2025年11月17日
小さな赤ちゃんは泣くのが仕事ですが、大人にだって泣きたくなることはあります。悔しいことや悲しいことを思い出して、ベッドの中で人知れず枕を濡らす人もいれば、感情が高ぶって人前で涙をこぼした経験がある人もいるかもしれません。
泣くのは悪いことではありませんが、ある程度の年齢になると、人前で涙を見せるハードルがぐっと上がるのも事実。中には、感情がうまくコントロールできず、「すぐに泣いてしまう自分の扱いに困っている」という人もいるかもしれません。今回は「すぐに泣いてしまう人」について考えてみましょう。
悲しい気持ちになると、自然と涙が出てくるのはなぜでしょうか。
「泣く」という行為は、ストレスを緩和させ気持ちをリラックスさせる「カタルシス効果」をもたらします。副交感神経が優位になり、自律神経のバランスが整うことでリラックス効果が得られるため、泣いたあとに不思議と気分がすっきりしたり、ぐっすりと熟睡できたりするのはそのせいです。実は、心の健康や気分転換という意味では、泣くことは“いいこと尽くめ”なのです。
とはいえ、涙を流すことに抵抗を感じる人も少なくありません。その様子を「子供っぽい」と感じる人もいれば「相手を責めているようで卑怯だ」ととらえる人もいます。泣くと自体が悪いことでなくても、社会的な意味では人前で涙を見せることを避けた方がいいシーンもあります。
まずは、すぐに泣いてしまう理由について考えてみましょう。
感情の浮き沈みや喜怒哀楽の表現が激しく、すぐに泣いてしまう人がいます。高ぶった感情を抑えたり隠したりしようとせず、感じているものをストレートに表現するタイプの人たちです。このタイプの人はニコニコと機嫌よくしていると思ったら、些細なことで怒ったり泣き出したりするなど、感情が目まぐるしく変化します。
その様子はまるでジェットコースターのようで、周囲の人はおろか本人でさえも制御することができないようです。感情に振り回されて、「気持ちを落ち着かせる方法が分からない」と自身の扱いに悩みを抱える人も少なくありません。
一方、他人から聞いた“つらい体験”をまるで自分のことのように感じ、映画を観て涙を流すなど、心揺さぶられる出来事に素直に反応したり、目の前の相手に感情移入したりしやすい「共感性の高い人」もいます。
人が泣きたくなるのは、ただ「今がつらいから」だけではありません。むしろ、大人になってからの涙は過去のつらい経験や叶えられなかった夢、別れてしまった恋人や些細なきっかけで疎遠になってしまった友人など、過去の後悔やほろ苦い記憶がきっかけになることも。
中には「つらい体験」という言葉だけでは説明できないようなトラウマが影響していることもあります。特定のトラウマを想起させるような場面に遭遇したり、似たような場所に身を置いたりすると、それらの状況が引き金となり、本人の意思とは別に「反射的に涙が出てしまう」ことがあるのです。
多忙すぎる職場やギスギスした家庭環境など、慢性的にストレスを抱えるような環境に身を置き、心身の疲労がたまっていると、理由もなく涙が出ることがあります。
普段なら気にならないような他人の些細な言葉に反応してしまう、ということもあるでしょう。感情を押し殺し続けた結果、限界を感じた自分自身が「涙」という形で感情を放出しようとしているのかもしれません。
実は、このようなストレスは自分ではなかなか自覚しにくいもの。「もともと人前で泣くようなタイプではないのに、なぜか突然涙が出るようになった」という人は、知らず知らずのうちに疲労やストレスをため込んでいる可能性があります。一度、周囲の人間関係や日々の生活習慣などを見直し、ゆったりした環境で心身を休めることが大切です。

