人間不信とはどんな状態?原因や治し方を解説

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親しい人に裏切られたり、心が傷つく体験をしたり。学校や職場などの集団生活に身を置いていれば、誰でもふとした拍子に人間不信に陥る可能性があります。人間不信の原因や対処法について考えてみましょう。

目次△▼△

人間不信ってどういう状態?

人間不信とは、何らかの原因により他人を信じられなくなる心の状態です。人間関係でいざこざを経験して厭世(えんせい)的な態度が強まっているケースもあります。
多くの場合は社会生活を送れないほど重度ではなく一時的な状態であることも少なくありませんが、コミュニケーションにおいて相手の言葉や行動を疑い、常に「この人は本当のことを言っているのだろうか?」と緊張状態が続くのはつらいものです。
臨床心理士の玉井仁さんは、個人の心のクセや行動パターンについて解説した著書『私、合ってますよね?しちゃう、できない、やめられないの正体』の中で、誰のことも信じられない人の特性を「いつも力が抜けないさん」と名付け、わかりやすく解説しています。
そのような人について心理的な視点から「不信感が強くなりやすい人は、『まいっか』という心のクッションが薄いので、ジェットコースターのような激しい感情の変化に振り回され気味になる」と伝えています。

「信頼と不信の揺らぎも人によってさまざまな形を取ります。すべてに対して不信感が強い人もいれば、ある特定の人に対してすごく信頼していたと思ったら、ちょっとしたことで不信感でいっぱいになって関係を断ってしまう、というような極端な態度を取る人もいます」

出典:『私、合ってますよね? しちゃう、できない、やめられないの正体』

このように信頼と不信は固定された状態ではなく、ふとした拍子に揺れ動くものであり、そのバランスを一定に維持するのは簡単ではないことがわかります。

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人間不信になってしまう原因やきっかけ

相手との距離が近すぎる環境では、小さな不満が不信感へ育ちやすくなります。その代表が同居生活です。付き合い方の工夫は、同居のストレスの原因と解消法を解説!気持ちよく同居するためにはどうするべき?でご紹介しています。

人間不信の原因やきっかけは人それぞれですが、過去に嫌な思いをした記憶やトラウマが原因で人間不信となることが多いようです。

親しい相手の裏切りや嘘

親しい相手であるほど、その裏切りや嘘のダメージは大きくなります。その相手が親友や恋人など親密な関係であった場合はなおさらです。相手を信頼していた分、普段から自分の弱い部分や無防備な状態をさらしていたわけですから、心の奥の柔らかいところが深く傷つきます。
そんな状態では、相手から離れたり、環境に変化があったとしても「また裏切られるのではないか」と警戒心を強め、自分を守ろうと肩に力が入ってしまうのは無理もありません。一対一の関係だけでなく、集団からのいじめや仲間外れ、差別などを受けた経験も他人を信じることのハードルを上げます。

問題のある家庭環境

問題のある家庭では、子供がたとえ親や兄弟であっても心を許せないような不安定な環境に置かれる場合があります。特に保護者との関係は当事者の性格や考え方にも大きな影響を及ぼします。
乳児期の子供と保護者との安定した関わりは「基本的信頼」と呼ばれ、その後の人生においての信頼感の土台となる大切なものです。「自分の欲求は受け入れられる」と認識することで「この世界は安全でなかなか心地いい」という感覚が得られるのです。この土台をうまく築くことができていないと、大人になっても「人を信じられない」という状態が続くことになります。

大切な人との離別

長い人生の中では家族や友人、配偶者や恋人など、親しい関係性の相手と別れざるを得ないタイミングがあります。お互いに納得して判を押す離婚のような別れもありますし、喧嘩別れや病気による死別など突然の別れもあるでしょう。
頭では理解しているつもりでも、大切に思う相手や長く共に暮らした相手を失うと、まるで自分の体の一部を失ったかのように感じて無気力になり、生きる目的を見失ってしまうことがあります。そんな中で「もうこんなつらい思いはしたくない」「だから誰も信じたくない」という気持ちになるのも、また自然な心の動きなのです。

人間不信の人の特徴

「人が信じられない」という気持ちが強い場合、行動や態度にはどのように表れるのでしょうか?

