2024年12月06日
仕事をしていて直面する不安や悩み、ストレス。
周りは楽しそうに働いているのに、「こんなに悩んでいるのはもしかして私だけ?」と不安になることがあるかもしれません。
しかし、実は仕事に関する悩みを抱えている人は少なくありません。厚生労働省の調査*によると、82.2%の人が何らかの仕事の悩みを抱えているといわれます。
働く人がよく抱える悩みを詳しく掘り下げ、解決のための糸口を一緒に探しましょう。
*厚生労働省、令和4年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r04-46-50b.html/ 令和6年12月3日
82.8%もの人が仕事に関する強いストレスや悩みを感じているといいますが、その悩みのベスト3は、仕事の量、次いで仕事の失敗・責任、仕事の質となっています。
ここからは、より具体的に、よくある仕事の悩みについて掘り下げてみていきましょう。
業務が多すぎたり、仕事の量に対して納期が厳しかったりすることは、大きなストレスです。特に、タスクが山積みにもかかわらず、次々と新しい仕事が割り振られてしまうと、自分のペースを保つことが難しくなりキャパオーバーに。時間不足な上に、集中力が削られるので、細部までチェックが行きわたらずミスも起きがちです。
また、仕事に時間をとられ、家族とのプライベートの時間が取れない、休みが取れても疲労を回復するのに精いっぱいという状態では、心身の疲労がたまる一方です。
「求められる成果が高すぎる」「仕事が自分のスキルに合っていないのでは?」と感じたことはありませんか?これも多くの人が抱える悩みの1つです。
例えば、新卒社員が初めてのプレゼンテーションを任されたとします。上司から「失敗したら会社全体の印象が悪くなるから、絶対に成功させて」と言われ、過度なプレッシャーを感じてしまう……そんな経ことがあったとしましょう。
そのような状況が続くと、「自分には無理だ」と感じ、仕事に対する自信を失ってしまうことも……。確かに、変化の速い時代において仕事の質を常に上げ、期待に応えようとする姿勢は重要です。しかし、心理的・身体的な負荷が過剰になると、自己評価がどんどん低くなり、心のバランスを崩してしまうリスクが高まります。
心理学者のアドラーが「すべての悩みは対人関係の悩みである」というほど、人間関係は悩みの元になりやすいものです。上司や同僚との意見の食い違いから、パワハラやセクハラといった深刻な問題まで、人間関係は精神的なストレスを引き起こします。
業績不振や経営方針の変更など、会社の将来に対する不安もよくある悩みの1つです。「このままここで働き続けても大丈夫なのだろうか」「会社がそのうち立ちいかなくなるのでは」といった漠然とした不安は、特に経済の変化が激しい時代では多くの人が抱く不安かもしれません。
さらに、将来の見通しが立たない状態が続くと、目の前の仕事に集中するのが難しくなり、モチベーションが低下してしまいます。極端な例では、「昇給やボーナスも期待できない」と感じることで、仕事に対する意欲を失ってしまうケースもあるでしょう。このような状況で、自分のキャリアを見直す人も多いのが現実です。
顧客からのクレーム対応は、精神的に非常に大きな負担となります。特に、解決が難しい問題への対応を求められる場合は、そのことが強いストレスに。
近年は、顧客が従業員に常識の範囲を超えた要求をしたり、性的な言動や威圧的な態度を取ったりするカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」がセクハラやパワハラと同様に、労働環境を悪化させる大きな原因として問題視されています。
昇進や配置転換といった変化は、ポジティブな面もありますが、ストレスの原因になることもあります。
それまで現場で業務を行うプレイヤーだった立場から、部下の管理や各会議への出席が求められ、責任や期待、決定権が増えることで新しいストレスが生まれるのです。
仕事の悩みを放置してしまうと、心身や生活にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。どのような悪影響を及ぼすのか、具体的にみていきましょう。
仕事の悩みは、頭痛、胃痛、肩こり、不眠といった具体的な身体的症状から、風邪をひきやすい、疲れが取れにくいといった免疫力の低下まで、大なり小なり健康へ悪影響を及ぼします。
