2024年06月23日
職場や学校、恋愛関係や友達同士の間で時おり生じるのが嫉妬の感情です。ネガティブなイメージがありますが、人が当たり前に備えた「自然な感情」であり、扱い方を間違えなければ大きな問題はありません。嫉妬心が生まれやすいシチュエーションやその要因、そして嫉妬深い性格を改善する方法をお伝えします。
社会的な成功や周囲の人からの愛情、財産や才能など、他人が持っているものに対して「自分も欲しい」とうらやましく思い、相手に対する羨望や恨み、妬みなどの強い感情を募らせる心理状態が「嫉妬」です。人間の基本的な感情のひとつであり、普通に生きていれば誰もが必ず経験する心の動きです。ですから、決して間違った感情ではありません。
しかし、嫉妬心にとらわれすぎて自分を見失ったり、攻撃的になったりする状態は健全とはいえません。強すぎる嫉妬心ゆえ自分自身や他人を傷つけて、人間関係を修復できないレベルまで悪化させてしまうことも……。
一方、嫉妬の感情を向上心や努力のモチベーションにするなど、前向きな方向でそれをうまく昇華させることができれば、自分自身を大きく成長させるきっかけにもなります。
また、パートナーに対する“ほどよい嫉妬”はその関係を大切に思っている証であり、じょうずに扱えばお互いの絆を深める効果があります。つまり、どのように扱うかで行きつく先がまったく別の場所になる――。扱いが難しい感情ともいえるでしょう。
まずは、一般的に嫉妬心が生まれやすいシチュエーションを紹介します。
同僚の昇進や事業の成功など、仕事やビジネスにおける高評価やわかりやすい成功に対して嫉妬心を抱くことがあります。特に同期が昇進したり、重要なポジションに抜擢されたりすると、「なぜ自分ではないのか?」「私のほうががんばっていたのに……」などと比較しがちです。
現代の資本主義や競争社会においては、ある意味、「他人の成功」を「自分の失敗」のように感じやすい構造ができあがっています。なぜなら成功者は一握りの人たちを指すものであり、隣の人が成功したということは、自分がそうなれない可能性を意味するからです。
人は自分も手を伸ばせば届いたかもしれないレベルの相手に対してうらやましく思うものです。大富豪や天才的なアスリートに対して、真剣に嫉妬する人はそんなにいませんよね。
恋人や好意を抱く相手が他の人と親しげに話しているのを目にして、心穏やかでいられる人はそれほど多くないでしょう。大切に思っている相手だからこそ、その愛情を失うことを過剰に恐れる気持ち、いわゆる“やきもち”ですね。
すでに結婚していたり、長年付き合っていたりする落ち着いた関係であれば過剰反応することはありませんが、まだ関係に名前がついていないようなデリケートな時期は、特に嫉妬心を抱きやすいタイミングです。
憧れや羨望が、とあるきっかけで嫉妬に変わることがあります。例えば、たぐいまれな才能や容姿を持ち、同世代からの注目を集める人物が身近にいたとします。親しみやすい雰囲気ながらカリスマ性を持ち合わせる――最近であればインフルエンサーのような人物です。
最初はただ純粋な憧れから始まり、持っているものを真似してみたり、ファッションや髪形を寄せてみたり、その人物が紹介していたコンテンツに触れてみたりと、楽しい時間を過ごすでしょう。視覚的(ヴィジュアル)に強く訴えるソーシャルメディア上では裕福で美しい人々が、幸福な瞬間を投稿しているように感じられるものです。
しかし、そうした非リアルな世界にどっぷり浸かってしまうと、「持っている誰かと持たない自分」について否が応でも自覚させられ、憧れに近づこうとする努力がかえってコンプレックスを刺激するケースは珍しくありません。その意味でも、憧れと嫉妬は表裏一体の感情といえるでしょう。
仲の良い友達が自分以外の誰かと親密でいたり、その人と過ごす時間が増えているように感じたりすると、ないがしろにされているような気がして嫉妬心が刺激されることがあります。実際は談笑していただけなのに、「悪口を言われているんじゃないか」と被害妄想につながる場合も……。
特に学生時代はいわゆる「親友」として、お互いが相手を独占する“一心同体”のような関係を好む時期があります。親密すぎる関係ゆえ片方の気持ちが変化した場合、もう片方がまるで恋愛のように強い嫉妬心を抱くのです。
嫉妬は誰もが持つ心の動きですが、それがコントロールできないほどに強すぎるような場合、他人だけではなく自分自身をも傷つけてしまいます。背景にある要因を考えてみましょう。
他人が成功したり幸せそうにしたりする様子をみると、すぐに自分と比較をしてしまう人がいます。そして他人の評価が上がることで、なぜか自分の評価が下がるように感じ、無意識に相手の粗探しばかりしています。
本来なら過去の自分を超えるために努力すべきところを、人をやっかむことにエネルギーを費やすのは時間も気力ももったいないですよね。
自分自身の状況に満足できない状態に置かれて、他人の幸せを素直に喜べる人は多くはありません。普段はそこまで嫉妬心が強くないタイプの人も、ストレスや不満がたまると嫉妬心が生じやすくなるものです。そういうタイミングでの嫉妬心は限定的かつ一時的なものですが、慣れない感情なだけに戸惑うかもしれません。
