2024年11月11日
日々の生活や仕事の中で、つい物事をネガティブに捉えてしまうことはありませんか?失敗やストレスに直面するたびに、「どうして自分はこうなんだろう」と落ち込むこともあるかもしれません。そのような時、物事の見方を変えることで、ネガティブな感情を軽くでき、行動するためのエネルギーを高める方法があることをご存知でしょうか。
ここでは、「リフレーミング」を活用して「心の視点を柔軟にする5つの方法」や、あなたに起こるメリットを解説します。ストレスフルな現代も、新しい視点を身につけてポジティブに乗り越えましょう。
「リフレーミング」とは、物事の見方や考え方という認識(frame)を改める(re)ことで、新しい視点や価値観を自分の中に見いだしていく方法です。固定観念にとらわれず、異なるフレームを通して状況を見直すことで、ネガティブな思考をポジティブに変えたり、新たな解決策を見つけたりするための手法です。
人間は誰しも「こうであるに違いない」「こうあるべきだ」という一定の固定概念をもって生きています。それはよく言えば個性ですが、多くの場合、物事を一つの固定的な視点からしか見ることができないというデメリットを伴います。考え方が同じだから、いつも同じ問題に悩まされてしまう。物事の見方が同じだから、いつも解決の選択肢が限られてしまう。そんな状況を抜け出すための手法が「リフレ―ミング」です。
リフレーミングと意味の似た言葉にポジティブシンキングがあります。2つの違いを考えながら、リフレーミングの特徴を見ていきましょう。
まず、ポジティブシンキングは「いい面だけを見る」ことを意識する考え方です。
一方のリフレーミングは「物事を違う見方で考える」方法で、いい面だけに注目するわけではありません。
別の言い方をすると、ポジティブシンキングは「物事を良い方向に捉える」ための手法であり、リフレーミングは「物事の捉え方そのものを変える」ことによって、問題の本質にアプローチする手法といえます。
ですからリフレーミングでは必ずしも、捉え方がよい方向に変わるとは限りません。重視するのは状況を多面的に捉えること。固定概念の束縛を外し、新たな気づきを得る点が特徴です。
なぜ今、リフレーミングが注目されているのでしょうか。背景にあるのは、時代環境の急激な変化です。
変わりたくないのに変わらないと時代に対応できない。そのような場面が増え、多くの人が日常生活にストレスを抱えています。そうしたストレスを軽くする方法、変化を受け入れる「柔軟さ」を身につけるための方法として、リフレーミングが必要とされているのです。
生活や仕事で悩んだり、壁にぶつかったりすることは誰にでもありますが、リフレーミングを使うことで、思考を柔軟にでき、困難な状況を新しい視点で捉える力が養われます。悩みが悩みでなくなったり、「壁」と思い込んでいたことが実は、次のステップへの「扉」と気づいたり。そうした効果ははかり知れません。ストレスの軽減や問題解決能力の向上にも役立ち、自己成長や人間関係の改善にもつながるリフレ―ミングは、今を生きるすべての人に不可欠なメソッドの一つといえるでしょう。
全体像がわかったとところで、もう一段詳しく、リフレーミングで得られるメリットを見ていきましょう。
リフレーミングを行うと、新しい視点から物事を捉えることできるため、ネガティブな感情をやわらげることができます。これにより、自己嫌悪や無力感といった感情が軽くなり、心の負担が減るというメリットがあります。
リフレーミングは、自分がもっていなかった新しい角度から物事を見るようになるため、解決策が見つけやすくなるメリットもあります。固定概念から離れ、考え方が柔らかくなると「これはこう考えれば解決できるかも」といった思いがけない発想が生まれやすくなるもの。リフレーミングは、視野を広げて問題に対応する力を高めてくれます。
困難な状況をポジティブな方向にリフレーミングすることで、ストレスを減らす効果が期待できます。また、自分にとって「よい面」を見つけ、肯定的に受け止めることによって、不安やプレッシャーを和らげることができます。リフレーミングは、心身に悪影響を及ぼすストレスが蓄積することを防ぎ、たとえストレスが溜まったとしてもその影響をやわらげる手助けをしてくれるのです。
リフレーミングは、対人コミュニケーションの改善につながるメリットもあります。
相手の意見に反論したくなる場面でも、リフレーミングによって「なぜこの人はこう考えるのか?」とちょっと見方を変えることで、冷静になり、不要な衝突や摩擦を避けることができます。
また、自分の固定概念にとらわれず、他の人の意見に耳を傾け、柔軟に受け入れる場面が増えることで、コミュニケーションの質が高まり、周囲の人との相互理解が深まるでしょう。
そうした信頼の人間関係のベースがあると、働きがいや生きがいが感じやすくなります。
