに伴う行動を適切にコントロールすること」にフォーカスしています。つまり、自主性は「やる気」や「積極性」に関連し、自律は「計画性」や「自己管理」に関連するのです。
目まぐるしく状況が変わり、先行きが不透明で将来の予測が困難な現代。そうした環境変化を受け、昨今は「自律型人材」という考え方が注目されています。一体どのような人を指すのでしょうか?自律型人材に求められる3つの重要な要素について説明します。
自律型人材の特徴の一つに、自己決定能力があります。これは、状況に応じて自分で判断し、行動できる能力を意味します。自己決定能力が高い人は、他人の指示を待たずに、自分で考え、その場その場で最適な行動を取ることができます。
特にビジネスの現場は変化が激しいため、常に新しい課題や問題が発生します。自己決定能力を持つ人は、こうした変化に対して柔軟に対応し、自分で解決策を見つけることができます。例えば、プロジェクトが予定通り進んでいないとき、何が問題かを分析し、自分で改善策を提案することができる人材が求められます。
自律型人材には、柔軟な思考も求められます。柔軟な思考とは、固定観念にとらわれず、新しいアイデアや方法を受け入れられることです。
例えば、今までのやり方がうまくいかなくなったとき、柔軟な思考を持つ人は、別のアプローチを考えることができます。また、異なる意見や視点を尊重し、自分の考えを見直すことができるのも柔軟な思考の一つです。このような思考ができる人材は、チーム内でのコミュニケーションや問題解決において、非常に重要な役割を果たします。
最後に、自律型人材にとって欠かせないのが、継続的な学習です。現代のビジネス環境では、技術や市場のトレンドが急速に変化しており、常に新しい知識やスキルを学び続けることが必要です。
現状に満足せず、自分の能力を高めるために、積極的に新しいことを学ぼうとする学習意欲が高いのが特徴です。また、自分の弱点を認識し、それを克服するための努力を惜しみません。このような姿勢は、個人の成長だけでなく、組織全体の成長にも大きく貢献します。
教育やビジネスの場で自律型人材を育成するためには、教育機関や組織が積極的に支援を行うことが重要です。以下に、自律型人材を育成するための具体的な方法を紹介します。
自律型人材を育てるための第一歩は、責任感を育むことです。責任感を持つことで、自分の行動が他人にどのような影響を与えるかを理解し、慎重に行動するようになります。これは、小さなタスクから始め、徐々に責任の範囲を広げていくことで育成できます。
意思決定の機会を提供することも重要です。自分で考えて決断する経験を積むことで、自己決定能力が鍛えられます。これには、プロジェクトの一部を任せたり、グループ内でリーダーシップを発揮させたりすることが有効です。
自律型人材は、継続的なフィードバックとサポートを通じて成長します。成功だけでなく失敗からも学ぶことができるよう、適切なフィードバックを提供し、必要なサポートを行うことが大切です。これにより、「ここをさらにスキルアップしよう」「今回は上手くいかなかったけれど、次はこうしてみよう」と自己改善の意識が高まり、自律的に学び続ける姿勢が身につきます。
「キャリア自律」という言葉も、ビジネス界で注目されています。キャリア自律とは、自分のキャリアを自分で計画し、主体的に開発していく力を指します。これは、組織の指示に従うだけでなく、自分の将来を見据えて行動する姿勢を意味します。自分が何を目指し、どのように成長していきたいかを明確にし、そのために必要なスキルや経験を積み重ねることが重要です。
終身雇用が崩れ、年齢や勤務年数に応じたキャリアのレールが用意されなくなった今、個人が自分のキャリアを自己責任で築く必要性が求められています。
企業もまた、個々の社員が自らのキャリアを主体的に考え、スキルアップを図ることで高いパフォーマンスを発揮することを期待しています。このような背景から、キャリア自律が重要視されるようになっています。
注目を集める一方、キャリア自律が進まない現状もあります。
理由として、キャリア自律には自己分析や目標設定が不可欠ですが、それがうまくできない人も多いためです。また、組織側がキャリア自律を支援する体制を整えていない場合も、個人がキャリア自律を進めるのが難しくなります。さらには、自分のキャリアについて考える時間や機会が十分に与えられていないことも一因でしょう。
キャリア自律を促進するための方法はたくさんありますが、まずは以下の3つから始めてみてはいかがでしょうか。
まず、自分自身をよく理解することが重要です。自己分析を行うことで、自分の強みや弱み、興味関心を把握し、キャリアの方向性を明確にすることができます。目的地が分からず走り続けていても、永遠に目的地へたどり着けないのと一緒で、まずはおおよその向かう先を決めることが大切です。これには、キャリアカウンセリングや適性検査などを活用することが効果的です。
次に、明確なキャリア目標を設定し、その達成に向けた具体的な計画を立てます。漠然とした願望ではなく、自分はどのようなキャリアを歩みたいのか、どんなふうになりたいのかという目標をきちんと設定することで、何を学び、どのような経験を積むべきかが明確になります。
ネットワーキングやメンターシップの活用もキャリア自律を進めるために役立ちます。業界内の人脈を広げたり、経験豊富なメンターからアドバイスを受けたりすることで、キャリアに関する新しい視点や知識を得ることができます。これにより、より具体的なキャリアプランを描くことができるようになるでしょう。
「自立」と「自律」、そして「キャリア自律」は、いずれも現代社会で重要な概念です。自立は、他人に頼らず自分で行動する力を意味し、自律は自分自身をコントロールして適切に行動する力を指します。さらに、キャリア自律は、自分のキャリアを主体的に計画し進める力です。
現代のビジネス環境では、これらの力がすべて求められています。特にキャリア自律は、個人が自分の将来を切り開くために必要なスキルといえるでしょう。
キャリアを会社に依存できた受け身の時代はとうの昔。「忙しくて、キャリアを考える時間もなくここまできてしまった」という人も、積極的に自身のキャリアを考え、自分の力で切り拓いていくスキルを磨いていきましょう。
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\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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