2025年03月14日
「しんのすけ、早くしなさーい!!」アニメ『クレヨンしんちゃん』で毎回一度は聞くせりふです。
主人公の母、野原みさえは子供たちに振り回され、家事に育児に毎日大忙し。超マイペースな息子のしんのすけにイライラしつつも、つい急かしてしまうのは、みさえ自身のせっかちな性格も関係しているのかもしれません。では、せっかちな人にはどのような特徴があるのでしょうか?意外なメリットや改善方法についてもご紹介します。
スムーズに物事が進まないとカリカリしたり、イライラしたり。結果や行動を急ぐあまり、先へ先へと気持ちが急いて落ち着かず、何事にもスピードを求めるのがせっかちな人です。良く言えば行動力があり決断も早いのですが、先のことばかりを見て人間関係で摩擦を生むことも……。まずは具体的な特徴を見てみましょう。
せっかちな人は何事にも「すぐに結果がほしい!」と考えがちです。地道で長期的な取り組みよりも、分かりやすい数字の変化など、短期間で現れる成果を重視する傾向があり、ある程度の期間で大きな変化が見えないと「意味がない」と感じてやめてしまいがちです。
コツコツと先の見えない努力をするのは好みではないようですが、一方で普段から「短時間でどれだけできるか」を考えているので、いったん「これをやる」と決めたら周囲が目を見張るようなスピードと集中力で、たちまちに語学などを習得してしまうことも少なくありません。
ひとりでせかせかしている分には構わないのですが、せっかちな人は他人にもスピードや効率を求めがちです。「早くして!」が口癖で、家族や同僚が自分のペースに合わせることが当然だと思っているところがあります。
せっかちな人の目には、自分以外の人間は「のんびりしている」と映るようです。職場でのタイムキーパー的な役割には向いていますが、場合によっては相手にプレッシャーを与えて「口うるさい」と思われてしまうことも……。どんな人もせっかちな性格の上司や同僚が近くにいたら、嫌ですよね?
ことに頭の回転が早い人はせっかちになりがちです。「1を聞いて10を知る」の言葉通り、すばやく物事の本質をつかみ、先のことを見通す力には長けているのですが、そのせいで他人の行動に対して「あの人はなぜ○○をしないのかな?」ということばかり気になってしまうのです。
友人と会話をしているときも、結論を急ぐあまり会話の途中で相手の話をさえぎったり、先まわりして結論を出そうとしたりすることがあります。もしかして、友人はあなたにただ話を聞いてほしかっただけかもしれません。そんなときに「で、結論は?」なんて言われたら、自分の存在が軽んじられていると感じてしまうでしょう。
何もしていない時間があると気持ちが落ち着かず、暇があるとつい何かしらの行動をしたくなります。特に「待つ」ことが苦手でエレベーターの待ち時間や行列などがあると、階段を使ったり、並ぶのをやめて別の店を探したりするタイプです。
空き時間があるとスマホでメールチェックしたり、ネットニュースを読んだりとインプットを欠かしません。そのためトレンドには敏感ですが、周囲からは「落ち着かない人」と思われている可能性も。フットワークが軽くて行動力もありますが、いつも何かに追われていて「余白を楽しむ」という心の余裕が持てないようです。
スピードを重視するあまり、丁寧さに欠けてしまうことがあります。「とにかく早く終わらせたい」という気持ちが強すぎて、メールや資料の誤字脱字が多かったり、料理中に慌てて手を滑らせたりと、思わぬ事故やミスにつながることも……。結果的にやり直しが発生して、かえって時間がかかることもあるかもしれません。
物事をスムーズに進めたいという思いから、事前に計画を立てるのが得意です。旅行のスケジュールを細かく決めたり、仕事の進行をきっちり管理したりすることは好きですが、急な変更には弱いところがあります。
旅行でも仕事でも想定外の出来事はしばしば起こるもの。そのようなことも含めて「こんなこともあるよね」と受け止めて、もとの場所へと引き返したり、別の道に進んだりする選択肢もあるはずですが、予定を変更して柔軟に対応するのはあまり得意ではないようです。
せっかちになってしまう要因についても考えてみましょう。
小さな頃から「早くしなさい!」と言われて育つなど、親や教師から急かされる環境に置かれていた子供には「早いことはいいことだ」「ダラダラしてはいけない」という意識が身に付きます。
もしかしたら、現代の子供は少し忙しすぎるのかもしれません。子供の感性や想像力は、何をするか決められていない自由なあそびの時間にこそ育まれるもの。「いつも何かをしていなければならない」「意味のあるものを生み出さなければいけない」という思い込みは、行き過ぎるとその後の人生の生きづらさにつながる可能性があります。
