2025年04月18日
怒りや不安、嫉妬など、強い感情が抑えきれずに爆発してしまう。そんな経験はありませんか?感情のコントロールがうまくできない背景には、性格の問題だけでなく幼少期の経験や過去のトラウマなどが関係しているケースもあります。今回は感情のコントロールを失ってしまう原因とその対策について解説します。
怒りや悲しみ、喜びなどのシンプルな感情から不安や嫉妬、嫌悪感などのネガティブなものまで感情にもさまざまな種類と強さがあります。そして、社会の一員として生きる上でそのすべての感情をそのまま表に出すわけにはいきません。
学校の授業で教えてもらわなくても、「外向けの顔」と「内向けの顔」を使い分けることが自然とできてしまうように、人は無意識に自分の感情とうまく付き合いながら生きています。ただ、その感情が強すぎるものだったり、過去のトラウマが影響したりしているような場合、人によってはあふれ出る感情を抑えられずにコントロールを失ってしまうことがあります。
また、外では人格者として知られる人が、家に帰ると性格が豹変してしまうというのも、よく聞く話です。家族のような小さな人間関係の中では親と子、夫と妻など、立場が固定された支配関係や従属関係が生まれやすく、親密な分だけ問題が起こった際にこじれやすいからです。
ちょっとしたことで泣いたり怒ったり、さっきまで笑っていたのに急に落ち込んだり。感情の起伏が激しい人は気分が変わりやすく、周囲からは気持ちの波が読み取りにくく不安定に見えます。感情のコントロールができる人とできない人は、どのようなところが異なるのでしょうか?
気持ちが落ち着いているように見える人も、まったく気持ちが揺れないなんてことはありません。どんな人でも見えないところで気持ちの浮き沈みは必ずあります。
ただ、感情のコントロールはうまい人は強い感情に耐えながら「今、自分は怒っているんだな」とか「どうしてこんなに悲しいのだろう?」と自問自答し、気持ちの変化を観察して、その原因を見極めようとします。それらの習慣の積み重ねにより、自分自身の「感情の扱い方」を覚えていくのです。
きっかけになった対象から離れたり、あえて近づいてみたり。スポーツや映画鑑賞でストレス解消をするなど、自分の気持ちを落ち着かせる方法も知っている人もいるでしょう。大切なのは感情の存在を無視するのではなく、きちんと受け止めた上で受け流し、立ち直ることができること。つまり、「自分の感情の面倒を自分で見られる」ということです。
一方、感情のコントロールができない人は、そもそも自分を客観的に見ることが苦手です。ささいなことに過敏に反応して、次の瞬間には大きな声で怒鳴ったり泣き出したり。考える前に行動してしまうことが多いため、後から「あんなこと言わなければよかった」と後悔することもしばしば。
それが職場であった場合は、パワハラと受け取られてしまってもおかしくありません。アメリカのある研究では怒りをコントロールできないことは「昇進の機会」を失う最も大きな要因となっているといいます。感情に支配されやすいタイプの人は衝動的で不用意な発言や行動が多く、企業にとってもそれを大きなリスクと捉えているのでしょう。
また、恋人や配偶者、子供などの特定の人にだけ強く感情をぶつける人もいます。これは持て余した感情を自分自身で持ち切れず、相手に「代わりに(この感情を)背負ってちょうだい」と押し付けているのと同じこと。そんな関係ではいつか相手の人も感情を受け止めきれなくなって離れてしまいます。
続いて感情がコントロールできなくなる要因についても考えてみます。ストレスや過去の出来事など、自分ではどうしようもない要素もありますが、思い込みや決めつけが原因となるケースもあるようです。
疲れていると感情のコントロールが難しくなるのは、珍しいことではありません。普段は穏やかで理性的な人でも、長期間にわたってストレス環境に置かれると神経質になり、ちょっとしたことで気分を害したり怒りっぽくなったりします。
ビジネスで有利な交渉をしたいのなら「ランチ後のアポイント」が定説になっている理由を知っていますか?人は空腹になると目の前のことに集中できなくなり、ソワソワと落ち着かなくなります。中には攻撃的になる人もいますから、お腹が満たされて気持ちに余裕がある状態でこそ、スムーズに話し合いを進めることができるというわけです。
人前で失敗をして恥ずかしい経験をしたり、嫌な記憶が残る場所を訪れて気持ちが落ち着かなかったりした経験はありませんか?もともとは冷静なタイプの人が、特定の場所や言葉に強い拒否感を示したり、ひどいときはパニック状態になったりするなど、どうしても感情を抑えられなくなってしまう場合は過去の経験やトラウマが影響している可能性があります。
トラウマとは強い恐怖を体験したことで生じる心の傷のこと。その体験を思い起こさせるような場所やものに触れると、そのときの恐怖がフラッシュバックして感情に支配されてしまうのです。
物事を必要以上にネガティブにとらえ他人のちょっとした発言で怒り出すような過敏な人もいます。実際に起こっていること(悪意のない発言)とそれを受けた際の反応(強い怒り)のバランスが取れていない状態は、認知のゆがみや考え方の偏りが原因であることも少なくありません。
ネガティブな情報にばかりフォーカスしてしまう人、完璧主義がゆえに「0か100か」の白黒思考に陥ってしまう人もいます。思い込みや決めつけなどの“心のフィルター”が強く、既存の価値観に当てはまらないようなことに出会うと混乱して、自分を見失ってしまうのかもしれません。
仕事の量に対して人が足りておらずキャパオーバーな状態が続いたり、お互いに競争をさせるような雰囲気の職場だったり。ピリピリとした人間関係では誰もが「相手に隙を見せまい」と緊張感をまとい、お互いに心が許せず気持ちも落ち着きません。