風邪をひいたくらいでは休みをとらずに無理して出社する人、残業が続いても不満を言わずとにかく必死で頑張り続け体調不良になる人。自分の健康を犠牲にしてでも仕事を頑張ろうとする人がいますが、盤石な健康があってこそ、仕事で最高のパフォーマンスが発揮できることをお忘れなく。
精神的な負担が増えることで、モチベーションの低下や強い自己否定を引き起こす場合があります。「どうせ何をやっても無駄だ」と感じたり、些細なことでイライラする・落ち込むなど感情のコントロールが難しくなったりすることもあります。放っておくと、うつ病や適応障害といったメンタルヘルスの問題に発展することもあるので注意が必要です。
悩みに気をとられ集中力が下がることで、ミスが増えたり、作業効率が悪化したりします。これにより、「仕事が終わらない」という新たな悩みが生まれ、悪循環に陥ることになりかねません。
例えば、上司との関係が良好でない場合、コミュニケーションを避けたいという思いから必要な情報や指示を的確に受け取れなくなることがあります。また、上司に対して逐一報告や相談をしづらくなるため、問題が解決できず、結果的に仕事でのミスが増える可能性もあります。
仕事の悩みを抱えた場合、一人で抱え込まず、悩みの内容や自分の状況に合わせて適切な相談相手を見つけることが重要です。
信頼できる上司に相談することで、業務内容や職場環境に関するアドバイスをもらえたり、具体的な改善に動いたりしてもらえるでしょう。
例えば、期日に間に合わないほどのタスクを抱えている場合は、早い段階で上司に相談することで、日程の調整や他の人にサポートに入ってもらうなどの対策をしてもらえることもあります。
また、上司は職場のルールや部下を守る立場にあるため、人間関係や健康などデリケートな悩みを相談する際にも、プライバシーが保たれやすいという点では安心です。人間関係の相談をしたらいつの間にか噂が広まっていた……という心配もありません。
より気軽に話したいのであれば、信頼できる同僚や先輩に相談してみましょう。共感を得られやすく、自分と似た経験をしている人から実践的なアドバイスをもらえることがあります。
職場のことを職場の人に話す気になれないときは、リラックスして話せる家族や友人を頼りましょう。職場の事情に縛られない客観的な意見や、新しい視点を得られることがあります。
常時50人以上の従業員がいる職場には、産業医の設置が義務づけられています。また、法律による設置義務はないものの、職場によっては産業カウンセラーが置かれ、ストレスや悩みを抱える従業員に対して、心理学的手法を用いて助言・援助を行っている場合もあります。
プライバシーを守りたい、専門的な視点や解決策がほしいという場合は、こうした専門家の手を借りてみましょう。問題を客観的かつプロフェッショナルな視点から解決へと導く糸口が見つかるはずです。
職場では話しづらい内容や、中立的な立場から意見がほしい場合は、会社外の専門相談機関を利用するのも有効です。労働問題に詳しい機関や、心のケアを専門とする相談窓口が、職場環境や精神的な悩みをサポートしてくれます。
誰に相談したらよいか分からないという方は、以下の厚生労働省の相談窓口を利用してみてください。
https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/ (働く人のメンタルヘルス·ポータルサイト「こころの耳」)
悩みの渦中にいるときは不安やイライラで心の中がいっぱいになり、視野が狭くなりがちです。とはいえ、悩みを相談する際は、相手に困っていることを理解してもらい、建設的なアドバイスを得るために、いくつか注意するとよい点があります。
A「私の提案はいつも評価されませんよね!!」
B「今日の会議で私の提案が不採用だったのですが、改善点を教えていただけますか?」
例えば、頑張って練り上げた提案が通らなかったとき、AとBどちらの相談のしかただと、相談された相手は相談内容を理解し、アドバイスしやすいでしょうか。
仕事の悩みを相談する際は、感情的になりすぎないよう、事実と感情を分けるように心がけましょう。不安や怒りをそのままぶつけてしまうと、相手に意図が正確に伝わらず、相手が引いてしまうことがあります。冷静に状況を整理し、客観的に問題点を説明することが大切です。
