2024年03月22日
「初対面の人と会うのが怖い」「慣れない相手と話さなくてはいけないシーンで、極度に緊張してしまう」など、初対面でのコミュニケーションに苦手意識を抱く人は少なくありません。
そのような「人見知りの人」の性格的な特徴や人見知りを克服する方法を紹介します。
さらに、人見知りの気質を長所に変えるポジティブな考え方についてもご紹介します。
人見知りとは、もともとは小さな子供が知らない人を見て恥ずかしがったり、不安を感じて親の陰に隠れたりするような幼児の本能的な行動を指す言葉でしたが、最近は大人に対しても使われるようになりました。
成人に対して使う際は、慣れない相手に対して自然体で接することが難しかったり、大勢の人がいるような場所で積極的に会話ができなかったりと、学校や会社などの集団生活でグループに溶け込めないような人を指すことが多いようです。
まずは人見知りの人の特徴を見ていきましょう。
人見知りの人は対人関係に強い苦手意識があり、必要がない限り自分から人に話しかけたり会話を切り出したりすることはありません。そもそも他人に対して「積極的に関わろう」という気持ちではないため、自分から人に話しかけるという発想がなく、周囲からは「話しかけにくいオーラ」を発していると勘違いされることも……。そうした雰囲気が他人を遠ざける原因にもなっています。
たくさんの人がいる場所でも周囲の会話に加わることなく、一人でいたがる傾向があります。
「僕はこうしたい」「私はこう思っている」などの意思表示や自己表現が控えめなせいで消極的な印象を持たれ、周囲からは「何を考えているかわからない人」と思われることも。
集団の中では黙っていることが多いため、人間関係をうまく作れず、グループ内で浮いたり孤立してしまったりすることがあります。
「目は口ほどに物をいう」の言葉通り、人間の目には感情が表れるもの。
それゆえ、コミュニケーションにおいてアイコンタクトは好意や信頼感を伝えるのに役立ちますが、人見知りの人は他人と目を合わせることを避けがちです。結果、相手に自信のない印象を抱かせてしまうことがあります。
初対面の相手と会う機会が多いビジネスの場において、会話の合間の適切なアイコンタクトは「あなたの話を理解している」「もっと聞きたい」のサインでもあり、信頼関係を築く上でも重要です。それがうまくいかないと相手との間に心理的な距離が生じ、人間関係が円滑に築けない場合があります。
外の世界や他人に対してあまり関心がなく、自分の世界にこもりがちです。実際はそうでなくても、周囲からは内向的な人という印象を持たれることが多いでしょう。ひとりで過ごす時間を大切にし、人によっては「ここから先は踏み込まれたくない」と家族やごく少ない友人以外に心を許さないことも……。場合によっては、その内向的な性格が人との付き合いや人間関係を広げることを遠ざけている可能性があります。
人見知りの人は、新しい環境や初対面の人と会話する際に緊張しやすく、「自分はどう見られているのだろう……」と不安を感じ、普段通りに振る舞うことができません。必要以上に人の目を気にする性質は、ある意味では自意識過剰といえるかもしれません。
慣れない環境に身を置く気疲れを避けるため、親しい人が誘っても、人が集まりそうな場には参加しないことが多いようです。
人によっては、自分に対する評価の低さが人見知りにつながっている可能性があります。ちょっとしたことで「私なんか……」と思いがちで、自分に自信を持てない人が多いようです。
自己評価の低い人は、自分の能力や価値を実際よりも過小評価しがちです。それが人間関係を広げることに対して消極的に考えてしまう原因になり、社交的なシチュエーションに対する苦手意識にもつながっています。
新しい人間関係や環境の変化に対して過度に不安を感じる「心配性」の人が多いです。この性格が他者との交流を避けたり、社交的な場面でのストレスを増大させたりしています。人前に立ち、他人の注目を集めることにも苦手意識があります。
また、人見知りをする人は「失敗したくない」という気持ちが強く、特に対人関係での失敗を過度に恐れるため、リスクを避けようとして集団や社交的な活動から自らを遠ざけてしまいます。それは「慣れない状況に身を置かなければ大丈夫」と、無意識に自分を守ろうとする気持ちの表れでもあります。
人見知りの人は、自分の感情を表現することが苦手で感情を抑えがちです。人間関係において「控えめ」や「謙虚さ」はある種の美徳ではあります。しかし、状況によっては相手から「これ以上、立ち入ってほしくないのかな?」と受け取られる場合もあり、人との関係を深める際のハードルになる可能性があります。
どこに行ってもすぐに友達をつくり、どんどんその輪を広げていくオープンマインドな人と比べると、人見知りの人は自ら行動して他人との距離感を縮めるのが苦手で、家族や親しい友人の前でだけリラックスできる、というタイプが多いようです。
昨今は就活での面接や婚活などの場で、社会的スキルの一つとして、人との会話や意思疎通を円滑に運ぶための「コミュニケーション能力」が重宝されるようになりました。
人見知りに悩む人はこういった社交のスキルにあまり自信がありません。ささいな失敗が不安を呼び起こし、自分に自信が持てなくなって、さらに新しい場所に行きたくなくなる……。小さな出来事をきっかけに“負のループ”に陥ってしまうこともあります。
