本当の自分がわからなくなってしまうのはなぜ?原因や解決方法を解説

ECブログ

普段から電車に乗る人であれば、毎日どこかで「本当の自分をみつけよう」「本当のあなたに出会える」という類のフレーズを目にしているのではないでしょうか。美容関係の広告や学校案内、自己啓発本やセミナーの案内などでも繰り返し使われるこれらのフレーズは、人々の「成長したい」「もっときれいになりたい」という欲求を刺激します。
落ち着いて考えてみると、自分はここにいるのにさらに別の自分がいるというのはちょっと不思議な話。そもそも“本当の自分”とは何なのでしょうか?

* この記事の要点 *
・空気を読んだり、周囲の期待に応えようとする気持ちが強すぎると自分を見失う。
・対話により自己理解を進める人もいれば、ひとりでじっくり自分と向き合うタイプの人も。
・他人を尊重しながらも「自分らしさ」を守ることが大切。
目次▽▲▽

本当の自分がわからないとは?

自分が何をしたいのか、何が好きなのか、どんな人生を生きたいのかよくわからない。勉強や仕事が手につかないほど思い悩んでいるわけではないけれど、自分の中にぼんやりと浮かぶ「本当の自分がわからない」という感覚はいったい何を意味しているのでしょうか?
自己の存在意義や個人としての役割、価値観を見失っている状態は、心理学や社会学ではアイデンティティ・クライシスと呼ばれ、思春期や中年期に多く見られ、就職や結婚、出産、退職などの人生の大きな変化がきっかけになることもあります。
一方で「本当の自分」という言葉には、今ここにいる自分は仮の存在であり、しかるべきタイミングでより良い本当の自分が現れるはず、といったうっすらとした期待も感じられます。一方でこれは自分自身の現状に向き合うことなく「今の自分は本当の自分ではない」と都合よく考える、一種の逃避的な心の動きと見ることもできます。

本当の自分がわからなくなってしまう要因とは

自分がわからなくなってしまう要因について、臨床心理士の玉井仁さんの著書『私、合ってますよね?しちゃう、できない、やめられないの正体』を参考にしながら一緒に考えてみましょう。

他人の期待に応えようとしすぎている

子供は親や教師の顔色を敏感に読み取り、できるだけ大人の期待に応えようします。そのため、優しくて根が真面目な子供ほど「いい子」や「できる子」として期待に応えているうちに、自然と他人の価値観に合わせる立ち振る舞いを身につけてしまうのです。
そんなふうに周囲の評価を自分の基準にしてしまうと、無意識のうちに「他人にとって都合のいい自分」を演じ続けることになり、本当の自分がわからなくなってしまいます。

「子どもが持つ自然な一側面として、親など他者の顔色を見る力があります。そのような力が強い子どもの場合、自分が『できた』とい感じたときにその成果を誇るよりも、他者に『どう?』と確認をします。ある意味で、その成果を一時的にでも“親に託す”のです。そこで『あなたの頑張りだね、すごいね』と返されることで、その子はようやくそれが自分の成果だと感じられるのです」

出典:私、合ってますよね?しちゃう、できない、やめられないの正体

自分の感情を抑えるクセがある

ある程度の感情のコントロールは大切ですが、抑圧が強すぎるのも考えものです。感情を表に出さずに我慢する癖のある人は、常に緊張した状態で過ごすことになります。怒りや悲しみなどのネガティブな感情は自分の状況を伝えてくれる“心のアラーム”として働きますが、そのアラームに耳を貸さず気持ちにフタをすることを続けていると、やがてその音さえも聞こえなくなってしまいます。感情を押し殺していたせいで自分の感情に鈍くなってしまうのです。

周囲と比較してばかりいる

うまく使えば便利なツールであるSNSも、そこでの”映え“に重きを置くようになると、他人や世間の評価が気になるようになります。どのような結果であれ、そのときの判断が「正解だったかどうか」は当事者だけが決められること。その基準を他人にゆだねてしまうと、目に見えるわかりやすい結果ばかりを追い求めてしまい、人生の岐路で自分らしい選択をすることが難しくなります。

過去の失敗やトラウマに引きずられている

過去にみずから動いたことで失敗した経験があると、自己評価が下がって自発的な行動を避けるようになります。「もうあんな思いはしたくない」と自分で決めること、行動することが怖くなってしまうのです。
もともと積極的なタイプの人であっても、周囲から強く責められたり、親から「余計なことをするな」と叱責されたりすることが続くと「人の意見を聞いておくのが安心だ」と思い込んでしまいます。

