2024年05月29日
職場や学校などの集団生活で、何事においても自分中心で他人の事情を考えられない――いわゆる“ジコチュー”な人に遭遇した経験はありますか?
立ち話で少し会話するくらいの関係であればやり過ごせるかもしれませんが、家族や友人、同僚など身近にいる人が相手だった場合はたまったものではありません。自己中心的な人の特徴や上手に付き合う方法、問題ある性格の直し方についてもお伝えします。
自己中心的な性格とは、自分のことばかり考えて他人の気持ちを考慮できず、自らの意見や都合をなんとしても押し通そうとする「自分本位な性格」のことです。
相手の立場を想像するなど俯瞰的(ふかんてき)に考えることが苦手で、自分以外の人の感情を無視することに対して抵抗がなく、どのような状況においても自分が優先されるのを当然のことと考えています。
似た意味の言葉として「わがまま」や「自分勝手」などがあります。「わがまま」は周囲の迷惑を顧みず、自分の思い通りに振る舞うさまを意味し、子供の性格や態度に対して使われることが多いようです。
恋愛においては稀に「わがままなところがかわいい」などと好意的な意味合いで使われることもあります。
一方で「自分勝手」は具体的な行動に対して使われることが多いようです。他人の意見を聞かず、身勝手で利己的な様子を表します。
一時的に自分の気持ちを優先したり、気持ちに余裕がないタイミングで他人への配慮ができなかったりすることは誰にでもあるもの。
ですが、それを問題とも思わずに当然のように続けている人は「自己中心的な性格」といえるでしょう。まずは具体的な4つの特徴をみてみましょう。
自己中心的な人は何よりもまず、他人の事情について深く考えることがありません。
多くの人は自分の行動によって誰かが嫌な気持ちになったり、不利益を被ったりした場合、相手が自分にとってどのような関係であろうと申し訳なく思うもの。
ですが、自己中心的な人は文字通り「自分が中心」で世界が回っている感覚で生きていますから、他人に「配慮しよう」などという気持ちは持ち合わせていません。
周囲の人の迷惑を顧みず、ただひたすらに自分の利益や欲求を追求するのも自己中心的な人の特徴です。
どのような状況に置かれても自分が最優先。自分よりも弱い立場の存在に気づいたところで「譲る」という選択肢はなく、他者への共感や思いやりに欠けています。
「如何(いか)にしてもゴールにたどり着きたい」「誰にも負けたくない」と目標にまっすぐ突き進む向上心や負けず嫌いな性格は長所でもありますが、そのために人を利用するのを厭わず、迷惑をかけた相手のことを顧みない非情な一面を持っています。
自己中心的な人は「他者を尊重すること」を重要視していません。いつも「自分こそが正しい」と思い込み、自分の振る舞いによって「人がどう感じるのか」など、他人の受け取り方に興味がないからです。
人の意見を価値あるものと思わず、そもそも心の中では軽んじているため、周囲の人からの真摯なアドバイスを素直に受け取ることはありません。
それでいて失敗や問題が起きた際は自分の非を認めず、周りに責任を押し付けようとするので、周囲からは「信用できない人」と思われているかもしれません。
基本的に自分が中心で他人の事情を顧みないので、自らの言動が周囲にどのような影響を与えているかまで考えが至らない傾向があります。
一方、自分自身については「常に尊重されるべき存在である」という根拠のない自信を持っています。そのため、他人から無礼な対応をされるとすぐに自尊心が傷つき、感情的になりがちです。
自分も他の誰かに対して同じようなことをしているのに……。自らを客観的に観察するのは得意ではないようです。
自己中心的でいることで周りとの関係がよくなったり、人からの信用を得られたりすることはありません。それでも自分中心な性格になってしまうのには理由があるようです。5つの要因を見てみましょう。
「自分とその周りさえ良ければいい」と自己中心的な考え方を持つ保護者に育てられると、無意識にその価値観を身に着けて同じような性格を引き継いでしまうことがあります。
また、祖父母や年上のきょうだいに甘やかされるなど過保護な環境で育った子供は、その環境から離れても自己中心的な態度を取り続けることがありますが、多くの場合は同世代の子供と接しているうちに、自らで「このままではダメなんだな」と気づいて改善することが多いでしょう。
なかには後天的に自己中心的な性質を身に着ける人もいます。人と関わって傷つくことを避けるため、他人に対して壁をつくり必死に自分を守っていることも。
