公開日:2026年03月11日
「いざという時は、お母さんが絶対に助けに行くからね」
良かれと思って、わが子にそう伝えたことはありませんか?
実はお母さんとのその優しい約束が、災害時には子供の命を奪う原因になるかもしれません。
「いつもそばにいることだけが、子供を守る方法ではないのです」と、消防庁消防大学校の現役講師・鎌田修広さんは著書『おるすばん防災』(ニューモラル出版)で強く訴えます。
災害発生時の混乱の中、親を心配して危険な場所へ引き返し、犠牲になる子供は後を絶ちません。不安な気持ちから親と連絡を取ろうとして、生死を分ける貴重な時間を「つながらない電話」に費やしてしまう子もいます。災害時には、家族を想う強い絆が、皮肉にも悲劇を招いてしまうこともあるのです。
学校や塾、お留守番中。もし今、わが子が一人でいる時に巨大地震が起きたら?家族みんなが無事生き残るために、今日から共有すべき「命を守るルール」について、鎌田さんの『おるすばん防災』をヒントに詳しく解説します。
ある調査によると、小学生以上の子供を持つ親の約93%が「子供だけで留守番させたことがある」と答え、そのデビュー時期の多くは6歳〜9歳、つまり小学校低学年です。(「夏休み直前。約7割の親が不安を抱える『子どもだけの留守番』事情とは【子どもの留守番に関する意識調査】」、https://panasonic.jp/topics/2025/07/000001070.html、パナソニック株式会社、2025年7月17日)。
かつては特別なことだった子供だけの留守番は、今や日常。だからこそ学校のマニュアルや大人の助けがない場所で被災したとき、わが子が自分の命を守れるかどうかは、親子の事前の備えにかかっています。
ここでは、小学生の子供がいる家庭の地震の備えについてみていきましょう。
地震が起きたその瞬間、家の中の物は凶器に変わる可能性があります。家具の固定や転倒防止は、家庭でできる最も基本的な、そして最も重要な備えです。特に、背の高い家具は倒れやすいため、寝室や子供部屋は細心の注意が必要です。
作り付けの家具であったとしても油断は禁物。上のほうに置いてある本やおもちゃが飛び出してケガをしたり、散乱すれば避難の妨げになったりします。
災害発生時、一人きりで冷静でいられる子供はいません。とっさの状況でまずすべきことを一つ決めておくとしたら?冒頭でご紹介した鎌田さんは、家の中に「そこに逃げ込めば身を守れる」というセーフティーゾーン(安全な場所)を作ることを提唱しています。
家の中にこんな場所はありますか?
・何も落ちてこない
・何も倒れてこない
・閉じ込められない
・外に避難しやすい
・窓ガラスから離れている
大人目線では「ここが安全そうだな」と思っても、子供目線だと「ここは少し行きづらい」といった発見があるかもしれません。大切なのは、親が決めるのではなく、親子で話し合って決めること。セーフティーゾーンには、ぬいぐるみやシールで目印をつけておくと、子供の安心感につながります。
非常用持ち出し袋を準備しているご家庭もあるでしょう。では、その中に何が入っているか、子供は知っていますか?
入っていると思っていたものが入っていなかった、入っているけれど使い方が分からないというのでは、いざというときに役に立ちません。また、「防災リュックが重すぎて子供では持てなかった」となっては本末転倒です。
小学生向けには、本人の体力に合わせた最低限の防災ポーチなどを個別に用意するのがいいでしょう。中には水や非常食だけでなく、アメやマスク、携帯トイレ、ホイッスル、家族の連絡先を書いた紙などをまとめておくのがおすすめです。子供自身が「これなら一人でも使える」と納得していることが、非常時の安心になります。