周囲に合わせすぎている環境にいる

学校や会社など集団生活において周囲への配慮や協調性は欠かせませんが、これも行き過ぎるのはよくありません。自分の本音を隠して、その場に合わせた言葉ばかりを吐いていると、思考にぼんやりと霞がかかったように感じられることでしょう。
企業や上司にとっては、社員が意見を持たない方が“都合がいい”と「自分の意見がない方がラクじゃないか?」と感じてしまう環境に置かれることもあるでしょう。それでも、上の意向にばかり従って、自分の意見を持つことを諦めた社員に重要な仕事が回ってくることはありません。

「日本では『空気を読んで事を荒立てない』のが良いとされる傾向があります。しかしそれが強くなりすぎると、相手の思いを汲んで、自分の欲求を押さえてでも相手の欲求を満たそうとするパターンにはまってしまうことがあります」

前掲書

やりたいことがない、考える時間がない

「忙しい」という漢字を分解すると、りっしんべん(心)を亡(な)くすになるように、時間に追われる毎日では誰もが心の余裕を見失います。やりたいことを考える間もなく、ルーティーンの中で流されるように日々を過ごしてしまうのです。いったん立ち止まって、何もしない時間の中で初めて気づくことも少なくありません。
中には「そもそもやりたいことがない」という人もいるかもしれませんが、すべての人が大きな目標を持ち、がむしゃらに理想に突き進む必要はありません。普通の暮らしを守りながら「ベランダで植物を育ててみよう」「夕食はできるだけ自炊しよう」といった小さな希望や目標も立派な“やりたいこと”ではないでしょうか。

自分のことを話せる相手がいない

人と会話を通して自分の本当の気持ちに気づいたり、頭の中がクリアになったりすることがあります。作家や芸能人などの著名人はインタビューで毎回似たようなことを繰り返し聞かれます。そのため型にはまった回答になりがちですが、インタビュアーの質問によっては本人も意識していなかった本音が引き出されることも。人と話すことは自分自身を理解することと密接につながっています。

20250612_2

本当の自分がわからないときの解決法とは?

続いては「本当の自分がわからない」という感覚から抜け出す方法についてご紹介します。

ひとりで過ごす時間をつくる

人と会話をしながら理解を進める人がいるように、ひとりでじっくり自分と向き合う時間が必要な人もいます。瞑想で無心になる時間は日々のストレスや雑念から離れられますし、読書や歴史を通して偉人や作家の言葉から自分を見つめ直すこともできるでしょう。育児や介護をしている人は、子供や高齢者から目が離せず自分のことが二の次になりがちですが、そんなときこそ意識して「ひとりの時間」を持ちたいものです。

感情日記をつけてみる

「やばい」や「エモい」などの若者言葉は汎用性が高くて便利ですが、自分の気分にぴったりとはまる表現を見つけたときの喜びは筆舌に尽くしがたいものがあります。感情に関する語彙を増やし言葉に敏感になることで、自分の気持ちを正確に表現できるようになります。
言葉を使いこなす訓練として、感情日記をつけてみるのはいかがでしょうか?その日にあったことを記録するだけでなく、そのときの気分を「晴天」や「どしゃぶり」などの天気で表現するだけでも構いません。しばらく感情の動きを追っていると「体を動かした日は気分がいいみたい」「この人に会うと不安定になる」などといった傾向や気持ちのバイオリズムも見えてきます。

小さな「好き」「嫌い」に敏感になる

日々の中で出会う「好きなこと」「嫌いなこと」に意識を向けてみましょう。「自分はあんまり気にしないタイプ」と思っている人も、みずからの好みを丁寧に掘り下げてみると「この香りが好き」「この肌触りはちょっと嫌かな」という小さな好き嫌いが見つかるはずです。
触覚や嗅覚、味覚などは匂いや味を感じるだけでなく、感情や行動にも大きく影響を及ぼします。特に皮膚は“第3の脳”と呼ばれ、心地のいい感触のものに触れると気持ちが落ち着き、ストレス軽減につながることが知られています。

他人の価値観をいったん手放す

長年の研究が成果を出す、華々しい活躍がメディアで紹介されるなど、ある種のわかりやすい成功もその人の努力が実を結んだ結果。「同世代なのにどこで差がついたのだろう」ともやもやしたり「自分の方ががんばっているのに」と悔しい気持ちになったりするのもわかりますが、自己実現のかたちはひとつではありません。SNSなどで目に入ってくる他人の成功に嫉妬している時間よりも、自分が本当にやりたいことに取り組む時間を優先した方が有意義だとは思いませんか。

心から安心できる相手に話す

自分を否定せず、受け止めてくれる人に本音を話すことで、自身も気づかなかった自分の思いや新しい一面を知ることがあります。世間話をする知り合いはたくさんいるけれど「深い話ができない」という人もいるかもしれませんが、話す相手は必ずしも顔見知りである必要はありません。SNSやオンラインゲームでのコミュニケーションは相手の顔が見えませんが、その分、安心して本音を打ち明けられたりします。