他人の行動に過剰に疑いを持つ

他人の言動が素直に受け入れられず「何か裏があるのではないか?」と勘繰りがちになります。人とリラックスして向き合うのではなく、心も身体も緊張して「こいつには騙されないぞ」と力が入っている状態です。
そんな姿勢は言葉にしなくても不思議と相手にも伝わるものです。敵意とまでは言えなくも、目の前の人に疑いを向けられてうれしく感じる人はいませんよね。
チャールズ・ディケンズの小説「クリスマス・キャロル」に登場する強欲で人間不信を募らせた主人公はクリスマスの精霊の導きによって心を入れ替えることができました。しかし、現実ではそのような姿勢を続けていては、いつか周りから誰も人がいなくなってしまうでしょう。

他人に心を開けず、深い付き合いを避ける

新しい出会いや人間関係に消極的になり、深い付き合いを避けるようになります。仕事や学校などで最低限のコミュニケーションは行うものの、他人に対して心を開くことが難しく、そのような関係を求められた場合は相手を避けたり、突然連絡を絶ったりしてしまいます。
現在の自分の状態を説明しても「どうせわかってもらえないだろう」と考え、人のつながりを諦めているため、言葉で伝えようという気持ちにもなれないのです。そのため世間話やちょっとした雑談であっても、過剰に秘密主義で自分のことをあまり話したがりません。

何事もネガティブに受け取る

人間不信に陥ると物事のネガティブな面ばかりが気になるようになります。
例えばかつての同級生が何かの分野で成功して賞賛を受けたとして、普通に考えればそれはその人の努力や成果によるものであり、他の人に関係はありません。中には元同級生の活躍を誇りに思う人もいるでしょう。
しかしながら、人間不信の渦中にいると他人の成功を素直に称えることができず、なぜか「できていない自分」が責められているかのように感じてしまうのです。そのような意味では、知らない相手のキラキラした日常の情報が次々と更新されるSNSのようなメディアにどっぷり浸かることは、場合によっては人間不信をさらに深めることになりかねません。

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人間不信が続くと何が起きるか

人間不信は誰にでも起こりうる心の反応で、きっかけがはっきりしていれば時間とともにやわらぐことも少なくありません。ただ、その状態が長く続くと、暮らしのさまざまな場面に影響が広がっていきます。

まず、人間関係が少しずつ狭くなります。相手を疑う気持ちは、言葉よりも表情や返事の間に表れます。「この人は自分のことを信頼していないな」と感じた相手も距離を置くようになり、気づけば「人が離れていく」という悪循環に。自分が人を遠ざけた結果なのか、相手が離れたのかが分からなくなるところに、この状態のつらさがあります。

次に、心身の負担が大きくなります。「この言葉には裏があるはずだ」と常に相手を疑ってかかり、相手の言動の裏を読もうとし続けるのはとても疲れることです。人と会った後にひどく疲れる、嫌な場面を何度も思い返して眠れない、肩や胃の不調が続くといった形で心身に影響が表れることもあります。

そして、人を疑いすぎることでチャンスを逃がすこともあります。新しい仕事の誘いや人の紹介を前にしたとき、「何か裏があるのではないか」という思いが先に立ち、判断を保留しているうちに話が流れてしまう。ときには石橋を叩いて渡る慎重さも大切ですが、石橋は叩きすぎると壊れてしまうことも覚えておきましょう。

人間不信が原因によるこうした変化は、心が自分自身を守ろうとして働いた結果でもあります。無理をして直す必要はありませんが、自分を少しだけ変えたい、つらい状況から抜け出したいと思っている場合は、次に紹介する方法の中からできそうなものを試してみてください。