他人の成功に対して、なぜだか自分の努力不足を責められているような卑屈な思いになることがあります。表には出さなくとも、誰もが一度は感じたことのある感情です。
同じように、幸せそうな人を見ると自分が劣っていると感じる、他人が褒められているのを聞くと、遠回しに自分をけなされているように感じる……。これらはすべて自分自身の内面の問題です。
まったく関係のないことを頭の中で無理やりつなげ、関連づけてしまうのは「自信のなさの表れ」。ありのままの自分を受け入れるのに、他人からの評価を基準にしていてはうまくいきません。他人の成功と比べて自分を卑下したところでつらくなるだけです。
負けず嫌いな性格は向上心やストイックさの表れでもあります。しかし、それが強すぎると物事を勝ち負けでとらえ、周囲の人が「競争相手」のように見えてしまい気持ちが休まりません。
人生は勝ち負けだけでは説明できない出来事のほうが、そうでないことよりも圧倒的に多いはずです。それでも競争心が強すぎる人は、他人が満足気な様子を目にしただけで、自分のことを「負けた」と思い込んでしまうのです。
仕事や勉強で「あと一歩」のところで挫折をしたり、志望校に不合格だったりする経験があると、自分が手に入れられなかったものを手にした相手に向けて、憎しみにも似た強い嫉妬心を抱きがちです。
手に入らなかったものに対してかけた時間が長かったり、思い入れが強かったりすればなおさらのこと。過去の嫌な思い出やプライドを傷つけられた経験が嫉妬心をさらに強めている状態です。
良いことも悪いことも起こるのが人生ですが、そのたびに嫉妬心で大きく心が揺り動かされるのはつらいもの。嫉妬深い性格を改善するための心の置き所と、強すぎる嫉妬心を克服する考え方を紹介します。
チャンスを手に入れて喜ぶ友人がいたとして、心の中で「失敗すればいいのに……」と考える黒い心に気づいたら、なぜそのように思ってしまうのか考えてみましょう。紙に書き出してみるのもいいかもしれません。
「もともとは私のほうが先に始めたのに、友人が先に上達してしまった」「だから友人の幸運を素直に喜べず、こんなにも妬ましい」など、もやもやした気持ちを頭の中で言葉に変換してみるのです。自らの嫌な面を直視する大変な作業ですが、物事を客観的に見るきっかけになり、冷静さを取り戻せます。
少し気持ちが落ち着いたら、「どういう状態で誰に対して嫉妬しやすいか」など、嫉妬を抱きやすいシチュエーションや自身の行動パターンを把握しておくと、次回から「嫉妬心が生まれそうな場面にわざわざ近寄らない」という選択肢をとることもできるでしょう。
人は誰もが自分ひとりの力で生きているのではありません。大げさに聞こえるかもしれませんが、あなたが今ここに存在するということ自体が多くの人やものによる「おかげ」ともいえます。
一旦、目の前の出来事から目を離し、ゆったりとマクロな視点で周囲を眺めてみると、「ちょっとした優劣」などがささいなものに思えてきませんか?周囲の人々への感謝が自然と湧き上がり、誰かをうらやむ気持ちも徐々に薄れていくはずです。
人は日々、喜び、楽しみ、怒り、悩みなどを感じながら生きています。これらの感情は自分以外の周りのせいで起こっていると思われがちですが、実際はその人が持つ「考え方の癖」が大きく影響しています。
強すぎる嫉妬心に悩まされている人は、物事を勝ち負けや損得でとらえがちなところがあります。水が半分まで入ったコップを見て「もう半分しかない」と考えるように、まだそこにある残りの半分の水よりも、すでに失われたものに目を向けてしまう――。それもまたひとつの考え方の癖です。
変えようと思ってすぐに変えられるものではありませんが、その存在を自覚するかしないかは意外と大きな違いです。
プロのスポーツ選手や将棋の棋士のように、それを職業としている人々は別として、あくまで趣味は「楽しむためのもの」。そこに勝敗があったとしても他人と比較しすぎるのではなく、過去の自分と戦うイメージに切り替えると、自分自身の成長そのものに向き合うことができます。
何かに没頭していると毎日が充実して、必要以上に人をうらやむ気持ちは案外生まれないものです。ですから、人と比較することも忘れて集中できる「好きなこと」を探してみましょう。感情に振りまわされそうになった時も、心のよりどころになってくれるはずです。
他人に嫉妬する気持ちは誰もが持つ心の動きです。しかし、それにとらわれ過ぎると生きづらさを感じたり、本来の目的を見失ったりしてしまいます。嫉妬が生じる要因や自分がどのようなシーンで嫉妬心を感じやすいのかを知り、ネガティブな感情に引きずられないことが大切です。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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