公開日:2026年04月09日
子供が小学校に進学するタイミングで増える悩みが「お留守番」。保育園や幼稚園で手厚く預かってもらえていた頃がウソのように、小学生になると放課後の過ごし方に悩む機会がぐっと増えますよね。さらに、学年が上がると「仲良しの友達が学童をやめたから学童に行きたがらない」「夏休みの長い1日をどう過ごさせたらいいだろう」といった、お留守番について考えざるを得ないタイミングもやってきます。
いざお留守番となれば、どんなに子供と約束をしても、帰ったら玄関の鍵が空いたままでドキッとすることや、リビングで過ごしているのに子供部屋のエアコンをつけっぱなしでイラッとすることがあるかもしれません。
わがの子のお留守番を考えるようになったら、まずはお留守番の実態と子供を守るためのリスク対策をしっかりと学びましょう。
こども家庭庁の調査によると、小学1年生から6年生の子供を持つ共働き家庭で、保護者が家にいない時間帯に子供が過ごしている主な場所は、学校がある日の放課後・夏休みともに自宅が約6割で、学童が約2割です〈出典:こども家庭庁、報告書(小学校の長期休業中におけるこどもの居場所に関する調査研究、令和7年3月)〉。この調査結果から、多くの子供たちが自宅でお留守番をしていることが分かります。
また、小学4年生になると学童を利用する子供がガクンと減るというデータもあり〈出典: こども家庭庁、令和7年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(令和7年12月23日)〉、その頃からお留守番を始める家庭が多いことが読み取れます。一方、民間の調査では、初めてのお留守番を経験する子が最も多いのは小学1年生という結果もあることから、多くの子供が「6歳から9歳」でお留守番デビューしているといえそうです。
ただし、何歳になったからお留守番ができるとひとくくりにできるものではありません。子供の性格や物事の理解力、普段から約束を守れるかどうかなど、その子に合わせた最適な時期があると理解しておきましょう。
まずは、子供にお留守番をさせる際のリスクについて解説します。一人で過ごすということは、何かあったらまずは子供一人で対処しなければいけないということです。親子それぞれの安心のためにもしっかりと押さえておきたいポイントです。
家の中に大人がいないことが外部に知られると、空き巣や連れ去りなどの犯罪に巻き込まれるリスクが高まります。家に帰ってきた安心感から玄関の鍵を閉め忘れたり、暑いからと窓を開けっぱなしにしていたりすることがトラブルの元になります。
また、インターホンへの応答や電話対応も注意が必要です。「お母さんは今、出かけています」といった何気ない一言が、「大人がすぐに出てこられない状況」を悟らせてしまうからです。
普段は親が「そんなことをしたらケガするでしょ!」と気を付けていても、一人の時はうっかり転んだりぶつかったり、高いところから落ちたりする事故が起こりやすくなります。ケガをした後、子供だけでは適切な判断や処置が遅れ悪化してしまうリスクもあります。万が一の事態を防ぐために家の中を整え、対処法を決めておくことが欠かせません。
キッチン周りの火の元や、ストーブなどの電化製品の操作は火災ややけどに直結します。子供が好奇心から触ってしまう事故も少なくありません。
シーンと静まり返った家の中で一人で過ごすことに、強い不安や孤独を感じる子供もいます。小さな物音に敏感になったり、一度不安が高まるとパニックに陥ったりすることもあります。この心理的なストレスも無視してはいけないリスクの一つです。
子供が一人の時、鍵をなくして家に入れない、急に体調が悪くなった、すぐに助けが必要な状況になったらどうするか決めていますか?子供自身が助けを求める手段を知らないと、状況によっては命に関わることもあります。
最近では子供にスマホや会話のできるGPSを持たせたり、リビングに見守りカメラを設置したりしている家庭も多いと思いますが、それだけで安心してはいけません。子供が緊急事態であることが分かったとしても、親がすぐに自宅へ帰れる状況とは限らないからです。いざという時はお隣さんに頼るのか、仲のいいお友達の家へ助けを求めるのかなど、緊急時の対応方法を子供と一緒に決めておきましょう。

次に、子供にお留守番をさせる際の防犯対策について具体的にみていきましょう。
基本は「インターホンが鳴っても出ない、ドアを開けない」ことを徹底して教えます。
両親で協力して「抜き打ちロールプレイング」をやってみるのもおすすめです。仕事帰りや買い物帰りに、カメラに姿が映らないようにして家のインターホンを鳴らしてみてください。子供が約束通り「出ない」ことを貫けるか、つい「はーい」と返事をしてしまわないかを確認するのです。
