怒らない人は何を考えている? 怒りは「無視する」より「付き合う」が吉

ECブログ

職場や家庭において、怒りをコントロールするための「アンガーマネジメント」のスキルに注目が集まっています。それだけ、怒りの感情を自分自身でコントロールしたいと考える人が増えているようです。


そんな中、どのようなことがあっても感情を乱さず“怒らない人”がいます。彼らは一体どのような心理状態なのでしょうか。そもそも、怒りとは心から追い出さなければならないほど悪いものなのでしょうか?

目次△▼△

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怒りってなんだろう?

誰もが持つマイナスな感情に注目し、その対処法について解説した『7つの感情 知るだけでラクになる』の著者で臨床心理士の玉井仁さんは、本の中で「ネガティブな感情はあなたの味方である」というメッセージを伝えています。

「怒りという感情自体は、何かに取り組むときに奮い立たせてくれたり、嫌なことに対して対処しようとする力を与えてくれるというプラスの側面ももっています。怒りが適切な力として機能するとき、車を動かすエンジンのような推進力になってくれます」

出典:玉井仁『7つの感情 知るだけでラクになる』

このように、怒りは「自分を大切に守るアラーム」としての機能を持ち、決して悪いものではないということを心に留めておくと、怒りが湧いた際にその存在を無視したり、排除したりするのではなく「うまく付き合おう」という気持ちで自分自身を見つめられるようになります。

怒らない人とは?

他人に理不尽な対応をされ、それで不利益をこうむっても決して怒らない人がいます。ちょっとしたことでは感情が揺れず、冷静で穏やかな性格を持つ人々です。


日常的に怒りをあらわすことを良しとしない環境で育ち、「怒らないのが普通」と考えて、怒りをあらわすことに抵抗を感じるなど、いわゆる育ちの問題が影響している人もいます。

怒りの感情は存在するけれど、ストイックに自分をコントロールしている、という人もいるかもしれません。いずれにせよ人間の内面の問題ですから、外からその理由をうかがい知るのはなかなか難しいものです。

怒らない人の特徴

それでは、まずは怒らない人の特徴からみてみましょう。

自己コントロールがうまい

怒らない人は自分の感情をコントロールすることに長けています。怒りを感じた際に自分を落ち着かせる方法を知っていれば、強い感情に飲み込まれることなく自らの力で収められます。

仕事や人間関係でイライラすることがあっても、一晩寝たらすっきりした気分になれるタイプです。


こうした人はメンタルが安定していてストレス耐性が高く、想定外の事態に遭遇しても自分を見失ってパニックになることはありません。まずは怒るよりも先に目の前の事実を受け入れ、最適な対応を冷静に考えるなど、自分なりの優先順位を持っています。


どのような状況にあっても「自分で解決できる」という自信のもとで心に余裕があるので、ちょっとしたことでは怒らないのです。

自分と他人の境界線が明確

自分と他人との境界線をきっちり引くことも怒らない人の特徴のひとつです。基本的に「自分は自分、人は人」「他人を変えることはできない」という達観した考え方を持っています。


自分と他人の境界線を曖昧にしていると、常にいろいろなことが気になってしまい、自分にあまり関係のないような問題までを“自分ごと”ととらえがちです。一方、怒らない人は親しい間柄でも他人との距離感をしっかりと確保します。


必要以上に他人に期待することなく、物事を「ここまでは自分のコントロールできる範囲」と決めて、その範囲の外で起こったことについては多少、自分の意にそぐわなくても「気にしないようにする」などドライに考える人が多いようです。

リスクを取らない慎重な性格

怒った場合のリスクを考えて、できるだけ怒りを表面に出さない人もいます。ビジネスの場では怒りの感情をダイレクトに表現することは歓迎されません。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような秀でた才能を持つカリスマでもない限り……。


ただ、慎重なタイプの人は怒りをため込む傾向にあり、何かのきっかけでため込んだ怒りが爆発する恐れがあります。周りの人からすると「些細なことで突然キレた人」のように見えてしまいます。

怒らない人の心理

続いて、怒らない人の心理状態についても考えてみましょう。

物事の背景や人の都合を考える

感情的になる前に、まず他人の行動の背景にある意図に目を向けると寛大な気持ちになれるものです。


たとえ自分が被害を被った側であったとしても、まずは相手の立場や気持ちを想像して「なぜ相手はそのようにしたのか」「何がそれをさせてしまったのか」について考えます。

すでに起こってしまったことに対して近視眼的にとらえるのではなく、より広い視野で理解しようとするのです。


人はそれぞれ他人からはうかがい知れない事情を持っているもの。一見、理不尽にも見える他者の行動や発言の裏を想像すると、自然と相手を許す気持ちが生まれてきます。

面倒を避けたい

怒らない人は人間関係に波風を立てるのを、できるだけ避けようとします。トラブルや対立に巻き込まれたくないという消極的な理由で「怒らない」という選択をしているケースもあります。

ストレスの源となっている相手に対して、これ以上の労力をかけたくない、極力かかわりたくないという思いもあるでしょう。


一見すると争いごとを好まず、やさしい平和主義者のようにも見えますが、同時に個人主義的な側面も持ち合わせています。

自分と他人との境界線をしっかりと引いているからこそ、怒らずにいられるのかもしれません。自分と他人の境界線の話とも重なりますが、誤解を恐れずに言えば「他人にあまり興味がない人」でもあります。

怒ると疲れるから

怒りは強い心のはたらきですから精神的にも肉体的にもエネルギーを消耗します。言い換えれば、気力や体力がないと本気で怒ることはできません。そのため、人によっては怒りという感情そのものに苦手意識を抱き、避けたいと考える人も少なくありません。


自分の心の平穏を守るため、本来なら怒ってもいい状況にあっても感情を抑えて「怒りを感じていないフリ」をすることも……。

お互いに意見をぶつけ合うようなシチュエーションもあまり得意でないので、最後まで心の内を明かすことなく気づくとその場からフェードアウトしてしまった人。もしかしたら、あなたの周りにもいませんか?