相談は単なる不満を伝える場ではなく、解決策を一緒に探すための機会と捉えましょう。「他のメンバーに一部のタスクを引き継ぐことは可能ですか?」「こういう方法を考えていますが、どう思いますか?」というように、具体的な改善案を相手に求めたり、自分の考えを共有したりすることで、より建設的で実効性のあるアドバイスを得られます。
相談するタイミングも重要です。相手が忙しい時間や何かに集中しているときに話しかけると、十分な対応を得られない可能性があります。事前に都合のよい時間を確認し、相手が落ち着いて話を聞ける状況を選ぶことが大切です。
相談内容によっては、他の人に知られたくないことやデリケートな問題も含まれる場合があるでしょう。「人に聞かれない場所でお話ししたいのですが」と前もって伝えておき、プライバシーを守る環境で相談することが重要です。
周りの人への相談が難しい場合や、相談以外で解決したい場合には、セルフケアや視点を変える方法が役立ちます。ここではおすすめの対処法を5つ紹介します。
仕事に追われていると、心身の疲れも相まって些細な悩みが大きな問題に感じられることがあります。一度立ち止まり、リフレッシュすることで冷静な視点を取り戻しましょう。まとまった休みをとるのが難しい場合は、昼休みにデスクから離れて散歩をする、帰りにカフェに立ち寄ってコーヒーを飲むなど、ほんの数分でも普段と異なる環境に身を置くことから試してみるといいですね。
ストレスが溜まると感情的になりやすくなり、物事を冷静に判断できなくなることがあります。瞑想やマインドフルネス、悩みや感情をノートに書き出して気持ちを整理するジャーナリングなど、日常生活にストレス管理の習慣を取り入れることで、心を落ち着け、問題をより客観的に捉える力が養われます。
「毎日忙しくてそんな余裕はないよ」という場合におすすめなのが「深呼吸」です。上手な深呼吸には、筋肉の緊張を緩和するリラックス効果、血圧を下げて気持ちを落ち着ける効果などがあるとされています。デスクに座っていても、電車の中でもできる超簡単セルフケアですので覚えておくといいでしょう。
とても乗り越えることができなさそうな大きな悩みや問題に圧倒されている場合、次のようなステップで問題を小さく分解してみましょう。「何から始めればいいのか分からない」を解決する糸口が見つかります。
<問題を分解して解決へ向かう6ステップ>
①今悩んでいることと、それがなぜ問題なのかの理由を箇条書きで書き出します。
②各問題ごとに、解決するための小さく具体的な目標を立てます。
「30分でできる」「週に1回だけ」など短期的ゴールを設定するとなおいいでしょう。
③すべての目標を同時に達成することはできません。優先順位を決めましょう。
④目標を一つひとつ実行し、進捗を記録します。達成できたら自分を褒めてくださいね。
⑤できた点・できなかった点などを定期的に振り返り、必要なら目標を再設定します。
スキル不足やキャリアの停滞が悩みの原因の場合、新しいスキルを学ぶことで解決の糸口をつかむことができます。
一方で、私たちは普通、スキルや才能があって努力すれば、よい結果は自然とついてくると思っていますが、これは必ずしも正しくありません。
京セラの創業者である稲森和夫氏は次のような人生の方程式を紹介しています。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
(出典『新装改訂版・未来をひらく人間力 「心を磨く」新入社員心得帖』モラロジー道徳教育財団)
「心の持ち方」とは車でいえばエンジン部分。どんなに高性能モデルの車もエンジンがなければそのよさを発揮することはできません。高めたスキルや磨いた才能をよりよく活かす「心」を磨くことにも同時に取り組みましょう。
さまざまなことを試してみても長期的に悩みが解消されない場合、部署異動を希望したり、思い切って転職を考えたりするなど、環境を変えることが根本的な解決策になることもあります。
仕事の悩みは誰にでも起こり得るものですが、気づいたまま放置すると健康やメンタル、仕事の効率に悪影響を及ぼします。早めに適切な相談やセルフケアを行うことで、解消の糸口を見つけ、もっと働きやすい毎日を手に入れましょう。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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