社会人は勤め先からの給与の見返りに、先ほどの「意味のあるものを生み出さなければいけない」というプレッシャーを常に強いられています。時間は誰しも平等に1日に24時間しか与えられていませんから、その中でより多くのタスクをこなし、最大限の成果を出すためにはせっかちにならざるを得ません。
職場で求められるスピード感や効率重視の意識を家庭やプライベートに持ち込んでしまうと、家族や友人とリラックスした関係を築くことが難しくなります。
ただ、家のことを担当する専業主婦(主夫)も時間に追われている状況は同じです。特に子育てなどは、ある年齢までは子供のペースに合わせる必要がありますし、成長する中で親に求められる役割がどんどん変わっていきます。そのスピードに追い付こうと気が焦るのは当然のことです。
育った環境や社会的な圧力などは関係なく、もともとせっかちな気質を持つ人もいます。外向的でエネルギッシュな性格の人はやりたいことがたくさんあるため、じっとしていられず「もっともっと」と次の行動に移りたがります。
また、一般的に子供は大人よりも待つのが苦手です。時間の感覚が未熟で大人にとっての5分と子供にとっての5分が体感として違うため、待っている時間がとても長く感じるためです。
臨床心理士の玉井仁さんは、人の行動パターンや考え方のクセについて解説した著書『私、合ってますよね?しちゃう、できない、やめられないの正体』でなにかと効率にとらわれがちな性格に「コスパ・タイパ至上主義さん」と名前をつけて、その特徴や付き合い方を解説しています。本書に登場する人物の発言を一部引用してご紹介します。
出典:『私、合ってますよね?しちゃう、できない、やめられないの正体』
インターネットの普及とテクノロジーの進化によって、今を生きる人々は短時間でモノや情報を得ることに慣れてしまっているのかもしれません。快適に生きるためには、もちろんコストパフォーマンス(時間帯効果)やタイムパフォーマンス(時間対効果)も大切ですが、手段と目的を取り違えてしまいがちな人が多いのもまた事実です。
せっかちな人は「それは結果に結びつくのか?」とか「自分の利益になるのか?」という視点で物事を見て、分かりやすい結果を求める傾向がありますが、たまには意識して「いったい何の(誰の)ために頑張っているのか?」というもとの目的に立ち返ってみましょう。きっと自分にとって本当に大切なことが見えてきます。
とはいえ、せっかちな性格は悪いことばかりではありません。せっかちな人はそうでない人よりも物事を判断するスピードが早く、何事においても最短距離を考えて効率的に動くことが習慣になっています。マルチタスクを抱えながら、何かとスピード感や効率が求められる現代社会においてはプラスに働くことも少なくありません。
せっかちな人は迷ったり、悶々したりする時間が耐えられません。同じ場所をグルグルと回っているように思えて「時間を無駄にしている」と感じるようです。時と場合によっては必ずしも迷う時間が「すべて無駄」というわけではありませんが、同じ場所にとどまることなく、目の前の課題に正面から向き合って物事を前に推し進めようとする姿勢は、決断力が求められる場面で重宝されます。
仕事においてもスピード感を持って取り組むことを大切にしています。それがどんなに複雑で入り組んだものであっても、まずは手を付けられるところから始めて全体感を把握したら、まるで雪かきをするように目の前の仕事をどんどん進めていきます。その結果、仕事に対する処理能力が高まります。
じっくりと考えてから慎重に動き出すことの良さもありますが、行動なくしては何も状況は変わりません。せっかちな人は「やろう」と思ったらすぐに行動に取りかかるので、そうでない人と比べて仕事への着手も成長スピードも早いのです。
また、すぐに行動したからこそ見えてくる問題点や改善点も必ずありますから、何よりも「まず動いてみる」「動き出してから考える」というスタンスは社会人としての強みのひとつになるでしょう。
せっかちな人はいつも時間に追われていますが、そのため自然とテキパキと効率よく処理するスキルが自然と身に付いています。さらには達成すべき目標や具体的な結果を決めると、頭の中でその目標までの最短距離をたたき出し、素早く段取りを組んで最低限の作業量で物事を進めることが得意です。
職場だけでなく家庭や人間関係でも効率を求める人も少なくありません。普通の人はいいアイデアが浮かんでも「いつかやろう」と寝かせがち(そのまま忘れがち)ですが、せっかちな人はそれを良しとしません。「時短」や「ライフハック」というワードが好きでネットで役に立つ情報を見つけたらすぐに実践します。
このようにせっかちであることは、うまく活かせば長所のひとつになりますが、せっかちな性格が気になって直したいという人もいるかもしれません。改善につながる方法をいくつかご紹介します。