「他人にどう思われているか」を極度に気にし、他人から批評されることを恐れます。「他人は自分のことをそこまで気にして見ていない」と頭では理解しているものの、どうしても気になってしまうのです。
そんな心配から、人がいる場所で自然に振る舞うことができず、いつも人の視線を気にしながら発言や行動をすることになり、それが新しい環境や人間関係への苦手意識をさらに深める原因となっています。
人見知りを自覚するすべての人たちが、子供の頃からずっと人見知りだったわけではありません。むしろ「環境の問題」や「精神的なトラウマ」など、後天的な理由も少なからず影響しているといわれます。
続いては、人見知りになってしまう代表的な原因を紹介します。
幼少期に親や親族だけに囲まれて育つなど、他の子供たちとの交流が限定されたような環境にいた場合、基礎的なコミュニケーションのスキルが自然と発達せず、上手に人と交流できない場合があります。そうした経験から人と接することに対して苦手意識が強まり、人見知りの一因となります。
ある程度の年齢になると子供は自ら親の手を放し、たくましく自分の世界を切り開いていくものですが、人との交流に苦手意識を持つ子供は、その後の人生で起こり得る新しい人々との出会いや新しい環境に飛び込むことに対して、不安に感じたり躊躇してしまったりすることがあります。
性格や気質は遺伝的な要因によるところもあるといわれています。つまり、両親や近い親族に人見知りの特徴がある場合、その子供も同様の傾向を示す可能性があるというわけです。ただ、そのメカニズムは解明されておらず、遺伝性ではなく育った環境に依存した傾向という意見もあります。
自分自身への信頼感が低いと人見知りの傾向が強まります。自己肯定感とは「ありのままの自分を認め、受け入れる感覚」ですが、自己肯定感が低い人は自分の行動や意見が他人から否定されることを極度に恐れ、初対面の人との交流や社交的な場面で消極的になりがちです。「ありのままの自分」を受け入れられず、自分を正しく評価できないことも他者との関わりを避けようとしてしまう理由の一つとなっています。
幼少期や学生時代、他者から強く否定されたような体験がトラウマになり、人見知りを引き起こすことがあります。
特に公の場で恥をかいたり、失敗してからかわれたりした経験は他人との交流を避けたくなる大きな理由になります。これらの経験は、社交場面に対する恐怖や不安を植えつけ、大人になってもなかなか解消されません。
親の過保護や過干渉など家庭環境の問題も、成長過程で基礎的な社交性を得る際の意欲の妨げになります。
人は学校での集団生活や友人との関係など、自らの経験を通じて自然と社会的なスキルを身につけていきますが、それらを学ぶ機会が制限されると人見知りの傾向が強まることがあります。
親が過度に心配し「あれもダメ、これもダメ」と行動を制限してしまうと、子供はそれを「外の世界は危険で不安定なものである」というメッセージと受け取ってしまいます。親が「よかれと思って」したことが、結果的に新しい人間関係や環境への不安を高めてしまうかもしれないのです。
ここまで、人見知りの性格的な特徴や原因について説明してきましたが、なにも人見知りは悪い面ばかりではありません。視点を変えれば「慎重な性格」や「周りを観察する能力」は長所になり得ます。その人自身がその特徴をどのように捉えているかが一番大切なのです。
同じ物事や事象でも、受け取る人の心が違えばとらえ方もまったく異なります。ある日から玄関に飾られた花を見て、あなたはどう感じるでしょうか?美しいと感じる人、ただそこに花があるだけだと考える人、もしかして出入りするのに邪魔だと思う人もいるかもしれません。
これは善し悪しの問題ではありません。花はあるがままに咲いているだけなのに、それに対して人がさまざまな見方をし、花の価値を決めているという例え話です。このように一見すると短所と思われるような気質でも、本人や周囲の人の受け取り方や環境によって、メリットに変えることができます。
「人の顔色をうかがう」というと、他人の評価ばかり気にしている人のように聞こえますが、他人のちょっとした言動からその本心を読み取ることができる人は「洞察力が鋭い」と言い換えられるのではないでしょうか。
人見知りの人は周囲の様子を観察していることが多く、表情や会話の間など言葉以外の情報から他人の感情や意図を読み取るのを得意としています。この能力は人間関係を築く上で重要な役割を果たし、相手への深い理解や共感につながります。ビジネスの場など、「空気を読む」必要があるようなシーンでも大いに役立ちます。
人見知りの人はそうでない人よりも一人で過ごす時間を確保することを重視しています。その結果、それほど重要でない付き合いの場などに時間を費やす必要がなく、一つのことに集中して取り組めます。
また、仕事やプライベートでの作業や趣味など、一度没頭すると周囲の雑音に惑わされることなく驚くほど高い集中力を発揮します。これは勉強や仕事だけでなく、執筆やアートなどの創作活動においても発揮され、優れた成果を生み出す原動力となります。
人見知りの人は他人の気持ちをイメージする力に長けており、細やかな配慮をすることが得意です。
