ファシリテーションで得られる2つの効果――成功のポイントは事前準備とその場の空気をつかむこと

ECブログ

ファシリテーションという言葉を聞いたことはありますか? なんとなくビジネスや会議などで使われるイメージがあるかもしれませんが、実は身近なところでも役立つ「話し合いの技法」です。

家庭や地域活動でも活用できるファシリテーションの効果について、鈴木まり子著『ファシリテーションのすすめ――人をつなぐ心をつなぐ』を参考に、一部を抜粋して紹介します。

目次△▼△

 

メールアドレスを入力してください *

ファシリテーションとは?

「ファシリテーションとは、話し合いなど参加型の場を進行するための心づかいと手法のことです。ファシリテーションは『促進する(促す)』『ことを容易にする(やりやすくする)』という意味の動詞(facilitate)の名詞形です。

会議や話し合いなど参加型の場においては、主役は『参加者』です。この主役である『参加者』が、話し合いや会議において『何かをする』ことを促進したり、やりやすくしたりするための心づかいと手法です」

会議やワークショップなどの活動をスムーズに進行し、参加者全員が効果的に意見を出し合うために役立つのがファシリテーション。そして、中立的な立場で議論を整理する役割を担う人をファシリテーターと呼びます。

基本的にファシリテーターは自らの意見は言わず、あくまで参加者が考え、決断し、学ぶことのサポートに徹します。参加者から自由な意見を引き出し、その場のコミュニケーションを円滑にする手助けも行います。

ファシリテーションにおいては、多様な意見が飛び交うことで「全員でよりよい解決策を見つけ出す」という感覚が大切です。

ファシリテーションの効果とは?

ファシリテーションはビジネスや教育の現場だけでなく、地域のボランティア活動や家庭での意思決定の際に役立ちます。

例えば、夏休みやお正月などの長期休暇に「この休みはどこへ行こうか?」と家族で話し合う際にも、ファシリテーションを意識するとそれぞれの意見や希望が自然と引き出され、全員が納得できる行き先をともに考えることができます。話し合いをする中で家族の絆も深められるでしょう。

このような有意義な話し合いの実践がファシリテーションです。まずはファシリテーションで得られる2つの効果を紹介します。

1.「私たち」で決める

「ファシリテーションの効果といえば、『参加者の当事者意識が高まること』が一番にあげられます。私たちは、自分がかかわっていると感じられないとき、その話し合いは他人事になります。皆さんの中で『みんなで決めたはずなのに、決まったことを行動に移そうとしない』という体験はありませんか?

もしあれば、本当はみんなで決めていなかったのかもしれません。『自分たちで決めたことだから、すぐにでもやりたくなる』と思える話し合いであれば、参加者の当事者意識は高まり、積極的に行動を起こすはずです」

2.話し合いを通して変化し合う

「次にあげる効果は『参加者同士が変化すること』です。立場や価値観が違う参加者同士が話し合いを通して刺激し合い、お互いの考えや行動に変化が起こります。

最初は対立しているように見える参加者同士が深い問いを通して対話を続けることで、どちらの意見でもない第3の解決策が見つかるときなどは、まさにお互いを活かし合いながら、よりよく変化し合う場面に出会うすばらしさを感じます」

出典:鈴木まり子著『ファシリテーションのすすめ――人をつなぐ心をつなぐ』(モラロジー研究所刊)

ファシリテーションを成功させる10のポイント

ファシリテーションを成功させるためには、具体的にどのようなことを行えばいいのでしょうか? 事前に準備できること、現地で意識したいことを合わせてお伝えします。

1.事前に準備しておく

当日の進行をスムーズに行うためには準備が欠かせません。議題の選定やプログラム、必要な資料や備品を漏れのないように確認しておきましょう。

チラシやポスターなどで事前に開催を知らせる案内も必要です。開催内容の魅力を伝え、多くの人に興味を持ってもらえるような告知文やチラシをつくりましょう。

2.目的と目標を設定する

はじめに明確な目的と目標を設定することが大切です。これをするかしないかでファシリテーションの成否が決まるといっても過言ではありません。

全員が「何を目指してやるのか」というという目的を共有し、そのゴールに向かって、それぞれが立場を超えて自分の意見を出し合います。

週1回、月1回などの定例会ではメンバーが固定されてマンネリ化し、目的意識も薄れがちです。「わざわざ集まったのに何も決まらなかった」ということがないよう、会の冒頭でその都度目指すべきゴールを確認しましょう。

3.安心できる雰囲気づくり

リラックスした雰囲気の中では自由な発言や新しい発想が生まれやすいもの。具体的な議論に入る前に、それぞれが簡単な自己紹介をしてお互いを知る時間をもうけると、親近感が生まれて緊張や不安がやわらぎます。

会場の机や椅子の配置も大切です。全員が同じ方向を向く「授業型」では「これから学ぶぞ」というムードを演出できますし、輪になって座る「サークル型」ではお互いの顔が見えやすく、グループで話し合う際にはいくつかの場所にテーブルをわけた「島型」も便利です。

その日の目的や参加人数に合わせた会場づくりをしましょう。

4.参加者全員の意見を引き出す

全員が積極的に発言できる環境も重要です。「1人の人がずっと話し続けて、他の人が話せなかった」「声の大きな人のひと言で大切なことが決まってしまった」ということがないよう気を配りましょう。