また、低い自己肯定感や承認欲求が原因となっている可能性もあります。「損をしたくない」という思いが強すぎて、自己中心的な態度が強調されている人もいるでしょう。
信頼していた人に裏切られたり、「良かれと思って」差し伸べた手が振り払われたり……。子供の頃などに傷ついた経験や人間関係での嫌な思い出など、過去のトラウマが原因になっている場合もあります。
受験勉強やビジネスの世界などの競争が激しい環境に置かれたら、誰かを思いやっている余裕はありません。隣の人より1点でもいい点数を取る、周囲を蹴落として社内コンペを勝ち抜く……など、結果がダイレクトに勝敗を分けるからです。
誰の目にもわかりやすく成功することが賞賛され「失敗しないこと」に過剰に気をつかう世間の空気や社会的圧力が原因になっていることは間違いありません。
人の気持ちを考えたり、それでいちいち心を痛めたりしていては、それこそ厳しい競争に勝ち抜くことはできません。本質的には人の気持ちに敏感な人でも、自らが生き残るために感情のスイッチを切った状態で自己中心的な人を装っている可能性もあります。
本来なら幼少期に受けるはずだった愛情を受けていない、家族のコミュニケーションが希薄などの環境的要因が影響している可能性もあります。
家庭内でのコミュニケーションや親からの言葉がけが十分でない環境で育つと、子供は常に愛情に飢えた状態になり、親子の「心理的な結びつき」に影響を及ぼすことがあります。それが自己中心的な性格として表面化しているのかもしれません。
愛着関係に問題を抱えたまま大人になると、特定の相手に依存したり、逆に自分を慕う人を拒否してしまったりと対人関係がうまくいかない要因になります。
自分ではどうにもならない精神的な問題が原因となっているケースもあります。
たとえば「自己愛性パーソナリティ障害」の人は自尊心のバランスがうまく取れず、自分の能力を過大評価しがちです。その自尊心が傷つけられた際には攻撃的になることもありますし、行き過ぎたナルシシズム(自己愛)は周囲の人々を遠ざけ、自分自身を苦しめます。
一方、「発達障害」や「愛着障害」などの症状によって自己中心的な性質が強調されている可能性もあります。症状が自分でコントロールできないレベルに達してしまいそうな場合は、自分で判断しようとせず早めに専門機関を受診してください。
周囲に自己中心的な人がいる場合、ともすると相手のペースに振り回されてこちらが滅入ってしまいます。どのような心持ちで付き合えばいいのでしょうか?
自己中心的な人は他人の時間やエネルギーを無制限に消費しますから「相手との境界線」や「責任の所在」を明確にしておかないと、近くにいる人が心身ともに疲弊してしまう可能性があります。
対等な人間関係において「ギブアンドテイク」は原則ですが、自己中心的な人は一度自分を受け入れてくれた相手に対しての要求がヒートアップしていく傾向にあります。
行き過ぎた要求から自分を守るため「これ以上は協力できない」と断ったり、「ここから先はあなたの問題だ」と線引きしたりするなど、意識して適切な距離を保つことが大切です。
自己中心的な人と接する際、「遠慮がちな依頼」や「回りくどい表現」は誤解を生む可能性があります。曖昧な言い方ではなく、できるだけはっきりと具体的な言葉で伝えましょう。
嫌みや皮肉と受け取られかねない言葉は、それが軽口であっても「自分への攻撃」ととらえられ、倍になって返ってくるので要注意です。感情的な言葉は避けて簡潔なやり取りを心がけましょう。
話す前から「あの人、ジコチューだから……」と苦手意識を抱かず、できるだけニュートラルな対応を心がけながら、相手の言葉に耳を傾けましょう。
やり取りを重ねるうちに考え方の根底にあるものや、なぜそのような考えに至ったのかなど、その人のことを自然と理解できるようになります。相手が抱えている問題やその背景も少しずつ見えてくるでしょう。
その上でなにか思うところがあるならば、さりげなく伝えてみてください。それまでの信頼関係がベースにあれば、お互いに冷静で生産的な話し合いができるはずです。
共通の趣味があると会話の幅が広がり、打ち解けるきっかけになります。仕事で関わりのある相手であれば、お互いに緊張したビジネスモードから、なごやかなリラックスモードへと会話を切り替えるきっかけになることも。
無理して趣味を寄せる必要はありませんが、共通の話題で親しく話せる関係性は、ビジネス上でもプラスになるはずです。相手の自己中心的な性質も多少はやわらぐかもしれません。
心に余裕がないと、足りないところばかりが目について自分が「欠点だらけの人間」であるかのように感じてしまいます。そんなとき人の長所に目を向け、言葉をかけてくれた相手に対しては深い信頼感を抱くものです。
