2024年07月06日
孔子は『論語』の中で40歳を「不惑」と呼び、心理学者のユングは人の一生を太陽の動きになぞらえて「人生の正午」と表現しましたが、実際の40代はまだまだ惑うことだらけ――。
気持ちは若くても、そろそろ肉体の衰えを感じ始める時期ですし、家庭でも仕事でも中心的存在となることが求められる年代でもあります。
毎日、充実しているけれどバタバタと気持ちが落ち着かず、知らず知らずのうちにストレスをためこんでいる人も多いはず。40代にフォーカスを当て、この年代の女性のストレス要因と解消法について考えます。
多くの女性たちにとって40代はさまざまなライフイベントが重なるタイミングです。自身の昇進や子供の成長などの前向きなものもありますが、さまざまなことが同時に起きると対応するのはとても大変です。まずは40代女性のストレスの要因をひも解いてみましょう。
どんなに健康な人でも40代に差しかかると、以前よりも風邪をひきやすくなったり、体調不良が長引いたりと何かしらの体の衰えを感じるもの。
「20代の頃は徹夜しても平気だったのに……」と遠い目をした経験がある人もいるかもしれません。
女性であれば、ちょうど更年期に差しかかるタイミングでもあります。自分ではコントロールできないホルモンバランスの変化により、イライラやほてり、動悸などの症状があらわれることも。
見た目にはわかりにくいため、周囲や家族に気軽に相談できないまま我慢してしまう人もいるでしょう。
20代から働き始めた人であれば職場での立場が上がり、マネージャーやリーダーを任される時期。上からは期待を受けて部下には頼られ、まさに働き盛り。数字を上げる責任やプレッシャーが増すタイミングでもあります。
これからパートや派遣社員で働き始めようという人も、その職場では「未経験の新人」であったとしても、はじめから社会人としての最低限の常識を求められます。
わざわざ丁寧に指導しなくても、その場にあった振る舞いを期待されるのが40代。20代の頃と同じつもりでいると、居心地が悪い思いをするかもしれません。
子供がいる場合は仕事と家庭の両立も大変です。
成長するにつれて子供が自分ひとりでできることは増えますが、それでも習い事の送迎や勉強など、ある程度の親の協力は必要です。
夫サイドの家事や育児への関わりや実家との距離、祖父母の協力があるかないかなど、それぞれの家庭で事情が異なり、他の家のやり方を参考にできないのも難しいところです。
両親の年齢にもよりますが、そろそろ親の介護が現実的になってくる時期です。それが子育ての時期と重なるとかなりの負担になります。
もしも、仕事と育児、そして介護の負担が同じタイミングで一気にのしかかってきたら……そのような状況では自分自身がダウンしてしまってもおかしくありません。
最近は介護される際の希望や方向性などを事前に決めておく親世代もいますが、それでも子供世代の協力は欠かせないでしょう。
たとえ、独身でパートナーも子供もおらず、まだ親の介護を考える必要がなかったとしても「完全にストレスフリー」というわけにはいかないようです。
社会的なプレッシャーという意味でいえば、40代には目に見える「安定や成功」が求められます。
本人が望むと望まざるとにかかわらず、多くの人は他人に対して「この人はこういう人」というわかりやすいラベルをつけて安心したいもの。
結婚や出産について、周囲から「あなたはいつするの?」とせっつかれることもあるかもしれません。
20代の若者が仕事も勉強もせずにぶらぶらしていたとしても、世間的にはモラトリアム(猶予期間)と受け取られますが、40代で同じことをしていたら厳しい視線を向けられます。他人の人生に口出しするのは野暮ですが、これもまたアラフォーの現実です。
一般的な40代女性のストレス要因を並べましたが、ここに当てはまらない事情を抱えている人も少なくないのではないでしょうか。どれをとっても「大変なので、明日からやめます」と簡単に手放せる内容でないのがつらいところです。
今すぐに状況が変えられないなら、目の前の物事に対する自分自身のとらえ方や受け取り方を変えるのもひとつの方法です。
看護師の経験を持つ心理カウンセラーの長谷静香さんは、著書『周りを優先し過ぎるお疲れママのためのご自愛レッスン』(モラロジー道徳教育財団)の冒頭で、「子どもや他者を勇気づける前に大切なこと」としてこのように述べています。