怒らないことはデメリットもある?

自分の感情をコントロールすることは大切ですが、怒りは悪いものではありません。ですから、自分の中の怒りを抑えつけて「この感情は不適切だから無視する」という態度は得策ではありません。

前述の玉井さんは、怒りとは「人と分かり合いたい、自分のことを分かってほしい」といった欲求の現れであり、うまく伝えることができれば人間関係が深まり、「自分が大切にしたいものを教えてくれる感情でもある」といいます。

ここからは、怒らないことのデメリットについても考えてみます。

ストレスがたまる

普段から感情を抑えることを習慣にすると、知らず知らずのうちにストレスを溜めてしまうことがあります。

適度に怒りを発散することでストレスを軽減できる場合もあるので、怒らないことが必ずしも良いわけではありません。


怒って当然な場面で、感情を押し殺してまで怒らない態度を長く続けていると、だんだんと自分の本当の気持ちが遠いものに感じられて、分からなくなってきます。本人は意識していなくても、コップの水があふれるようにいつか限界が訪れます。

周囲に間違った印象を与える

どんなことがあっても怒らないでいると、言葉や感情のやり取りを拒絶しているように見えて、周囲に「この人は他人とコミュニケーションをとりたくないのかも?」というマイナスな印象を与える可能性があります。


自分に自信がなく自己主張できない人のようにも見えるので「この人は何をしても怒らないんだな」と勘違いされる可能性も……。

勝手な決めつけで相手のことを都合よく扱ったり、横暴な態度をとったりする人もいますから注意が必要です。自分の立場を守るためにも、ある程度の自己主張は大切かもしれません。

怒らないためのアイデア

ここからは怒らないための3つのアイデアを紹介します。

1.怒りの原因を見極める

怒りの感情を抑えるためには、まずその感情を引き起こしたものの“正体”をきちんと認識する必要があります。

自分が一体「何に対して」「なぜ怒っているのか」がクリアになれば、それに応じた対策を講じたり、違う視点で物事を捉えたりすることができます。


例えば、ミスをした後輩について怒りが収まらないとき、あなたは本当に「後輩のミス」という結果そのものに怒っているのでしょうか――?


以前にも同じようなミスをして「ここは慎重にやろう」とお互いに確認したにも関わらず、また繰り返してしまったのであれば、怒りの原因は「ミスをしたこと」ではなく、「確認不足」や「同じ失敗を繰り返したこと」になります。


このように自身の怒りの出どころが分かれば、ある程度は冷静に対応できるようになります。自分を客観的に見ることを忘れず、怒りの矛先を間違えないことが大切です。

2.すぐに反応しない

怒りを感じた際に即座に反応するのではなく、一呼吸おいてから動き出すことを意識しましょう。すぐに言い返したり行動したりすることで、かえって怒りが増幅して物事が良くない方向に転んでしまうかもしれません。


怒りの感情と付き合うための心理トレーニング・アンガーマネジメントで使われる「6秒ルール」を知っていますか?

怒りのピークは長くても6秒といわれているため、6秒間待つことで怒りを鎮めることができるという方法です。

怒りを感じたら、口には出さなくても、心の中でゆっくりと1から6まで数字を数えてみてください。一時的に高まった怒りが自然と引いた感覚があるはずです。


6秒をやり過ごすことができたならば、もう一晩、怒りの対象から離れてみましょう。距離と時間を置くことで「なんであんなに怒っていたんだろう」と不思議に思えるくらい、気持ちが落ち着いた自分に気づくでしょう。

3.心と体をリラックスさせる

怒りでカッとなった状態を「頭に血がのぼる」、興奮した気持ちを抑えて冷静になることを「頭を冷やす」と表現します。実際に怒りを感じると心拍数が高まり、体温が上昇するため、その身体の状態を言い表した言葉といわれます。


それでは頭を冷やしたいときはどうすればいいのでしょうか? まずは鼻から息を吸い、ゆっくりと口から吐く深呼吸を試してみてください。気持ちを落ち着かせるだけでなく、血液の流れをよくしたり、脳をクールダウンさせたりする効果があります。冷たい水を飲むのも効果的です。


怒りの対象から視線をはずして、好きなものやリラックスすることを考えるのもいいかもしれません。

例えば自宅であなたを待っている猫を抱きしめたときに頬に触れる柔らかい毛並みのこと。好きな紅茶屋さんで買ったアールグレイのいい香り、最近ハマっているバンドのイントロなど――。

心地いいと感じることであればなんでも構いません。頭に思い浮かべた心地よい感触や音色が、逆立った心をやさしく包み込んでくれるはずです。

まとめ

ネットやSNSが人々の生活の近くにあり、常にありとあらゆる情報があふれている状況で心が乱されて、ただ心穏やかに生きることも難しい。私たちが生きているのはそんな時代です。


自分の感情をコントロールしようとすることは大切ですが、マイナスな感情にも必ず意味があります。怒りの感情の意味とじょうずに付き合う方法を知っておけば、いつか必ずあなた自身を助けてくれはずです。

\ この記事の監修者 /

ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。

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