ただし、日常生活に支障が出ている、気分の落ち込みが長く続いているといった場合は専門家へ相談することをおすすめします。

人間不信を直す方法

それでは人間不信を改善するためには、どのような方法があるのでしょうか。

小さな信頼から始める

前述の玉井仁さんは、他人や自分を信じられないという人に向けて「小さな信頼」から始めることを提案しています。

「『信頼することは難しい』という人たちがいます。そんなとき私は、『最初から大きな信頼を目指さずに、小さい信頼を積み上げてみよう』という話をします。(~中略~)

人を心から信頼するということは、そんなに簡単なことではありません。ある意味でその人に対して自分自身を投げ渡すような部分があるのです。このような大切なテーマについて、ゼロか百かというような極端な考えに陥ってはいけません。大きなことを成し遂げたいときに、小さなことから積み上げていくのは鉄則です」

(前掲書)

何らかのきっかけで人間不信に陥っている状態は、まだ大きなショックから回復している途中です。骨折が治ったばかりの状態でフルマラソンが走れないように、最初から「大きな信頼」を目指す必要はないのです。

できるだけ「いいところ」に目を向ける

玉井さんは「誰しも人のことを信頼できない自分は嫌なものです」と述べながら、逆説的に「それはひっくり返すと、『本当は自分を信頼したい』『誰かを信頼できる自分になりたい』ということでもあります」とも語っています。
相手の「いいところ」に目を向けることも、再び他人を信頼して、人とつながるための足がかりとして助けになります。

「小さなことでも人や自分の『いいな』と感じられているところ、信頼できるところを見つけられるように心がけてみましょう。この確認作業を繰り返し継続することで、他人や自分に対する信頼感が強くなっていくのです」

(前掲書)

自分の気持ちを整理する

「人を信じられない」と感じるようになった時期やきっかけについてもう一度、考えてみましょう。
心の蓋を開けるように感じるかもしれませんから、ある程度の気持ちの余裕があるタイミングがおすすめです。そうすることで、自分がどのような場面で不信感が強まるのか(弱まるのか)が明確になり、その後の対処がしやすくなります。
玉井さんは「人は対人関係を深めていく中で、相手の良い面のみならず、嫌な面も見えてきてしまうものです」と伝えています。傷ついたからといって、ただ心を閉ざしてしまうのではなく、自らの“心のクッション”をできるだけ柔らかく保とうという働きかけも必要です。

「嫌な面がひとつでもあるから『もう嫌いだ』とならずに、相手からすると自分にも同様に嫌な面があるのだろうと自覚しつつ、お互いに理解を深め、お互いを許し合えるような関係を深めていけるといいですね」

(前掲書)

「信頼できる相手」を大切にする

信頼できる相手に話を聞いてもらうだけでも、少し心が落ち着くものです。場合によっては家族や友人でなく、心理カウンセラーなどの専門家のサポートを受けるのもいいでしょう。自分の中で整理がつかないことでも、他者とのやり取りの中でクリアになっていくことがあります。
全面的に人を信頼するのが難しくても「この人は信じられる」という相手を見つけて、「ここでは自分らしくいられる」などの居場所を持つことは大切です。信頼できる人と時間をかけて関係を築くことで、「人は必ずしも裏切るわけではない」と感じられるでしょう。
人間関係や信頼は時間をかけて徐々に積み上げていくものですから、他者に対して求めるだけではなく、自分自身も「小さな約束を守る」「感謝の気持ちを伝えるなど」の誠実な対応を心がけてみましょう。そのような積み重ねにより、同時に「自分への信頼」を育てることもできるのです。

人間不信を予防するために日ごろからできること

人間不信はきっかけさえあれば誰にでも起こりうるものですが、日ごろの人との向き合い方によって、深刻な状態になるのを防ぐことはできます。ここでは、今日から始められることを4つ紹介します。

1つめは、期待の大きさを相手ごとに調整することです。「この人ならこうしてくれるはず」という期待が大きいほど、そうならなかったときのがっかり感も大きくなります。これは相手を信じないという意味ではなく、相手にも都合や限界があると見込んでおくということです。期待値を少し小さめにしておくと、行き違いがあったとしても「そういうものかもしれないな」と、受け止める余白が生まれます。