リフレーミングは、自己成長にもつながります。
思いどおりに運ばない状況や思いがけない困難に遭遇すると、どうしてもネガティブな感情が先に立ち、状況を悲観的、否定的に捉えてしまいがちです。起きた物事を否定的に意味づけしつづけていると、どんどん視野が狭まり、ネガティブ感情から抜け出せなくなってしまいます。
そこでリフレ―ミングによって、困難や失敗の意味を捉え直し、どうすればこの失敗経験を次に活かせるかという視点で考えてみるのです。すると、ネガティブな感情をポジティブに変えていくことができます。
「失敗は成功の母」という言葉があるとおり、失敗を肯定的に捉えることで、その先の可能性を広げることができるものです。
こうしたリフレーミングを習慣化することで、あらゆる物事に肯定的な意味を見出せるようになり、それによって自己改善の機会が増え、自己成長が促されます。
リフレーミングには、さまざまな方法があり、大きく分けて「状況のリフレーミング」と「内面のリフレーミング」に分類されます。2つの違いを解説します。
状況のリフレーミングとは、今起きている「状況」そのものを異なる視点で捉える方法です。
例えば、「失敗」を「学び」として捉え直し、新しい成長の機会と見なすことが、状況のリフレーミングにあたります。
内面のリフレーミングとは、文字どおり自分の「内面」の捉え方を変える方法です。
例えば、「苦手」を「挑戦」として捉え直し、取り組む意欲や自信を高めることが、内面のリフレーミングにあたります。
内面のリフレーミングを行うことで、自己理解が深まり、前向きな行動に踏み出す勇気が湧いてきます。
ここからは具体的なリフレーミングの方法を見ていきましょう。ここでは、5つの代表的なリフレーミングの方法を紹介します。
As ifとは「まるで〜であるかのように」や「あたかも〜かのように」という意味です。つまり、As ifのリフレーミングとは、「まるで~である」という仮定を立てることで、現実の状況をまったく異なる視点から捉え直す方法です。
例えば、「もし目標にしているあの人が今の自分と同じ状況に置かれたら」と想像し、置かれている状況を見つめ直すことで、心が変わり、視点が改まり、これまでの自分にはなかった選択や行動が生まれてくる場合があるのです。固定概念によって見えなくなっていた自分の能力や強みを再確認できるという効果もあります。
あるいは、仕事の成果が思うように出せないとき、「もしお客様の立場だったら」と仮定し、客側の視点から商品やサービスを見直すことによって、見落としていた改善点や新たなアイデアが生まれやすくなるでしょう。
言葉のリフレーミングは、自分が普段使っている言葉を変える方法です。 例えば、「失敗した」という言葉を「学びの機会があった」と変えて使うことで、同じ物事でも捉え方が前向きになります。言葉を換えるだけで、ネガティブな側面よりもポジティブな側面に意識が向けやすくなり、気持ちが楽になります。
気持ちが前向きになると、次にとる行動も変わってくるでしょう。
具体的には、ネガティブな表現をポジティブな言葉に置き換える方法があります。「不安」を「期待」や「挑戦」に言い換えるというのが、いい例でしょう。
自分の発した言葉を一番聞いているのは、他でもない自分自身です。
何気なく使っている言葉が、固定概念を強固にし、考え方を縛っている可能性があるのです。
言葉のリフレーミングは、簡単に取り組みやすい「言葉」の捉え直しを通じて、意識や考え方を改めるのに役立ちます。
解体のリフレーミングとは、まるで大きな氷の塊のようになって動かしがたい問題を、小さな単位に解体し、解決の選択肢を増やす方法です。問題を大きく、複雑なものと捉えているときは、どこから取り組めばいいかがわからず、手順さえ見えずに、ただ時間だけが過ぎていく状況になりがちです。
例えば、任されたプロジェクトが複雑すぎて「自分には無理かもしれない」と自信を失いかけている場合、解体のリフレーミングでは、そのプロジェクトを小さなステップに分解することで、「複雑だ」という認識の枠組み自体も解体していきます。具体的には「まずは全体のスケジュールを確認する」「次にプロジェクトの工程や業務単位で段階的なステップをつくる」「ステップごとのタスクを整理する」というように、大きくて無理だと思いこんでいたプロジェクトの進行を小さな単位にしていくのです。
あるいは、5キロを目標としたダイエットに挫折しそうになっている場合、「まずは1週間に500グラムを目標とする」「その上で1日ごとに摂る食事を管理し、記録していく」などという具合です。
解体のリフレーミングによって、問題が小さく分解されると、乗り越える壁も小さくなって不安が軽くなり、「まずはここから始めよう」と一歩を踏み出しやすくなります。
