2024年12月12日
「自分なんて他の人と比べて全然できていない」
「もっと頑張らないと周りに追いつけない」
こうした思いを抱えて苦しくなることはありませんか?そこには「劣等感」と呼ばれる感情が関係しているかもしれません。
劣等感は誰もが持ち得るものですが、そのままにしておくと自己評価が低下し、自信を失ってしまうことも。今回は人が劣等感を抱いてしまう原因と克服する方法、さらにその感情を前向きに活かす方法について解説します。
劣等感とは、自分が他人よりも劣っている、価値がないと感じる心理状態を指します。この感情は、特定の状況や人との比較から生まれることが多く、自己評価の低下や自信の喪失につながることがあります。
劣等感は、一時的に「自分は他人よりも劣っている」と感じる感情です。他人や状況と比較することで生まれることが多く、状況が変われば解消することが少なくありません。
一方のコンプレックスは、劣等感が深く根付き、日常生活にまで影響を及ぼす心理的な状態を指します。コンプレックスが強くなると、無意識のうちに自己否定や特定の行動を避けるようになります。
例えば、「今日のミーティングでは同僚よりいい発言ができなかった…」と落ち込むのが劣等感、「そもそも自分は人前で話すのが下手だし、どうせ何を言っても伝わらない」と思い込むのがコンプレックスです。
劣等感が強い人には、いくつか共通する特徴があります。ここでは、代表的な特徴をみていきましょう。
劣等感が強い人は、他人の成功や長所に目が向きやすく、かつ自分の短所に意識が向いてしまいます。他人の成果を目にするたびに、自分を否定してしまうので、さまざまな場面で「自分は劣っている」と劣等感を感じやすくなります。
自己評価が低いため、自分の意見を他人に伝えることをためらう傾向があります。打合せでアイデアを求められた際、本当は自分の考えを持っているのに「こんな意見ではレベルが低いと思われるかもしれない」と不安に感じ、発言をためらうことも…。
「自分の意見には価値がない」「他人の意見のほうが正しい」という思い込みが根底にあるため、他人に流されやすくなり、自分の軸を見失いがちです。
劣等感を抱える人は、他人からの評価や認められることに依存しがちです。他人から認められることで「自分はつまらない人間ではないのだ」と感じ、これが満たされないと劣等感が強まってしまいます。自分の価値を他人にゆだねてしまうタイプといえるでしょう。
同僚の昇進や、友人の結婚、きょうだいの成功など、本来であれば喜ばしいことを目にしても、それを自分の劣等感と結びつけてしまい心から喜べません。自分はまだそこまでたどり着けていない、置いていかれたと感じ、嫉妬や自己否定に陥ってしまいます。
失敗したら評価が下がる、試験勉強しても受からないかもしれない、人にどう思われるか怖い……など、失敗したときのことを過剰に恐れ、リスクを伴う新しい挑戦を避けがちです。そのため、成長の機会を逃してしまうことも少なくありません。
劣等感を抱くようになってしまった原因はさまざまです。ここでは代表的なものを解説します。
他人と自分を頻繁に比較する習慣が劣等感を引き起こす大きな要因です。特に現代はSNSの普及により、他人の成功や楽しそうな生活を目にする機会が増え、自己評価が低下しやすい状況といえます。
過去の失敗や、それに対する周囲の反応が劣等感のきっかけとなることがあります。例えば、学生時代の発表でミスをしてクラスメイトに笑われた経験から、「自分は人前で話すのが苦手」と思い込むケースなどがそうです。「自分はダメだ」と感じた経験が劣等感として根付いてしまうことがあります。
幼少期に家庭や学校で受けた言葉や態度は、自己評価に大きく影響します。特に、過剰な期待や他の子供との比較、厳しい教育が続く環境では、「自分は価値がない」「他人より劣っている」と感じやすくなり、それが劣等感の原因となる場合があります。「○○ちゃんはできるのに、どうしてできないの?」。そんな親や教師の態度が続くことで、子供は「自分はダメだ」と自信を失ってしまうことに……。
反対に、親の愛情表現が乏しかったり、子供を褒める機会が少なかったりしても、子供は「自分は親から認められていない、愛されていない」と感じるものです。その結果、自己肯定感が低下し、劣等感へとつながります。
職場や学校、家庭で求められる期待や基準が高い場合、それに応えられないと感じることで「自分は足りない」と思い込み、劣等感を抱きやすくなります。毎月の営業目標が課せられている職場や家族からの成績、進路などへの期待が大きいと、それに応えられなかったときの反動も大きくなります。
ここからは、劣等感を克服するための行動や言葉がけをご紹介します。一度に全て取り組むと、できなかった時にがっかりしてさらに劣等感が増してしまいます。まずは1つ、これならできそうというものから取り組んでみませんか。
他人と比較するのではなく、自分が得意なことや好きなことに目を向けましょう。小さな「できた」を積み重ねることが自己評価を高める近道です。
「自分には無理」「どうせ」という思考や口癖が出そうになったらひと呼吸。「まずはやってみよう」「今できることはなんだろう」といった前向きな言葉を自分にかけることで、自己イメージを改善できます。
比較するなら他人と自分ではなく、過去の自分と今の自分を比較しましょう。「今年の自分は、去年の自分より目標に向けて少しは行動できた」と、自分がどれだけ成長しているかを確認するようにしましょう。
日々の小さな成果や努力を自分で認めることで、自己肯定感を高めることができます。
心理カウンセラーの長谷静香さんは、著書の中で自分を大切にするために、自分に「ヨイ出し」することを提案しています。
(長谷静香『周りを優先し過ぎるお疲れママのためのご自愛レッスン』モラロジー道徳教育財団刊)
劣等感を克服する方法を試してみても改善しなかったり、日常生活にも支障が出るほど深い劣等感に悩んでいたりする場合は、心理カウンセラーや専門機関に相談することで、解決の糸口が見つかることもあります。
誰に相談したらよいか分からないという方は、以下の厚生労働省の相談窓口を利用してみてください。
https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/ (働く人のメンタルヘルス·ポータルサイト「こころの耳」)
劣等感は適切に向き合えば、自己改善の原動力になることがあります。他人に負けたくないという気持ちが努力を促し、スキルアップや目標達成につながることもあるからです。
また、失敗した経験があるからこそ、例えば後輩が同じ状況に陥った時に共感し、アドバイスできることもあります。
劣等感を感じたことがある人ほど他人の気持ちに共感できる優しい人であり、人間関係の構築に役立つはずです。劣等感は共感力の種でもあります。
劣等感は誰にでもある感情ですが、しっかり向き合えば自己成長の糧に変えられます。自分の長所に目を向け、小さなできたを積み重ねることで、前向きな変化を起こしていきましょう。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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