自己中心的な態度で「自分を守っている」タイプの人は、自己肯定感や承認欲求に問題を抱えていることがあります。
自己中心的に振る舞いながらも実は自分に自信がないので、ポジティブな声かけや嘘のない褒め言葉によって、頑(かたく)なな態度が解消されることがあります。
ここまで読んで「もしかして、自分は自己中心的かも……」と心配になってきた人もいるかもしれません。性格を直すためにはある程度の忍耐が必要ですが、いくつかのことを意識すれば改善することは可能です。ここでは5つのヒントをご紹介します。
自己中心的な人はトラブルが起こった際、心の中で責任転嫁しがちです。他人のせいにせず、自分が負うべき責任やそれに対する指摘を受け入れることから始めましょう。家族や友人などの信頼できる人に率直な意見を言ってもらうと、客観的に自分を見る手助けになります。
また、1日の終わりには「周囲に対してどのような影響を与えただろうか?」と思いをめぐらせる“内省”の機会とともに自分自身と向き合う時間をつくりましょう。
最初は「またやってしまった……」といたたまれない気持ちになるでしょうが、意識して続ければ徐々にポジティブなやり取りが増えていきます。
ひとつの出来事に対し、できるだけ多面的に考えるよう心がけましょう。どちらが「悪」でどちらが「善」と断定できないことは、人類の歴史を振り返っても明らかです。
世界のある地域の人々が経済的に非常に豊かである一方、ある地域の人々は貧困にあえいでいる――そのような不均一な状況を知れば「自分が良ければそれでいい」という考え方は必ずしも正しくない、ということに気づくはずです。同じ流れで自分以外の「他者の視点」についても想像できるようになります。
人にはそれぞれの利害があり、自分を犠牲にしてまで他人に尽くすような利他的な生き方は簡単にできるものではありませんが、人と人がお互いに支え合う大切さを知り、自分自身が「生かされている」という感覚をいつも忘れずにいたいものです。
人の意見を受け入れるのは意外と難しいもの。相手は気楽にアドバイスをしているつもりかもしれませんが、実際に手を動かした側に立ってみれば、「人の気も知らないで……」と思うのは自然な心の動きでしょう。
しかしながら、外部からのフィードバックがこれまでにない発想や気づきを生むことは少なくありません。人から意見された際は感情的に反発せず「これも成長の機会」ととらえて、一度まるっと受け入れてみるのも良い経験になるはずです。
普段の生活の中で見つけた「感謝したいこと」や「人にやってもらってうれしかったこと」を心の中で数えてみましょう。
「知らない人に道を譲ってもらった」「家族に悩みを聞いてもらった」など、具体的な誰かに対してでもいいですし、「天気がよくて心が晴れた」「旬の果物がおいしかった」などの自然の恵みに感謝する気持ちも大切です。
逆に「ちょっとした手助けに“ありがとう”といわれた」など、人から感謝された記憶も心をあたためてくれます。
自己中心的な人は自由奔放に振る舞っているように見えて、実は猜疑心(さいぎしん)が強いため、「この場で私よりも優先されている人がいるかもしれない」「絶対に損をしたくない」と周囲の状況が気になり、心が落ち着かずに緊張状態が続いています。
本人は気づいていないかもしれませんが、ストレスをためて攻撃性や自己中心的な性質が強くなってしまう……という悪循環に陥っているかもしれません。
「人と会うと、どうしても自己中心的な性格が顔を出す」と感じているのなら、週末などに仕事や家族から離れていつもは行かない場所を訪れたり、普段の自分ならやらないことに挑戦したりしてみませんか?
毎日のルーティーンから離れ、いつもと“ちょっとだけ違うこと”に取り組むと、気分転換になり気持ちが明るくなります。そばにある物や近くにいてくれる人々の存在に慣れた状態から一度リセットされ、新鮮な見方で物事の良い面に目が向きやすくなるでしょう。
自己中心的な人が近くにいると大変ですが、実は当事者も自分の性質に悩み、問題を抱えていることがあります。その人が自己中心的な振る舞いをする要因に思いをめぐらせてみると、こちらの心も少し軽くなり、寛大な気持ちになれるものです。
もしあなたが自身の性格の問題を自覚していて直したい気持ちがあるのなら「自分自身と向き合うこと」「他者の視点に立って考えること」などを意識しながら、焦らず長い目で改善に取り組んでみてください。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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