すぐに泣いてしまう人にはどのような特徴があるのでしょうか。
他人から少々きつい言葉をかけられたり、何かを失敗して不本意な状況に置かれたりするなど、ちょっとしたことで泣いてしまう人がいます。また、人一倍感受性が強く、他人の言葉や表情、音や光にまで敏感に反応するHSPの人も涙もろい傾向があります。共感力が高く、他人の感情に影響を受けやすいためです。
何かと「自分はダメだ」と考えてしまう人がいます。いつも周囲の反応を気にして、何かあると自分のことを責めてしまうタイプの人は、小さな失敗や指摘に対しても大きなショックを受けやすく、泣くことで感情を吐き出している場合があります。このタイプは、周囲から見る自分と、自身が感じている自己イメージに大きなズレが生じていることも少なくありません。
ときには立ち止まって「本当に自分が罪悪感を抱く必要があるのか」を考えたり、「今の自分に何ができるか」など、未来のことについて考えたりしてみるのはいかがでしょうか。
自分の考えを一生懸命に伝えようとしただけなのに、「気づいたら涙が出ていた」という経験はないでしょうか。コミュニケーションに苦手意識を感じている人ほど、自分の気持ちをうまく言語化できず、伝えたいことが伝わらないもどかしさによって、感情が行き場を失い、涙としてあふれてしまうことがあります。その涙がきっかけで、普段は押し殺している自分の感情に気づくこともあるかもしれません。
感情を素直に表現することも大切ですが、大人になると涙を見せられない場面もあるもの。そんなときに使えるのが、感情のコントロールを取り戻すための考え方です。
思い通りにいかないことがあったとき、「絶対に泣いてはいけない」と自分の感情を押し殺すのではなく、「自分は泣きたいくらい悲しいんだな」と、今そこにある自分の感情に目を向けてみましょう。大切なのは否定や評価ではなく“受容”です。
周囲に迷惑がかからない状況であれば、声に出して「もうあの人に会えないことが悲しい」「同期が先に昇進して悔しい」と口に出してもいいのです。何かを「してはいけない」と言われると、かえって頭から離れなくなってしまうことがあるように、「泣いたって大丈夫」と考えると、少しだけ心に余裕が生まれるものです。
涙が出そうになったときや実際に泣いた後、そのときの気持ちや状況をノートに書き出してみてください。感情や状況を言葉にすると客観的に自分を見られるようになり、自然と気持ちの整理ができるようになります。日記のように継続すれば、涙が出やすいシチュエーションやそのときの会話の相手、落ち着いている時期と不安定な時期などの傾向や、自分のバイオリズムも見えてきます。
『7つの感情』や『私、合ってますよね?』などの著書を持つ臨床心理士の玉井仁さんは、「悲しみは避けがたいこと」としながら、「それでもその気持ちを受け止められる距離感の調整が大切」といいます。
出典:7つの感情
映画やドラマのストーリーなどで、よく恋人に振られた主人公が仕事に没頭するシーンがありますが、あれは心のバランスを取るのに適した方法だったのかもしれません。

「何かをしている最中に理由もなく涙が出てくる」「泣くのをやめたいのにやめられない」など、どうしても感情がコントロールできず生活に支障が生じている場合、何らかの病気が隠れている可能性があります。
ストレスや睡眠不足によって自律神経が乱れると感情が不安定になりますし、女性であれば更年期や月経前症候群(PMS)など女性ホルモンの変動が関係していることもあります。
泣いてしまうだけでなく、気分の落ち込みや疲労感が長く続いている場合は、うつ病の初期症状を疑った方がいいケースも。自分で判断しようとせず、早めにメンタルクリニックや婦人科に相談してください。
歌手の中森明菜さんの代表曲のひとつに「飾りじゃないのよ涙は」という曲があります。曲の冒頭に「私は泣いたことがない」という歌詞がありますが、実際に「泣いたことはない」という人はいないはずです。
泣くのは生理的な反応であり、決して “弱さ”の表れではありません。涙を否定するのではなく、その背景にある気持ちに目を向けることができると、自分自身への理解もさらに一歩深まるのではないでしょうか。

\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ
ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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