2つめは、相談できる相手を複数持っておくことです。心の支えとなる人が1人しかいないと、その関係が崩れたときの影響がそのまま「人は信じられない」という結論に直結します。職場、家族、趣味の場など違う環境のつながりをいくつか持っておくと、1つの関係がうまくいかない時でも別の環境で息抜きができます。

3つめは、自分の状態を言葉にしておくことです。自分は今、疲れているのか、傷ついているのか、単に忙しくて余裕がないのかを客観的に見てみましょう。残業が続いてクタクタに疲れているとき、相手にはそのつもりがないのに言われる言葉のすべてが悪意あるものに感じられるのはよくあることです。自ら人間不信の穴に落ちないためには、相手の問題と自分の状態を切り分けておくことは大切です。

4つめは、小さな約束を守る側になっておくことです。信頼は受け取るだけでなく、差し出すことでも育ちます。信頼されたら信頼に応えたくなるという心理的傾向は、心理学では返報性の原理として知られています。時間を守る、返事を返すといった小さな積み重ねが周囲との間に信頼感を育てるのです。

どれも特別な取り組みではありませんが、人との関わりに余白を持たせておくことが、結果として自分を守ることにつながります。

人間不信についてよくある質問

Q.人間不信は自然に治りますか。
A.きっかけがはっきりしている場合は、時間の経過とともにやわらいでいくことが少なくありません。信頼できる相手との安心できるやりとりが積み重なることで、少しずつ回復していきます。ただし、眠れない日が続く、仕事や学校へ行けないなど日常生活に支障が出ている場合は専門家へご相談ください。

Q.人間不信と人見知りは違いますか。
A.別のものです。人見知りは初対面の場面で緊張しやすい傾向を指し、打ち解けてしまえば問題なく付き合えます。一方の人間不信は、親しくなった後も相手の言動を疑う気持ちが残ります。安心して心を開けるかどうかが、見分ける目安になります。

Q.家族に対しても人間不信になりますか。
A.なります。この記事でも触れているとおり、家庭環境がきっかけとなる場合があり、身近な相手ほど影響が長く残ることもあります。逃げ場の少ない関係であるぶん、一人で抱え込まずに第三者へ相談することが助けになります。

Q.人間不信は病気ですか。
A.人間不信そのものは病名ではなく、心の状態を表す言葉です。ただし、強い不安や気分の落ち込みが続く場合は、別の不調が背景にあることもあります。状態が長引くときは自己判断をせず医療機関にご相談ください。

Q.人間不信の人とどう接すればよいですか。
A.相手が心を許してくれるまで時間がかかるので、寂しい気持ちになるかもしれませんが、「信じてほしい」と迫ってはいけません。相手の状況を想像しながら、言葉と態度で「あなたの味方だよ」と伝え続けることが大切です。

まとめ

何らかのきっかけで人間不信に陥ることは少なくありません。ある意味、人と人が深い関わる中では避けられないことであり、それだけ真剣に相手に向き合っている証拠ともいえます。
多くの場合は時間が解決してくれますが、「人を信じられない」という状態から自分自身で抜け出すことが難しく、さらに長期にわたる場合は、うつ病の予兆などの可能性が隠れているケースがありますので、早めに医療機関や専門家の意見を求めましょう。

\ 監修者 /

富田裕之

公益財団法人モラロジー道徳教育財団コンテンツ開発局長として「心豊かな生き方・働き方」をテーマとしたコンテンツ制作に従事。「正しいのはわかっているけれど、現実では難しい」そんな日常の葛藤に寄り添い、毎日を少しずつアップデートする、温かくも本質的なヒントを届けている。中小企業診断士。キャリアコンサルタント。

富田裕之のプロフィールはこちら>>>

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\ 執筆者 /

ニューモラル 仕事と生き方ラボ

ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。

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