玄関はもちろん、窓の鍵も開けたら必ず閉める習慣をつけましょう。玄関の鍵をかけ忘れるだけなら想定内ですが、鍵をドアにさしたまま忘れる、玄関を開けっぱなしにしたまま忘れるなど、大人には思いもよらない行動を取るのが子供です。玄関の決まった場所に鍵の置き場所をつくるなど、子供でも分かりやすいルールを作って戸締りを徹底しましょう。
子供一人で留守番中だと悟られないために、親が家にいなくても「お母さん、ただいま!」と大きな声で言ってから家の中に入る習慣をつけておきましょう。「この家には大人もいる」と周囲に知らせることができて、防犯対策になります。また、昼間でもカーテンを閉めきりすぎず、夕方になる前に照明がつくように設定しておくのも有効です。
「防犯」対策をしっかりしている家庭でも、お留守番時の「防災」対策は盲点だったという家庭は少なくありません。
ここからは、株式会社タフ・ジャパン代表で、消防庁消防大学校の講師である鎌田修広さんの著書『親子で備えて生き延びる おるすばん防災』(ニューモラル出版)を参考に、子供にお留守番をさせる際の防災について具体的に見ていきましょう。
大きな地震が起きた際、何をするかという行動のルールと優先順位を決めておきましょう。
想像してみてください。今地震が起きたとしたら、お子さんは真っ先にどのような行動を取るでしょうか。鎌田さんは次のように指摘します。
子供は、災害時にまず親へ連絡を取ろうとして、つながらない電話をかけ続けます。逃げるように教えられていても、生死を分ける最も重要な時間を、つながらない電話をかけるために使ってしまう可能性があるのです。(中略)
(出典:『親子で備えて生き延びる おるすばん防災』(ニューモラル出版))
家庭で事前に備えておけることはたくさんありますが、「まず命を守る」ために必要なことは、実はそれほど多くはありません。子供たちが好きなサバイバルグッズもサバイバル術も、役立つのは「命が助かってから」の話です。
行動ルールを決めるといっても、いったい何から手を付けてよいか分からないという方には、家の中で最も安全な場所「セーフティーゾーン」を子供と一緒に考えて決めるのがおすすめです。家の中に、何も落ちてこない、窓から離れている、閉じ込められないなど「ここなら安全」という場所があるはずです。その場所に分かりやすく目印をつけておき、「大きく揺れる前にこの場所に移動する」と決めておくと、命が助かる可能性がアップします。
大人は災害時に電話がつながりにくくなることを知っていますが、それを知らない子供は親に電話をかけ続けます。中には不安になって、つながらない電話を何十回とかけ続ける子もいるでしょう。普段から「災害時は電話はつながらない」ことを伝えておきましょう。大人にとっての当たり前が子供にも同じとは限らないのです。
その上で、公衆電話の使い方や110番や119番のかけ方、「災害用伝言ダイヤル(171)」の録音・再生方法を一緒に試しておくことをおすすめします。災害用伝言ダイヤル(171)は、毎月1日と15日に体験利用ができるのでぜひ一度試してみてください。
また、被災地以外の遠方の知り合いや親戚を連絡拠点にする「三角連絡法」も覚えておくと役に立ちます。災害時、近くの家族への電話はつながりにくくても、遠くへの電話はつながりやすいことがあるので、離れて暮らす祖父母や親戚を拠点にして安否を確認し合うのも一つの手段です。
そして大事なのが、連絡先の情報を準備すること。非常時に頼りになるのはやっぱり手書きの情報。紙やノートに親の勤務先や親戚の電話番号を書いたメモを、電話の横や冷蔵庫など分かりやすい場所に置いておくと安心です。
親が防災グッズや備蓄をしっかり準備していても、子供がその保管場所を知らなかったり、手の届かないところに置いてあったりしたら使えませんよね。大人がここに置くと決めつけないで、子供の意見を聞きながら取り出しやすい場所を決めましょう。
前出の鎌田さんは、日常的に使うものを非常時にも役立てる「フェーズフリー」の考え方で、ポータブル電源をあえてリビングに置いて日常使いしているといいます。スマホの充電をそこでするので、家族みんながポータブル電源の使い方を知っていて、いざという時にポータブル電源がバッテリー切れしていた、なんてことを防げるメリットがあるのです。

大人の普通が通用しないのが子供のおもしろいところでもあり、お留守番の怖いところでもあります。「うちの子に限って」という思い込みをいったん横に置き、お留守番をさせる際の安全対策についても考えましょう。
包丁などの刃物、ライター、医薬品、洗剤などは必ず子供の手が届かない収納場所に片付けておきましょう。留守番をさせる前に安全な環境を整えておくことが、不慮のケガや誤飲のリスクを大きく減らします。