時には質問を投げかけたり、意見をまとめたりするなどして、参加者全員の意見を引き出すことを意識してください。できるだけたくさんのアイデアを集めるため、少人数のグループを作ったり、2人1組で話し合ったりする時間をもうけるのも効果的です。

発言に関して「他人の発言を遮らない」「だらだらと話さない」など建設的な議論をおこなえるようにルールを作ることも有効でしょう。

5.議論を整理し、論点を明確にする

議論が盛り上がってくると会話が脱線しがちになります。限られた時間の中で効果的な意思決定をするために、「いつの間にか会議のテーマがずれていた」ということがないよう、必要に応じて論点を整理しましょう。建設的な議論が進むと具体的な結論を導きやすくなります。

6.時間管理はしっかりと

会議やワークショップの時間を効率的に使うため、ファシリテーターは事前に当日の流れを考えて進行表をつくっておきます。その際はやるべきことを無理に詰め込まず、できるだけ余裕のある時間配分を心がけてください。

話し合いでは「始める」「ひろげる」「収める」という流れを意識しながら進行しますが、予定外の事態や新しいアイデアが出てきた場合はできるだけ柔軟に対応したいものです。

7.ファシリテーターは中立的な立場で

ファシリテーターは中立的な立場を保つことが求められます。さまざまな年齢や立場の人が参加する場合も、どのような参加者にも公平に接することが大切です。

参加者の意見を板書する際は「人によって書く、書かない」などと対応を変えてはいけません。

8.視覚的な資料を活用する

数字やデータなどの情報は具体的な話し合いに役立ちます。また、図やチャートなどの視覚的な資料を活用して「見える化」すると新しいアイデアが生まれやすくなります。

参加者にとっては目的やゴールを意識しやすく、「どこまで進んだか」も共有できます。

9.最後に合意を確認する

話し合いを終える前に、その場で生まれたアイデアに対して「目的に沿っているか」「どれくらい実現可能な内容か」を確認していきます。

結論が出ても一部の人が納得していない場合は時間が許す限り議論を再開します。できるだけ、皆が「それいいね」と合意できる結論に落とし込むのが理想です。

10.フィードバックをもらう

話し合いの進行について参加者から感想や要望をもらうことがあります。

参加者の本音を聞き、次回への改善点が見つかる貴重な機会ですから、素直な気持ちで受け取りましょう。そのフィードバックを次回以降に活かせると、さらに意義ある話し合いができるようになります。

ファシリテーションで役立つ4つのスキル

「集団の知恵」を最大限に引き出すため、ファシリテーターには高度なコミュニケーションスキルが必要です。身につけておくとビジネスでも大いに役立つスキルですので、ぜひ積極的に取り入れてみてください。

1.アクティブリスニング

アクティブリスニングとは、会話を通して話し手の意図や感情を引き出す聴き方です。

会話の流れの中では、つい途中で自分の意見を述べたくなるものですが、まずは相手のことを無条件に受け入れる姿勢をとり、集中して話を聴きます。

自分の思い込みや偏見を手放し「聴くこと」に徹しましょう。話し手の信頼関係が築かれ、話の内容に対する理解も深まります。

2.質問力

話し合いの進行具合を確認しながら、適切なタイミングで効果的な質問を投げかけると議論を深め、新たな視点や価値観を引き出せます。あまり発言のなかった参加者の声を拾う機会をつくることもできるでしょう。

質問力を持つファシリテーターは会の進行をスムーズにし、参加者全員が積極的に参加できる雰囲気づくりに貢献します。

3.コンフリクトマネジメント

組織内での対立をポジティブにとらえ、建設的な議論を続けるためには第三者による調整が欠かせません。コンフリクト(対立)を適切にマネジメント(管理)することで、前向きで自由な議論が生まれます。

議論が盛り上がると時にメンバー同士やグループの対立が起こることがありますが、冷静に状況を把握して調整できれば状況をプラスに転換できます。

4.問題解決能力

ファシリテーションにおいて、ファシリテーターはあくまで黒子(くろこ)の役割ですが、会議やワークショップ中に発生する問題や課題に対して、迅速かつ効果的に対応する能力が求められます。

流動的な状況の中で最適解を見つけだし、行動にうつす力が必要です。

まとめ

ファシリテーションを成功させるためには、意見を出しやすい雰囲気づくりと、その場をまわすファシリテーターの調整力が欠かせません。

ファシリテーションは特別な人たちだけのものではなく身近な話し合いでも活用できますから、ぜひ家庭や地域社会での話し合いで取り入れてみてください。

\ この記事の監修者 /

ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。

ニューモラルブックストアでは、よりよい仕事生活、よりよい生き方をめざす、すべての人に役立つ本や雑誌、イベントを各種とりそろえています。あなたの人生に寄りそう1冊がきっと見つかります。

メールアドレスを入力してください *

ファシリテーションで得られる2つの効果――成功のポイントは事前準備とその場の空気をつかむことに関するおすすめ書籍はこちら

↓↓他の記事を読んでみる↓↓(画像クリックで各カテゴリー記事に飛びます)
★スマホでご覧の場合はこれより下のカテゴリー欄から各ページにお進みください★

最近の投稿

カテゴリー

アーカイブ

ページトップへ