時間軸のリフレーミングは、「今感じていることが、未来ではどう感じられるか」というように時間軸をずらして物事を捉え直す方法です。不安やストレスが大きいと、人は今の自分のことしか考えられなくなりがちです。そのような時、時間軸のリフレーミングによって、「今のこの経験は、将来の自分にとってどういう意味を持つのか」「自分の今後の成長にはなるはず」と考えることで、困難な状況も前向きに捉えやすくなる効果があります。「今」に捉われず、「未来」の時間軸に変えて見直すのがポイントです。
現在の困難も、未来には大きな学びや経験として価値があると感じられることがあるものです。
5つ目のwantのリフレーミングとは、「どうしたいか」という自分の欲求を捉え直すことで新たな気づきを得る方法です。
例えば「この仕事はしたくない」という気持ちを「では、自分はどんな仕事ならしたいのか?」と考え直すことで、めざす方向が明確になり、漠然とした不安が軽くなります。
そのほかに「やらなければならない」から「やりたい」に変えて、行動のモチベーションを高めるリフレーミングも有効です。自分の望みに基づいた動機づけがしやすくなります。
リフレーミングを日常生活に取り入れると、さまざまなシーンで役立ちます。具体的なリフレーミングの活用例をご紹介します。
仕事でミスをしてしまったときは、「自分はダメだ」と思う代わりに、「この経験を次に活かそう」と考えてみましょう。言葉を言い換えるなら「自分は今、困っているのではなく“学んで”いる」「失敗は“成長”のためのステップ」といったように。そうしたリフレーミングを習慣化することで、失敗やミスを過剰に恐れることなく、落ち込む時間も短くなり、次の行動につなげやすくなります。
人間関係でトラブルがあったとき、「うまくいかなかった」と思うだけではなく、「この機会にコミュニケーションの方法を見直そう」と考えて、自己成長するチャンスに変えてみましょう。気持ちが軽くなるだけでなく、新たな学びを得ることによって自分のコミュニケーションスキルも向上します。
職場や家庭など身近な人とイザコザがあった場合も、リフレーミングで「これはお互いの理解をうながすための機会」として捉え心を切り替えます。すると、ずるずると不仲を引きずることなく、関係性を深めることができるでしょう。
リフレーミングを行う際には、いくつかの注意点があります。ここでは、効果的にリフレーミングを取り入れるためのポイントを紹介します。
リフレーミングは、ポジティブに捉え直すことだけが目的ではありません。自分がふだん何気なくしている物事の捉え方そのものを変えることが目的です。無理をしてポジティブな意味を見つけようとすると、理想と現実のギャップが大きくなり、かえって心が苦しくなることがあります。
置かれた今の感情や気持ちを素直に受け止めた上で、無理のない範囲で視点を変えることが大切です。
リフレーミングは人それぞれ効果が違います。自分に合った方法を見つけて、無理のない範囲で頑張ってみましょう。柔軟に考えるために行っているはずが、「リフレーミングをやれば自分にもこんな効果が出るはず」と思い込んでしまうと、新たな固定概念が生まれ、逆にストレスが溜まってしまうことがあります。
人それぞれに適したリフレーミング方法が異なります。自分が納得しやすいリフレーミングの方法を試行錯誤し、合うものを見つけましょう。
リフレーミングは、起きた問題を「なかったことにする」方法でも、無視する方法でもありません。むしろ、リフレーミングによって問題を軽視したり、回避したりすることは避けるべきです。
問題にしっかり向き合い、解決をめざしながら、適切に視点を変えることが重要です。
リフレーミングは、自分に対して行うものです。これを他人に強要しようとすると、「彼はこういうふうに考え方を改めるべきだ」「時間軸をずらして考えたら、もっとよくなるのに」と、そうならない相手を責める気持ちが増え、逆効果になることがあります。
部下や後輩がリフレーミングを行う場合も、無理強いせず、本人の主体性を尊重しつつ、共感を持ちながらサポートすることが大切です。
リフレーミングを試してみたら、その効果を確認してみましょう。気持ちが楽になったり、行動が変わったかを振り返ったり、うまくいかない場合は別の方法を頑張ってみることも重要です。
リフレーミングが実際に効果を発揮しているか、定期的に見直しながら進めることで、実感しやすくなります。
リフレーミングは、考え方や視点を変えることで、日常のさまざまな悩みやストレスを考える方法です。どの方法が合うかを試しながら取り入れて、自分の心の柔軟性を育て、日々の出来事を楽しく受け止めていきましょう。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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