家族が離ればなれになったときや連絡が取れない場合に、どこで待ち合わせるかを決めているご家庭は多いと思います。実はそこにもちょっとしたポイントが。待ち合わせ場所は、具体的すぎるほど具体的に決めておく必要があります。例えば「集合場所は〇〇小学校」と決めるだけでなく、「○○小学校の裏門で、毎日○時と○時に待つ」といった具体的な場所と時間のルールを決めておくと、再会できる確率が高まります。
また、災害時は電話が一時的につながらなくなるのはご存知の通り。子供には「地震のときに電話はつながらないよ」とはっきり伝え、つながらない電話に執着せず、まずは自分の命を守る行動を優先するよう伝えましょう。
親がしばらく帰ってこられないとき、わが子を助けてくれるのはご近所さんかもしれません。とはいえ、「助けてほしい」と思っても、普段話したことがないご近所には声をかけづらいですよね。大人だってそうですから、子供ならなおのこと。
普段からご近所さんといい関係をつくっておくのも大事な防災です。お互いの顔と名前を知っていると助けてもらいやすくなります。挨拶やゴミ出し、お土産のおすそ分けなどチャンスはたくさんあります。
知識として知っていることと、実際に動けることは別物です。実際の場面を想定した家庭内での防災訓練が、いざというときに命を守ることにつながります。
緊急地震速報が鳴った際、あるいは鳴ったと仮定して、すぐにセーフティーゾーンへ逃げ込むことを習慣にしましょう。「まずやること」を体で覚えておくと、本番の恐怖の中でも足を動かしてくれます。繰り返し練習することで非常時も落ち着いて動きやすくなるのです。
防災の話をするとき、親が「○○しなさい」と指示するだけでは、子供の心には残りません。しぶしぶ行動するかもしれませんが、言われなければいつも通り、なんてことは子育てのあるあるですよね。なぜその行動が大切なのか、理由や根拠を子供の年齢に合わせた言葉で丁寧に伝えてみてください。
「なんで電話をかけちゃいけないの?」「どうして携帯トイレを使わなくちゃいけないの?」
子供からのこうした質問に具体的な説明ができるでしょうか。「ダメなものはダメ!」では、子供は納得しません。防災を「自分事」として捉えやすくするためにも、子供が質問しやすい雰囲気をつくり、家族で「どう思う?」と話し合う姿勢を大切にしてくださいね。

ここからは、小学生の子供が一人でいるときに地震が起きたときにつくっておくべきルールについて考えてみます。ただし、災害時に絶対の正解はないということもあわせて覚えておいてください。
一人のときこそ「命を守る最優先行動」をシンプルに決めておきましょう。
[3〜5秒以内に動く]揺れを感じたら、瞬時にセーフティーゾーンへ移動する。
[丸くなる]背中は筋肉が厚いので、丸まって延髄や内臓を守る姿勢を取る。
[周りの様子を確認]揺れが収まったら、家からすぐ逃げるか中にいるか判断する。
すぐに逃げるべきか、家の中にいるべきか、大人でも判断に迷いますよね。子供ならなおのこと。子供がとっさのときに自ら選択・判断できるように、日頃から親子で自宅や周辺地域についての情報を共有し、「わが」家のルールを決めておきましょう。
公園や道端にいるときに地震が起きた場合、まずは崩れそうな遊具や建物、電柱から離れることを徹底させます。
子供は心細さから「何がなんでも家に帰らなきゃ」と思い込んでいるかもしれません。でも、道路がめちゃくちゃだったら?コントロールを失った車が突っ込んできたら?大地震の後は危険がいっぱいです。
屋外で被災した場合は、まずは冷静になること。周囲に大人がいれば助けを求めてもいいですね。ただし、不用意に知らない人に付いていかないように。
通学や習い事で公共交通機関を利用している場合、パニックにならないことを事前に伝えましょう。2011年の東日本大震災で多くの帰宅困難者が発生したことを踏まえ、防犯体制を充実させた鉄道会社は少なくありません。だからといって完全に安全なわけではありませんが、身の安全を確保したら、落ち着いて乗務員や係員の指示に従います。
被害の大きさによっては家族が迎えにこられず、子供は一人で歩いて帰ることになるかもしれません。そのような状況を乗り越えるために、普段から「通学途中や習い事先で地震が起きたらどうするか」「電車が止まったらどうするか」といったことを考えておきましょう。さらに、もしもの時は今かばんの中に入っているもので、どうにか生き延びなければいけません。子供が自分の命を守るための最低限の備えは入っていますか?