人には人のペースというものがあります。世の中がせっかちな人ばかりではないように、それぞれのペースを持った人々が一緒に暮らしているわけですから、他人のペースを尊重し、時には相手に合わせることも必要です。
良かれと思って先回りしたことが、相手にとっては自分のペースを乱されたように感じるかもしれません。思いついたら即行動する姿勢はせっかちな人の長所でもありますが、何かをする前に一度立ち止まり、周囲を観察して「相手はどう感じるかな?」と考える習慣も持ちたいものです。
また、「自分の当たり前を他人に押し付けていないか」という視点も忘れないようにしましょう。例えば、日本では電車が決まった時間に来るのは当たり前ですが、これは世界的に見ればかなり特異な状況です。待ち合わせや締め切りなど、国や文化で時間に関する考え方や常識が異なるのはよくあることです。
せっかちな性格を自覚しているのであれば、事前に余裕のあるスケジュールを組んでおきましょう。あらかじめバッファをもうけておけば、急な予定変更や想定外のトラブルがあっても焦らずに対応できます。
せっかく時間の余裕をつくっても、その余った時間をまた仕事や予定で埋めたくなるのがせっかちな人。ですが、たまにはそんな気持ちをグッと我慢して、スケジュールの余白をキープしてみてください。
既成概念にとらわれないクリエイティブな発想の多くは“余白”から生まれます。1日中パソコンに向かって座っていれば“作業”は進むかもしれませんが、大きな成長の種に気付いたり、業務改善のアイデアを考えついたりすることは難しいでしょう。
「せっかちになっているかも?」と思ったら、呼吸に意識を向けてみてください。気持ちが焦っていると呼吸が浅くなりがちです。そんなときは深呼吸をしてみましょう。深呼吸で副交感神経が優位になると心身がリラックスして緊張や興奮がやわらぎます。
仕事で企画や提案を出す締め切りが近づいて「早くやらなくてはいけないのに、何も思いつかない」というときは散歩もお勧めです。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏は考えごとをしながら頻繁に歩き回り、散歩をしながら議論をすることを好みました。
実際に散歩には脳の働きを少しだけ良くする効果があるといいますから、ジョブズ氏は柔軟な発想や新しいアイデアが会議室では生まれないことを直感的に知っていたのかもしれません。
せっかちな人がひとりでせわしなくしている分には問題ないのですが、ときどき周囲にまでそれを求める人がいます。それが家族や上司だったりすると相手のペースに巻き込まれて、自分の本当にやりたいことに取り組む余裕がなくなってしまうことも……。せっかちな人との上手な付き合い方についても知っておきましょう。
周囲にせわしなくしている人がいると気になってしまいますが、大切なのは相手のペースに巻き込まれないこと。そもそもペースが異なるのですから、無理して合わせる必要はないのです。せっかちな人は往々にしてイライラしがちですが、そのイライラに毎回対応する必要はありません。
せっかちな人に急かされたり、先回りして仕事をされたりすると「できていない自分を責められている」ように感じることがありますが、「この人はこういう人で、やりたいからやっているのだ」と考えると、相手に対する見え方も少し変わってきます。
さらに大きな視点で見れば、組織の中に物事をどんどん前に進めていくパワーを持った人物がいることは決して悪いことではありません。その人の性質を周囲が受け入れてうまく活かすことができれば、チームにとっても本人にとってもいい結果につながるはずです。
せっかちな人は、目の前にいる人が「何もしていない」とか「まだやっていない」ように見える状態が耐えられません。本来であればお互いに自分のペースがあり、それぞれの人のやるべきことは異なるはずですが「今すぐやってほしい」という気持ちが抑えられないのです。
自分勝手な要求ではありますが、こちらに心の余裕がある場合は向こうの要望に沿う姿勢を見せると、安心して落ち着いてくれます。すぐに対応できない場合は「やっているよ」「これからやるよ」というポーズをとっておくのもひとつの手です。
日々ストレスにさらされ、時間に追われ、いつでもどこでもメールの返信ができてしまう時代。友達とのやりとりでも「既読かどうか」が気になり、大人も子供もせっかちにならざるを得ない状況です。
ただ、それが行き過ぎたり、人に押し付けたりしてしまうと自分も周囲も苦しい状況になってしまいます。ここまでお伝えした通り、せっかちにもいい面と悪い面がありますから、これも自分自身の一面と考えてうまく付き合っていきたいですね。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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