2024年04月03日
「なんと(710)大きな平城京」
「なくよ(794)ウグイス平安京」
学校で歴史を学ぶときに、年号を暗記するため語呂合わせで必死に覚えたという方もいるのではないでしょうか。「ああ、そんなこともしたなあ」と、今となっては遠い目をしている方もいるかもしれません。
あんなに苦労して年号や歴史上の人物を覚えたものの、その出来事が起きた結果どのような影響があったのか、そこからどんな教訓を学んだのかと問われたら……。
一方で、歴史上の人物から戦略や生き方を学ぶビジネスパーソンが多いのは、書店にずらりと並ぶビジネス書を見れば明らかです。
歴史を学ぶとは、ただひたすら出来事の年号や人物の名前を順序だてて記憶することをいうのではありません。歴史の中には今でも参考になる教訓がたくさんあります。歴史を学ぶメリットについて考えてみましょう。
歴史を学ぶことは、歴史を通じて異なる時代や地域の文化について学ぶことでもあります。
日本には日本独自の伝統やユニークな文化があるように、世界各国にもそれぞれの国の成り立ちや独特の文化があります。
その国の伝統と文化は、長い時間を通じて受け継がれてきたものであり、不思議とその国やそこに暮らす人々を象徴することが多いようです。自分の国の歴史を見直すことは、自分たちの祖先が何を大切に暮らしてきたのかを理解することにつながります。
また、異文化を知ることは、世界を旅する感覚に似ているかもしれません。グローバル化する現代社会においては、歴史を通じて相手の国の伝統や文化を知っておくことは、円滑なコミュニケーションの第一歩です。歴史を学ぶことで、多様な価値観を受け入れるための寛容さがはぐくまれていきます。
歴史とは、現在の政治や経済で起こっていることや、文化を形づくっている原因ともいえます。世界の紛争や、自然環境問題、貧困問題など、今日において目に見える形で起こっている出来事というのは、過去に起こったさまざまなことが現在までつながっていたり、どこかで結びつきながら私たちの目の前に現れているのです。
ニュースを見ていて「あれ?なんでこんなことが起こっているんだっけ?」と思うことが出てきたら、歴史を学ぶ絶好の機会です。出来事の原因となっていることや背景を「なぜ?」と辿る癖をつけておくと、今起きている問題への洞察力が養われ、現代の複雑な社会の出来事に対する理解が深まります。
人間はみな不完全で失敗する生き物です。
失敗をばねに成長できることがあるのは確かです。しかし、失敗したことで必要以上に落ち込んだり、失敗から何も学べずに同じことを繰り返したりしていては、自分自身によい影響を与えません。
そこで、歴史を学ぶことで、自分が直面しているような失敗や困難を先人たちはどうやって切り抜けてきたのか、どのような心持ちでいたのか、さらにはどうやって成功や成長のきっかけへと変えたのかを知ることができます。
過去とまったく同じ経緯で同じことが起こるわけではありませんが、不思議と歴史には繰り返されるパターンや教訓があります。歴史を学ぶことで、過去の失敗に学び、未来へ活かす知恵が得られるのです。
特に、政治や経済の決定において、歴史的な視点からも物事を見ることは重要な意味を持ちます。
歴史的な出来事を学ぶときに大切にしたいのが、書かれたことや教えられたことをうのみにせず「自分だったらどうするだろう?」「別の視点からはどう考えられるだろう?」といったように、自分なりに考えて吟味することです。
古典に書かれた、世の中にとって価値があるとされる先人の教えも、字面だけを追っていては役に立ちません。その教えを、まるで氷を水に戻すかのように、自分の胸の中でじっくりと味わって溶かし、自分の生活に役立つものとすることで、初めて自分にとって価値あるものとなるのではないでしょうか。
この自分なりに、異なる側面や立場から考えるプロセスが、物事を批判的・主観的に考える思考力を養い、世の中の複雑な問題について解決する能力を高めます。
「歴史とは自己を知る鏡である」
教育学者で元中村学園大学教育学部教授の占部賢志さんは、著書『歴史の「いのち」』(モラロジー道徳教育財団刊)の中で、歴史を学ぶ意味についてそのように述べています。
「そもそも直接に『自分を知る』ことは不可能なのである。何かに触れて、そこで心が動いて、なるほど自分はこんな志向を持っているのか、と気づく。そういう方法でしか自分を知る手掛かりはない。
例えば、『信長公記』という織田信長の伝記を読むと、信長の人生をおおよそ知ることができる。知って、信長のような生き方に共感を覚えたとする。そのとき、自分の中にそのような人生に共感するものがあるということに気づく。逆に嫌いになったとすれば、信長のような生き方を嫌うものが自分にあるということに思いが至る」
自分のアイデンティティを歴史から見出すことができれば、自分に対する理解は今よりもぐっと深まるでしょう。
歴史を学ぶことは、未来をよりよくするための重要なステップです。
今、私たちが暮らす社会が直面しているさまざまな課題には、歴史を学ぶことで理解できる原因や背景があります。日本だけでなく、世界の大きな流れの中で問題の原因や背景をつかんでおくことは、未来をよりよい方向へ導くために必要不可欠といっていいでしょう。
「今」だけの視点だけで考えると意味がないと思えたり、効率が悪いと思えたりするようなことも、歴史の長い時間の流れの中で見ると、将来のために必要だったり、社会の繁栄につながっていたりと、価値が変わることはたくさんあります。そういった意味でも、歴史を学び、時間的にも空間的にも広い視野をもって未来を見通す力を身につけたいものです。
知識を習うことにとどまりがちな学校の歴史教育。歴史とは本来、過去や先人が残した“エール”のようなものであり、そこには未来へ託されたたくさんの知恵と思いが宿っています。
大人になり、さまざまな経験を経てから学ぶ歴史は、学校教育のときとは一味も二味も違う楽しさや共感があることでしょう。
歴史に込められたメッセージを受け取り、困難に負けない力、未来を正しく見通す力を手に入れたいですね。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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