ここでは、小学生の子供がいる場合の地震発生後の行動について考えます。
揺れが収まったからといって、慌てて外に飛び出すのが危険な場合もあります。逆に古い木造住宅は1階がつぶれる恐れがあるため、すぐに外に出たほうがいい場合もあり、その家によってとるべき行動は変わります。
親も子供もまずはその場で3回深呼吸。自分たちはこれから何をすればいいのか、心を落ち着かせてから次の行動を考えることが大切です。
親がそばにいる状況なら、揺れが収まってから火の元を確認します。もし火事になってしまったら、子供一人で火を消そうとは絶対に思わないこと。火事に気づいたらすぐに家を出て、大きな声で周りに「火事だ!」と知らせることを優先させます。
テレビやラジオ、防災アプリなどを通じて正確な情報を収集します。人間は水が無くても3日間、食べ物が無くても3週間は生き延びることができます。やるべきことの優先順位を考えて、不確かな噂に振り回されない姿勢を親が見せましょう。
暗闇の中では、小さな灯りや音でも気持ちが落ち着くので、懐中電灯とラジオの備えはお忘れなく。
「地震=避難所へ行く」が答えとは限りません。自宅に大きな被害がなく、安全に過ごせるなら在宅避難という選択肢もあります。建物の耐震性やハザードマップの情報を踏まえ、事前に「わが家はどうするか」を話し合っておくことで、いざというときの判断に迷いません。
地震後の子供は強い恐怖を感じています。まずは「怖かったね」と気持ちを受け止めてあげましょう。
鎌田さんは、防災においては親に「異動がない」ことが家庭の強みだと言います。企業であれば、担当者が変わると振り出しに戻ってしまうことが多い防災対策。家庭では、その気になれば親が誰よりも家のことを熟知し、防災用品をそろえることができます。子供にとってこれほど心強く安心な防災担当者はいないでしょう。
大災害は、命や家、日常のさまざまなものを奪っていきます。私たちは、当たり前が「ない」状況になっても、壁を乗り越え、力強く生きていかなければいけません。大切な人を守りたいという思い(優しさ)と、命を守る備え(強さ)を兼ね備えたタフで優しい家族をめざしたいですね。
どんなにわが子のことが大切でも、すぐに駆けつけて無事を確認したくても、大災害発生時はそれができないかもしれません。『おるすばん防災』の著者・鎌田さんは言います。
いつもそばにいることだけが「子供を守る」方法ではないのです。
さらにいえば、「いざというときは助けにいくね」などと曖昧な言葉で、子供に期待を持たせるのではなく、「もしものときは、三日間くらい会えないかもしれない」「会えるまでは自分でなんとかするんだよ」とはっきり伝えておく方がいいと考えています。
ここまでは(親側で)やってあげられるけど、ここからは自分だけで頑張らないといけないよ――と現実を伝えるのです。(中略)
大切なのが 「親子で一緒に逃げる」から「それぞれが生き延びる」への意識転換です。親子であっても、それぞれが一人の人間として自分の命は自分で守る。その上で「共に生き残る」ことを目指します。
あえて厳しい現実を伝える、そして生き延びるために備える。それこそ本当の愛情ではないでしょうか。いつまでも幼い子供だと思っていたわが子も、気づけばできることが一つ二つと増えていきます。小学校低学年だと、まだまだ親が先回りして手助けしたくなりますが、ぐっとこらえて見守り、子供なりに考えさえ、備えさせてみてください。子供の「自分でちゃんと備えた」が本人の大きな自信になり、親の安心につながります。

\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ
ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
ニューモラルブックストアでは、よりよい仕事生活、よりよい生き方をめざす、すべての人に役立つ本や雑誌、イベントを各種とりそろえています。あなたの人生に寄りそう1冊がきっと見つかります。



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