人の行動や心理状況がわかる行動心理学とは?代表的な効果も解説

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朝食の用意をしていてテレビ番組の「今日の運勢」コーナーを目にしたとき、コンビニのお菓子の棚の前でどれを買おうか迷ったとき、仕事でできるだけ有利な交渉をしようと会話の糸口を切るとき――。普段、あまり意識することはありませんが、私たちは日々、無数の選択や判断をしています。

その際、人が無意識のうちに、社会や生活の中に張り巡らされた、さまざまな心理効果の影響を受けている事実を知っている人は意外と多くありません。今回は人間関係や仕事、買い物などの身近な消費行動にもかかわる行動心理学の効果についてご紹介します。

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行動心理学とは?

行動心理学とは、人間の行動に着目し、その背後にある心理的なメカニズムを研究する学問です。個人の行動や選択を理解し、予測するための理論やモデルが数多く提唱されています。中には交渉テクニックとして体系化されているものもあり、日常生活からビジネス、教育現場まで幅広く応用されています。

行動心理学で提唱されている10の効果

行動心理学では、特定の状況や刺激が人間の行動にどのように影響を与えるかを説明する「○○効果」というものが数多く提唱されています。ここでは代表的な10の効果を紹介します。

1.ハロー効果

ある対象が持つ一部の目立つ特徴が、その対象の全体の評価に影響を与える心理効果です。例えば、魅力的な外見を持つ人に対して、無意識に「仕事ができそう」「性格も良さそう」というポジティブな印象を抱くのもハロー効果の働きです。外見だけではなく、学歴や肩書などの要素に影響されることもあります。

2.ザイアンス効果

ある対象と繰り返し接触するうちに、自然とその対象に対しての好感度が高まる効果です。日本語では「単純接触効果」とも呼ばれ、その対象は身近な人だけでなく芸能人や商品、音楽、味や香りなど多岐にわたります。メーカーや広告代理店がCMやポスターなどの露出に力を入れるのも、このザイアンス効果を狙ったものです。

3.ピグマリオン効果

他者からの期待を受けると、その期待に沿った成果を出すことができるという心理効果です。具体的に言葉にしなくても、他人から「期待されている」と感じるとやる気が出て、それが結果につながるのです。別名で「教師期待効果」とも呼ばれ、教育現場やビジネスなどさまざまなシーンで活用されています。

4.ゴーレム効果

ピグマリオン効果と対極にある効果です。他人との関係の中でまったく期待をされずにいると、パフォーマンスや作業効率が下がってしまう現象です。
仕事場や家庭で、部下や子供に対して「あの子はできない子」と決めつけたり、「あいつには何を言ってもムダ」とネガティブなレッテルを貼ったりしてしまうと、当事者のモチベーションが下がり、成果を上げることが難しくなります。

5.ドアインザフェイス効果

こちらもビジネスでよく使われる心理効果です。特に相手に何かを要求して、それに応じてもらいたい(買ってもらいたい)ときに大きな効果を発揮します。
先に、本来の要求よりも大きな要求を投げかけ、まず相手に「それはできない」と断らせます。その後、改めて本命の要求を伝えることで、相手の「一度断っているし、これくらいは受け入れようか」という返報性(お返し)の心理を利用することで、交渉を有利に進めることができるのです。この方法は営業テクニックとしてだけでなく、恋愛や家庭内で自分の要求を通したいときにも役立ちます。

6.フットインザドア効果

先ほどのドアインザフェイス効果とは異なり、まずは相手が受け入れやすい小さな要求を経て、段階を踏みながら、徐々にその要求レベルを大きくしていく方法もあります。人が無意識のうちに態度や行動に一貫性を持たせようとする心理(一貫性の原則)を利用しています。
サービスを無料で提供するお試し期間や、化粧品会社などが配る試供品もこの効果を活用した一例です。「フットインザドア」というのは訪問販売に訪れた営業マンが客に話を聞いてもらうため、扉を閉められないように靴の先をドアに差し入れる動作に由来しています。

7.カリギュラ効果

鶴の恩返しの話を例に出すまでもなく、「見てはいけない」と言われると、余計に見たくなるのは人間の性ですが、ある特定の行為や事柄を強く禁止されると、かえってその対象に対する興味や欲望が高まるという心理効果です。
学術的な用語でありませんが、実用書などで取り上げられることもあり、近年は広く認識されるようになりました。CMや広告、映画の予告編などでも使われ、重要な情報を「あえて隠す」ことで視聴者の興味関心を刺激します。

8.プラシーボ効果

服用した薬に有効成分が含まれていない(実際には治癒効果がない)にもかかわらず、症状の改善や回復傾向がみられる現象で「偽薬効果」とも呼ばれます。自己暗示や自然治癒力が背景にあると考えられ、人によってプラシーボ効果が表れやすい人、表れにくい人がいます。
このような脳の思い込みの効果はなかなか侮れないものがあります。ただ、それがネガティブな方向に振れると、なかなか立ち直れないケースもあるので注意が必要です。

9.バーナム効果

先ほどのプラシーボ効果とも少し似ていますが、実際には誰にでも当てはまるような内容であるにもかかわらず、まるで「自分だけに当てはまっている」ように感じる心理効果です。人が持つ「自分にとって都合のいいことを信じたい」という確証バイアスが大きく影響していると考えられています。
血液型診断や占い、おみくじなどはバーナム効果の代表的な事例です。「B型はこんな性格」「おとめ座はこんな人」と多くの人に該当するような曖昧な表現にもかかわらず、「これは自分のことを言っている」と感じ、その結果や相手の言うことをすっかり信用してしまうのです。