他人のニーズや感情に敏感で、相手のちょっとした表情の変化から、「気をつかってこう言ってはいるけれど、本当はこう思っているのでは?」と想像するなど、小さな変化も見逃しません。
このような観察眼と思慮深さは人間関係を円滑にし、「細かいところまで気づいてくれる人」として周囲から信頼されることも少なくないでしょう。
人見知りの人は表面的な関係よりも、少数で深い人間関係を築くことを好みます。信頼できる人との絆を大切にし、真摯なコミュニケーションを心がけているからです。
普段は寡黙でも、「心を許した相手にだけは本音を話せる」という人もいるかもしれません。一度、打ち解けてしまえば仲良くなりやすい性格でもあります。
人間関係において「広く浅く」ではなく「狭く深く」のアプローチは、長期的に見て安定かつ充実した人間関係を築く基盤となり、深い話をする間柄の友人にするならぴったりのタイプといえるでしょう。
内向的な性格の人はじっくりと思考をめぐらせることを苦と思いません。そのような性質は読書や執筆、アート鑑賞や制作、瞑想などの自己表現を深める活動に向いています。
アート作品などはアーティストが自身の内面を「作品」としてアウトプットしたものというイメージがありますが、創作のためには自分の過去を振り返り、内面を深く掘り下げようとする内省的なやり取りが欠かせません。こうして自分の内面に深く入り込み、それを表現として具現化する作業は、精神的なバランスと充実感をもたらします。
人見知りは長所にもなり得る性質であることをお伝えしましたが、一方で「人見知りを改善したい」「どうにかして克服したい」とお悩みの方もいるでしょう。最後に、人見知りを改善するのに役立つ方法をお伝えします。
日々の中で小さな成功体験を積み、「私はできる!」という感覚を養いましょう。
挨拶や簡単な会話などハードルの低いところから挑戦して、それを継続することで徐々に新しい人とのコミュニケーションに慣れていきます。
成功体験は自信につながり、数か月後には初対面の人を前に堂々と話せている自分に驚くことでしょう。「もっといろんな人と話してみたい」と感じる新しい自分に出会えるかもしれません。
「ありのままの自分」を受け入れる第一歩として、自分の性格を否定するのではなく、深い思考や集中力といった内向的な性格の強みを「自分の長所」と自覚した上で活かす方法を考えてみましょう。
自分自身の価値を認識し、しかるべき場所でそれを発揮すれば周囲の人のあなたに対する見方も変わります。
子供の人見知りは別として、社会に出てからのコミュニケーション能力は「スキル」です。それは、訓練すれば誰でも使いこなせる「テクニック」ともいえます。人見知りの自覚がある人は漠然とした苦手意識を手放し、意識してテクニックを磨くことで人見知りが改善できます。
また、周りに人から好かれている人や、話しているとなぜか明るい気持ちにさせてくれる人がいませんか?そんな身近な“お手本”を見つけて、その人の言葉づかいや振る舞いをちょっとだけ観察してみてください。
しばらく観察していると、会話の切り出し方や間の取り方、相手の話を聞く姿勢や表情、他人に対する敬意の表し方など、その人たちの「人を安心させる雰囲気」や「感じのよさ」を形づくるものが見えてくるはずです。そのような人たちのテクニックを取り入れ、日々の生活の中で実践すれば、コミュニケーション能力は確実に向上します。
深呼吸や瞑想など、自分がリラックスできる方法を身につけておきましょう。
人見知りの人は周囲に人がいる状態で緊張してしまいがちですが、あらかじめ気持ちを落ち着かせる方法を知っておけば、知らない人がたくさんいるシチュエーションでの不安も減少しますし、ストレスの軽減にも役立ちます。
また、人前で緊張するのを防ぐ一種のおまじないとして、「手のひらに人という字を書いて飲み込む」という方法がありますが、それ自体に効果はなくても、自己暗示という意味では有効であるとも考えられます。「これをやっておけば大丈夫」と思えるような、気分を上げる簡単なルーティーンを持っておくといいかもしれません。
趣味のグループや地域のボランティア活動など、前向きな社会活動に参加すると自然と同じ興味を持つ人たちとの交流が生まれます。
さまざまなバックグラウンドを持つ人々とともに、一つの目的に向かって活動する中で生まれる、新しい人や価値観との出会いは人見知りを忘れさせるほどの新鮮な体験になるでしょう。
同じ場所や固定化した人間関係の中だけで過ごすのではなく、自宅や学校、職場とは別の共通の関心を持つ仲間に囲まれた「第3の場所(サードプレイス)」での憩いを持つことは人とのつながりを深め、社交スキルの向上も期待できます。
人見知りは一朝一夕に克服できるものではありません。また、必ずしも克服しないといけないものでもありません。人見知りも人の性質の一部として受け入れ、上手に付き合っていくことで「自分らしさ」を十分に発揮できるという一面もあります。
ただ、少しでも「人見知りを克服したい」という気持ちがあるのなら、意識して人前に立つ機会を作ったり、人との関わりを広げたりするなど、焦らず自分のペースで改善に取り組んでいくことが大切です。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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