「お留守番中にキッチンは使わない」というように、行動範囲を限定することも事故防止に有効です。口で伝えるだけでは子供は忘れてしまいますから、事故が起きやすい場所は使わないようにルールを決めたら、紙に書いて目につく場所に貼っておくとをおすすめします。
「いい子にしててね」といった曖昧なお願いはトラブルの元です。「火は絶対に使わない」「ベランダには出ない」「お友達を家に入れない」など、一つひとつ明確に決めましょう。
決める際に大切なのが子供の納得感です。
大人に、「ああしなさい、こうしなさい」と指示されたら、子供はその場では「分かった」と答えるでしょう。でも、仕方なしに分かったと言っただけで、心底は納得していないかもしれません。それじゃあ意味がありませんよね。
(前掲書)
大人が“正解”と勝手に決めたことを、ただ押し付けるだけでは、それ以外の選択肢や子供が自分で考える機会を奪いかねません。大切なのは、「なぜそうするのか」の意図をきちんと説明して、子供に理解と納得をしてもらうこと。(中略)
物事は、(理由を)知る/(自分で)考える/行動する(アクション)をワンセットにすると身に付きやすくなります。ぜひ、「どう思う?」「一緒に考えよう」と親子でコミュニケーションを取りながらページをめくり、ご家庭の防災について話し合ってみてください。
あれもダメ、これもダメとがんじがらめにしてしまっては、家の中が窮屈になってしまいます。お留守番に慣れてきたら都度ルールを見直すこともお忘れなく。
子供が一人でも落ち着いて過ごせるように、お留守番中の過ごし方を「タイムスケジュール」として決めておくのがおすすめです。
宿題をする時間、おやつを食べる時間、動画を見ていい時間、そして一番大切な「親が帰ってくる時間」を具体的に伝えることで、子供は見通しを持って過ごすことができるようになります。大人だって何時になるか分からない帰りを待っているのはイライラしますし、心配になるものですよね。子供にとってもそれは同じです。
もちろん、お気に入りの動画やおやつを用意しておくのも効果的ですが、最後は親が「〇時には必ず帰ってくるね」という約束をしっかり守ること。その信頼の積み重ねこそが、子供にとって一番の安心材料になります。
親がどうしても不安を感じる、あるいは子供の様子から「まだお留守番は早い」と感じる場合は、無理をしない判断も立派な危機管理です。
不安だけれど、どうしてもお留守番をさせないといけない場合は、ファミリーサポート制度や、短時間から利用できるキッズシッターサービスを利用してみましょう。それぞれのサービスに長短はありますが、利用したいシーンや家庭の事情によって使い分けることで、子供の安全と親の心の余裕を両立させることができます。
日本では、お留守番に関する明確な年齢基準に関する法律はなく、各家庭の判断に委ねられています。しかし、国や地域によっては厳しく法律が定められているところもあります。
例えばイタリアでは、14歳未満の子供を危険な状態で放置すると刑事罰の対象になるなど、保護者の責任が厳しく問われます。またアメリカでも、州によっては子供だけで留守番できる年齢が法律で定められており、日本より明確な基準がある地域が存在します。それだけ子供の安全を最優先に考える意識が世界的に強いという背景は、知っておいて損はありません。
手をつないで歩いていた小さなわが子が、一人でいろいろなことをできるようになるのは嬉しいものですが、まだまだ子供の側面もあります。最初は近所のスーパーへの買い物といった10〜15分程度の短時間のお留守番から始めてみて、小さな「自分でもできる!」という成功体験を積み重ねることで、お留守番に対する子供の不安がやわらぎ、親の安心にもつながっていきます。
子供にお留守番をさせることは、単に親がいない時間を過ごすことではなく、自立への大きな一歩です。 最後に鎌田さんから親へのメッセージをご紹介します。
「ある程度のことは自分でできる」という日々の成功体験は本人の自信となり、親の安心にもつながります。(中略)
(前掲書)
低学年くらいまではいろいろと拙く、親があれこれ先回りしてて手を焼きたくなるかもしれませんが、ぐっとこらえて見守って。子供の「一人でもだいじょうぶ」を少しずつ増やしてくことも防災です。
お留守番デビューを子供の「生きる力」を育てる貴重なチャンスと捉え、親子で話し合い、備えながら、その一歩を成長につなげていきましょう。

\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ
ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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