自己分析ツールを使ってみる

自己分析と聞くと就職活動中の大学生がやるものというイメージがありますが、最近は気軽に試せるツールやサービスがたくさん登場しています。若者の間ではいくつかの質問に答えることでその人の傾向を教えてくれる性格タイプ診断のブームが続いていますし、社員の成長のために個人向けのコーチングを取り入れる企業も増えています。ちょっとだけ背中を押してもらいたいときには、占いや性格診断のようなライトなものも役立つかもしれません。

一度、迷っていることから離れてみる

初心者がデッサンを学ぶ際、描いている最中にときどき席を立ち、画面やモチーフを遠くから眺めるよう指導されます。これは画面全体の構図のバランスを確認するため。集中して描いていると小さなバランスの狂いが後戻りできないミスにまで発展してしまうこともありますから、細部ばかりにこだわるのではなく、大きな印象(全体感)をつかむのが何よりも大切というわけです。
何かを選ぼうとする場面で大きなプレッシャーを感じて自分が「本当に求めるもの」がよくわからなくなることは珍しくありません。その選択が自分にとって大きなものであるほど、「本当にこれでいいのだろうか」という迷いが生じます。そんなときは、絵を描くときと同じように物理的に離れることで客観性を持って自分自身を見つめられるようになります。

20250612_1

自分とみんなのバランス

発達心理学において青年期(13~28歳頃)はアイデンティティが確立される年代とされます。いろいろな体験を重ね、人と出会う中で自分の社会的な立ち位置や方向性など「自分は何者なのか」を模索していく大切な時期です。
成長するにつれて他人への配慮や協調性が求められる場面が増えていきますが、いつも他人に譲りすぎて、自分のやりたいことを後回しにしていると自分自身を見失ってしまいます。他者を尊重しながらも「自分らしさ」を発揮できるいいバランスを考えることが大切です。

「学童期までは、どちらかというと『人と同じ』という側面が強調される傾向にありましたが、青年期以降になると個人の違いに対する自覚が高まります。違いを感じるがゆえに他者に対して配慮をする姿勢を保持することは大切ですが、それは『自分はこう考える、こう感じる』といった主張をしながらもできることです。『同じだから仲間だ』という意識から、少しずつ『違うからこそお互いに助け合い、学び合える』という意識へと進めるのです。お互いの違いを率直に認め合えたことで対話が生まれ、関係が深まっていくこともあります」

前掲書

本当の自分がわからないときは病気の可能性もある?

「自分の感情がわからない」「自分が自分でない気がする」「自分が空っぽに感じる」といった心情が長く続き、理由もなく涙が止まらなかったり、仕事や家事に手がつかず日常生活に支障が出たりする場合は、うつ病や適応障害、自己愛性パーソナリティー障害などの心の病気が関係している可能性があります。
問題をひとりで抱え込んでいても心は軽くなりませんから、できるだけ早めに専門家や医療機関に相談してみてください。誰に相談したらよいか分からないという方は、以下の厚生労働省の相談窓口を利用してみましょう。
 https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/ (働く人のメンタルヘルス·ポータルサイト「こころの耳」)

まとめ

かつての若者たちは自分を探すためにバックパッカーでインドを目指したり、学生運動に傾倒したり、文学やアートの世界にのめり込んだもの。ですが、自宅にいながらインターネットで世界とつながれる時代の“自分探し”は昔の時代と少し趣向が変わっているかもしれません。
とはいえ、時代が変わっても人生のどこかで「自分とは何か」を考えなければいけない時期は必ず訪れます。そんなとき、他人の意見に惑わされず「本当の自分」を見つけることができたなら、長く続く人生をより自分らしく生きることができるのではないでしょうか。

ニューモラル出版

\ この記事の監修者 /

ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。

ニューモラルブックストアでは、よりよい仕事生活、よりよい生き方をめざす、すべての人に役立つ本や雑誌、イベントを各種とりそろえています。あなたの人生に寄りそう1冊がきっと見つかります。

誰も分かってくれないと思ってしまうのはなぜ?要因ややわらげる方法を解説に関するおすすめ書籍はこちら

1308_500_1
1151_7tunokannjou500_01

関連リンク

bucchake

年代の異なる4人の女性たちが繰り広げる「ぶっちゃけトーク」はこちら!

メールマガジン

スマホから登録

<サンプルを読む>
メールマガジン2
↓↓他の記事を読んでみる↓↓(画像クリックで各カテゴリー記事に飛びます)
人間力
思いやり
礼儀マナー
人間関係
ストレス
親子関係
学び
ビジネス
習慣づくり

関連する投稿

人気ブログ

おすすめ書籍

月刊誌

ページトップへ