10.ライセンシング効果

自分が善い行いをしたと考えることで、それが免罪符となり、その後の行動に気のゆるみが出てしまう現象です。「この前いいことをしたから、少しくらい悪いことをしてもいいだろう」という潜在意識が働くのです。
同じように「たくさん運動をしたから甘いものを食べてもいい」と考えてダイエットに失敗してしまうのも、このような心理が働いていると考えられます。節約中の衝動買いなども同様ですが、これを“自分へのご褒美”や“プチ贅沢”という言葉に置き換えて、自分に言い訳をするのです。

行動心理学を活用できるシーン

行動心理学を普段の生活に落とし込んで考えると、仕事や恋愛、教育などのさまざまな場面で活用することができます。

仕事での活用

多くの仕事は取引先や、商品やサービスを届ける先の顧客(お客さん)との関係で成り立っています。ですから、行動心理学の知識は特に営業やマーケティングなどの仕事において、顧客や消費者の行動を予想したり誘導したりすることで、より効果的な提案や交渉を行うことができます。
なかでも広告業界と行動心理学の関係は切っても切り離せないものがあります。同じ商品の広告を繰り返し放映して、ザイアンス効果(単純接触効果)で商品に対する親しみを醸成して購買行動につなげる。CMに有名人を起用して、そのハロー効果でブランドイメージを向上させる――などの手法も一般的です。また「今だけ」「限定!!」といった表現はカリギュラ効果を狙ったものです。

恋愛での活用

気になる相手の仕草や行動から、その本音を読み解くことができるとしたら、恋愛関係において誰よりも優位に立てることは間違いありません。狙った相手に好印象を持ってもらうには、先ほども登場したザイアンス効果などが効果的でしょう。
ドアインザフェイス効果やフットインザドア効果は相手との距離を縮め、関係を進展させるための恋愛テクニックとしても活用できます。例えば、初対面で「こんど旅行に行こうよ」と無理なお願いをすれば、当然断られますが、その後「「じゃあランチだけでもどう?」と言われたら、「それくらいだったらいいかな」と相手も受け入れやすいですよね。
また、恋愛のはじまりにおいては表面的な言葉よりも、目線の動きや姿勢の向きなどの非言語的コミュニケーションに、隠した好意や素直な想いが表われていることも少なくありません。それが意味することをすぐさま理解することができたなら、交際が始まってからも相手との関係においてイニシアチブ(主導権)も握れるはずです。

教育での活用

行動心理学の知識を応用すれば、学校や家庭で子供のモチベーションを上げることはそれほど難しくないかもしれません。例えば、先ほどご紹介したピグマリオン効果などはアメリカの小学校ですでに実験が行われています。
あるクラスで一般的な知能検査のためのテストを行い、テスト後に(検査結果とは関係なく)ランダムに抽出した生徒のリストを担当教官に見せて「数か月以内にこれらの生徒の成績は向上する」と伝えたところ、実際にそのリストに名前があった生徒たちの成績が上がったのです。
この実験結果から、人は期待を受けると「その通りの結果を出しやすくなる」ということがわかります。このような心理効果は家庭学習や子供とのコミュニケーションでも役立ちます。

行動心理学を学ぶメリットとデメリット

行動心理学はうまく扱えば、仕事の生産性を上げたり、より良い人間関係を築いたりと、さまざまな場面で役立ちますが、その場の雰囲気や相手との関係をきちんと見極めることなく、表層的なテクニックだけを利用しようとすると失敗する恐れがあります。

【メリット1】他者の行動を理解できる

行動心理学を学ぶことで、人がどのような要因で行動を決定するのかを理解しやすくなります。相手の反応の背景を理解することで、次の行動の想像がつくようになるからです。一歩先を見通すことができるので、不要な衝突を避けたり、人間関係のトラブルを未然に防いだりすることもできるでしょう。

【メリット2】自分の行動を改善できる

心理効果に関する知識があると、自分の行動に対して自覚的になります。広告やCM、営業トークなどに踊らされて、必要ないことに時間を使ってしまったり、不要なものを買って散財してしまったりすることも減っていきます。

【メリット3】問題解決能力が高まる

行動心理学の知識があれば、対人関係でトラブルが発生した際に相手の心理状態を考慮しながら適切な対応を取ることができるでしょう。職場での意見の対立があった場合なども、感情に流されず冷静に状況を分析し、当事者の顔を立てながらも解決に導く方法を見つけられるはずです。

【デメリット1】誤った解釈のリスク

行動心理学は確かに恋愛テクニックや営業テクニックに応用できる部分もありますが、その要因や背景についてきちんと理解しないまま、「こうすればうまくいく」と決めつけて浅い知識で扱おうとすると、かえって良くない結果を招いてしまうかもしれません。

【デメリット2】適用範囲が限定される場合も

行動心理学は特定の場合においては有効ですが、すべての状況に適用できるわけではありません。それぞれの考え方や大切にしていることが異なるように、人によっては一般的な心理法則が適用しない場合もあるということを心に止めておきましょう。

【デメリット3】人を操作する意図と受け取られるリスク

心理学の知識を活用することで、交渉を有利に進めたり、時間をかけずに相手との距離を縮めたりと物事が有利に働くことは少なくありません。ただ、その相手も同じように心理効果についての知識があったとしたら……? あなたの言葉や行動に不信感を抱き、「こちらを操作しようとしている」と感じても不思議ではありません。

まとめ

ご紹介した中で気になる心理効果はありましたか? 意外と身近なところで心理効果が活用されていることに驚いた人もいるのではないでしょうか。行動心理学の知識は仕事や人間関係を円滑にして人生を豊かにすることができます。自分の行動を振り返る際にもぜひ役立ててみてください。

ニューモラル出版

\ この記事の監修者 /

ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。

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