人にはオンとオフの時間が必要ですから、時にはリラックスしてきちんと休息をとる時間が大切です。しっかりと心と身体が休めていれば、適度なストレスやプレッシャーは助けになりますが、ずっと気持ちを張っているような不安定な状態では悪影響しかないでしょう。
ストレスや疲労と同様、体調の良し悪しも感情のコントロール能力に直結しています。例えば睡眠不足が続くと“感情のブレーキ役”である脳の前頭前野の働きが低下し、ちょっとしたことでイライラするように。また、栄養バランスが取れていないと、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが崩れて、落ち込みやすくなることが知られています。
実は空腹時に気持ちが落ち着かなくなるのも、血糖値が急激に下がることで情緒のバランスが崩れるためです。更年期障害によるホルモン変動も気分に影響を及ぼします。
臨床心理士の玉井仁さんは著書『私、合ってますよね?』で人が無意識にとらわれた行動パターンや心の癖に焦点を当て、「しちゃう、できない、やめられない」として解説しています。
玉井さんによると、自分の感情をコントロールできない状態から抜け出すためには、「感情が高ぶっても、その後しばらくすれば落ち着く」という体験を重ね、「自分の感情の面倒を見られるようになる」ことが大切だといいます。
出典:『私、合ってますよね?しちゃう、できない、やめられないの正体』
前掲書
アンガーマネジメントでは強い怒りを覚えた際に、そこから6秒を我慢することで、怒りに支配されることを避けられるといいます。この方法は「6秒ルール」として知られ、興奮や攻撃性を高めるアドレナリンが分泌されるピークのタイミングをやり過ごすことができる、というもの。怒りだけでなくすべての感情に使えるテクニックのひとつです。
感情をコントロールするのに役立つのは「6秒ルール」だけではありません。
感情が高ぶったときほど「自分は今どんな状態なのか?」「何を感じているのか?」と考えるクセをつけましょう。自分自身を第三者的に見つめることで、カッとなって人を怒鳴りつけるなどの突発的な行動も防げます。その際は感情のスケーリング(数値化)のも効果的です。怒りを感じた際にその強さのレベルを数字で表現する方法で「10段階だと7くらいかな?」と考えることで冷静さを取り戻し、目の前の感情を相対化することができます。
リラックスやリラクゼーションなど、自分の気持ちが落ち着く方法をいくつか知っておくと、自分の感情の面倒を見られるようになるようになります。深呼吸をしたり、音楽を聴いたりするのもいいですし、人によっては飴をなめたり、ふわふわしたタオルを触ったり。そんな小さなことも高ぶった感情をしずめるのに役立ちます。
頭の上をモヤモヤと漂う感情を手元にたぐりよせて、よくよく観察してみると、だんだんとその“正体”のようなものが見えてきます。それはどんな形をしていますか? その感情はあなたに何を伝えようとしているのでしょうか?その感情を表すのにちょうどいい言葉はありますか?
そうやって気持ちを言葉にしてみると、感情と少し距離を取ることができます。自分の内面を客観的に見つめると精神が安定し、感情との上手な付き合い方を考える手がかりになります。誰かに見せるわけではありませんが「日記を書く」「感情メモをつける」などのアウトプットも効果的です。
過去に経験したシチュエーションと似た状況で感情のコントロールができなくなる人もいますし、特定の言葉がトリガーになるという人もいるでしょう。何かのきっかけで負の感情のスイッチが入ってしまうことを変えるのは難しくても、自分が「どんなときに感情が抑えられなくなるのか」を知っておけば、事前に対策を練ることができます。
家族や信頼できる相手に「○○を見ると気持ちが落ち着かなくなるので、できるだけ避けたい」などと伝えて、協力してもらうのもいいですね。
感情のコントロールが難しく生活や人間関係に支障をきたしている場合は、ひとりで悩まずに心療内科や心理カウンセラーなどの専門家に相談してみましょう。第三者の視点から客観的なアドバイスを受けると具体的な対処法が見えてくることもあります。
感情の問題は精神的な疾患やメンタルの不調につながっていることも少なくありません。うつ病や双極性障害(躁うつ病)、境界性パーソナリティー障害などは感情が不安定になりやすく、衝動的な行動がみられることがあります。
また、女性の中には更年期やPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)など、年齢や月経前のホルモンバランスの変化によって、一時的に情緒不安定になったり、感情が抑えられなくなったりする症状が出る人も珍しくありません。生活習慣の改善や服薬で症状が改善する場合もありますので、気になる場合は婦人科や心療内科などの医療機関に相談してみてください。
コントロールを失った感情はその持ち主や周囲の人を傷つけますが、感情の揺れやネガティブな感情は消して悪いものではありません。ネガティブな感情には危険や不快なものを避けて自分を守ろうとする役割がありますし、感情の揺れがなかったら、アートも文学も恋愛もずいぶんと味気ないものになってしまうはず。
最後に覚えておきたいのは、感情は抑え込むものではなく「波のようにやってくるけれど、しばらくすれば必ず引いていくもの」と理解することです。そして自分の感情の高ぶりのパターンや傾向、気持ちの落ち着けかたを知っていれば「自分の感情の面倒を自分で見られる」ようになります。今回ご紹介した方法を参考にしながら、ぜひ自分に合ったやり方を見つけてみてください。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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