2023年12月30日
仕事にも生活にも大きな不足があるわけではないのに、なぜか突然むなしくなる。家事や勉強など、いつも繰り返してきたことに身が入らなくなる――。そんな経験はないでしょうか。
「虚しさ」はどんな時に感じられるもので、その状態から抜け出るにはどうすればいいのでしょうか。虚無感の7つの原因と8つの対処法を解説します。
虚無感の「虚」という字は、虚言や虚栄という言葉からわかるように「うわべだけで中身がない」という意味をもちます。そこに無があわさって「虚無感」となると、その意味は「何物も存在せず、むなしく感じられること」「人生や世の中に対して何も意味や価値を感じられない心の状態」となります。
虚しいという感情は、一時的な気分の落ち込みから深刻な心理的な問題に至るまで、さまざまな形でわき起こるものであり、多くの場合は、喪失感や無力感、孤独感と隣り合う感情として現れます。
虚無感はさまざまな原因が折り重なるように合わさり、引き起こされるものです。その原因は、人それぞれの経験や環境によって変わり、誰もが同じとは限りません。
一日から数日で解消されるストレスではなく、ずるずると長期間つづき、心に折り重なる慢性的なそれは、虚無感を引き起こす大きな原因の一つです。終わりが見えないストレスは、精神をすり減らし、心の活動を弱め、身近な物事に対する興味や喜びから人を遠ざけます。
人生は転機の連続です。離婚したり死別を経ることで、大事な人との関係が失われたり、定年退職を迎えて日常の時間の使い方が変わったり、職を離れることで、肩書や役割を失うこともあるでしょう。そうした転機に伴う喪失感は、それまでの人生の意味を問い直しにつながり、深い虚無感を引き起こすことがあります。
同じ家に住んでいても家族と接触がなかったり、住宅地に住んでいても地域とつながりがないといった「社会的孤立」は、自分は「独りぼっち」だという孤独感につながりやすいもの。そうした孤独感は多くの場合、虚無感へと膨らんでいきます。人間関係の欠如は、自己有用感を見失わせ、人の心に寂しさや生きる虚しさを抱かせることにつながっていくのです。
トラウマとは「心の傷」のことです。災害や事故、暴力や犯罪、性的被害など、その人の生命や存在に強い衝撃をもたらす出来事を体験することによって、生じるといわれます。中でも、幼少時に受けた虐待や被害体験によるトラウマは、その時だけでなく、その後の人生に虚しさの影を落とすようになります。
思いがけない病や体調不良といった健康問題も、虚無感の原因となりやすいもの。好きなものが食べられない、思うように外出ができないといった制約は、慢性的なストレスとなり、日々の暮らしへの興味や喜びを奪うことにつながります。また、うつ病や不安障害などの精神疾患は、生きること、頑張ることへの意欲を失わせる無気力感、虚無感へ影響を与えることがあります。
摂取することで精神に影響を及ぼす「薬物」の乱用は、感情や精神のバランスを不安定にさせます。そうした常態的な不安定さに加え、薬の効果が薄れた後に襲う強烈な不安や精神的混乱が、虚無感を引き起こす可能性があります。
何らかの問題で追い続けた夢をあきらめざるを得なくなったり、自己実現ができないことによる挫折の体験は、努力の意味を見失わせ、虚無感を引き起こしやすいものです。また、一つの物事に没頭するあまり心身を燃え尽かせてしまい、そこから虚無感に陥る場合もあります。
虚無感にさいなまれてしまった場合、そこから抜け出すにはどうしたらいいのでしょうか。有効とされる8つの主な対処法を紹介します。
人とのつながりを増やし、社会の中に居場所を見つけることは孤独感を減らし、「生きている実感」を取り戻すことにつながります。特に友人や家族とのつながりは精神的な支えとなり、虚無感の克服への大きな力となるでしょう。
趣味や興味を追い求め「自分の好きなこと」を見つけることで、人は人生に新たな意味を見出せるようになります。それが虚無感の和らげることにつながるのです。また、趣味を通じて、何かを発見したり創造する喜びを積み重ねることができれば、自己表現の幅が広がり、人生の充実感を感じられるようになるでしょう。
日記をつけることで、一日の自身の感情や思考を整理することができるようになり、自分への理解や存在意義をふくめた「自己認識」を高めることができます。自己認識が高まれば、自然と虚無感も薄らいでいくでしょう。また、自分の気づきや経験、感情の動きを書き留めることによって、これから起こりうる問題を見通し、心の準備ができるようになり、生きる意味の回復にもつながります。
ちょっとしたウォーキングやジョギングを含め、毎日の生活に運動を取り入れることは、ストレスの低減につながり、うつうつとした気分の改善につながるでしょう。また、運動による呼吸や血流の増加、発汗などでエネルギーレベルが高まることにより、生きている手ごたえが増し、虚無感を和らげる助けとなります。
マインドフルネスとは、体の五感を意識を集中させ「今、この瞬間の気持ち」に注意を向けていく心のプロセスをいいます。過去の失敗やネガティブな気持ちにとらわれず、
ありのままの自分を見つめ直すことにより自己認識が高まり、虚無感に対処することができます。また瞑想の習慣によって、自分の感情と向き合い、適度にコントロールできるようになることで、虚しさに支配されることが減っていくでしょう。
壮大すぎず、手の届く範囲の小さな目標をつくり努力を重ねることで、日々の生活に張り合いと方向性が生まれ、虚無感を遠ざけることができます。また、実際に小さな目標を一つひとつクリアする体験は、「自分にもできる」という自己効力感を高めるのに役立ちます。
詰め込み過ぎず、無理をし過ぎず、適度に心身を休める生活習慣は、心身のゆとりを回復させ、虚無感に対処するのに役立ちます。特に睡眠をしっかりととり、栄養バランスに配慮した食事を楽しむようにすることで、生活の充実感が増し、人生の彩りを実感できるようになるでしょう。
対処する気力自体がわかなかったり、虚無感の原因が自分では思いつかない場合は、専門家を頼り、心理療法を受けてみるのも一つです。薬など直接、身体に働きかける 方法を用いず、話を聞いたり、問いかけたりと対話を通じて、何を感じ、なぜ苦しんでいるのかを共に考えていきます。虚無感の根本的な原因を探り、効果的な対処法を見つけ出すのに役立つでしょう。
ご紹介した対処法をやってみても変化がみられず、虚無感が長く続いたり、それに伴う他の心理的な問題も考えられる場合は、自分の努力だけに頼らず、専門家のサポートを受けましょう。自分では気づかない、心の奥底にある不安や葛藤、心配事を潜在意識の観点から整理し、虚無感を引き起こしている原因を、対話しながら探っていくことができるでしょう。
虚無感は、自己診断で放置しておくと、やがてうつなどの精神疾患に発展する場合があります。実際、うつ病の症状には、生きていく虚しさや人生に意味や価値を感じられない状態も含まれます。以前と比べて感情が起きづらくなったり、思考が働かない状況が長く続くようなら、我慢をせず、専門家のサポートを利用しましょう。
つらいのに誰に相談したらよいか分からないという方は、以下の厚生労働省の相談窓口を利用してみましょう。
https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/(働く人のメンタルヘルス·ポータルサイト「こころの耳」)
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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