「自分の心が満たされていないと誰かを勇気づけたり、優しくしたりすることはできません。まずは自分で自分をねぎらい、勇気づけましょう。
誰かに優しくされるのを待つのではなく、自分で自分を優しくいたわりましょう。自分ファーストです。(中略)
自分自身を大切にし、勇気づけして勇気のしずくが心にたっぷりとたまって、初めて子どもや他者を勇気づけることができるのです」
人は自分が持っていないものを誰かに与えることはできません。自分本位な言葉に聞こえるかもしれませんが、家庭でも職場でも人をケア(世話)したり、マネジメント(管理)したりする機会が増える40代にこそ、大切にしてほしい考え方です。
前出の長谷さんは、「やりたいこと、やりたくないことを区別する」のも自分を大切にすることにつながるといいます。
普段の自分の行動を可視化し「やらないことリスト」で不要と思える作業を洗い出す。今すぐ手放すことは難しくても、自分の気持ちを尊重しようとする姿勢もまた“ご自愛”です。
「ここで重要になるのは『やらないことを決める』こと。『やらないこと、しないこと』リストの中には、『嫌なこと』『苦手なこと』も含まれるかもしれません。これらを手放すことは、あなたの中の“嫌”という心の声を大切にすることにもつながります。(中略)
そうやって、好き、嫌い、やりたい、やりたくないという心の声を聴いて区別し、自分自身を大切にしていくことで、心の器がつくられていくのです」
心地よく家族との時間を過ごすためのヒントのひとつとして、長谷さんは「心の枠づくり」についても提案しています。
「どんなに親しい間柄、家族でも、自分だけの空間や時間というのは必要です。しかし、家の中で自分だけの空間をつくるのはなかなか難しいものです。
そこで家族よりも十五分ほど早く起床して、あなただけの時間と場所を確保してみませんか?
温かい紅茶やコーヒーを入れて深呼吸をする。ヨガやストレッチをするのもいいですね。朝が難しい方は、子どもたちが寝静まった夜の時間もおすすめです」
「これを実行していると、自然と心の枠も育まれていきます。親の心の枠が育まれていくと、子どもの心の枠の成長にもつながります。自分と子ども、お互いにお互いの時間と空間を大切にできるようになると、自然と心に余裕も生まれてきます」
続いては、40代女性に取り組んでほしい「ストレス解消法」を紹介します。健康維持のための睡眠や規則正しい生活習慣はもちろん、友人との交流や趣味の時間など気持ちが軽くなることを考えてみましょう。
毎日、何時間眠れていますか? 6時間睡眠を2週間続けると、脳は酩酊(めいてい)しているのと同じような状態になり、集中力や注意力がガクンと低下することが知られています。
他国と比べても、日本人の平均睡眠時間は世界の平均よりも約1時間も短いといわれています。なかでも30~50代女性は睡眠時間が「6時間未満」の割合が高く、この世代の日本人女性は世界で最も眠れていないのです。
食事や運動と並び、睡眠は健康の要です。やることが山積みで「寝る時間が確保できない」という人もいるかもしれませんが、それでは疲労がたまっていくばかり。「〇時までには布団に入る」と決めて、十分な睡眠を確保したいものです。
もやもやした思いを人に話して気持ちがスッキリした経験はありませんか?
人は自分の体験や内面に生じた感情を言葉にすることで、ネガティブな感情や葛藤から解放され、安心感を得られます。つまり、人と会話をすること自体がストレスの解消になるのです。
毎回、インパクトのある話である必要はありません。親しい相手となごやかな雰囲気の中、「そういえば、きのうね……」とたわいもない会話をしているだけでも心癒されるものです。
仕事や家事、育児はどれもやりがいがあり、同時に楽しくもありますが「やらなければいけない」という要素が強く、ともすると「やらされている感覚」に陥ることがあります。時には自分の好きなことに没頭する時間を持ちましょう。
ストレスがたまった際は趣味の作業に取り組んだり、次回の予定をイメージしたりすると少しだけ心に余裕が生まれます。少し先に楽しい予定を入れると、毎日のモチベーションにもなり気持ちを明るくしてくれます。
家事代行やベビーシッターを利用するなど、たまには家事や育児を外注してみませんか?
家計に合った価格帯やサービスを提供する業者を見つけて「週1回」「月1回」などと回数を決めて依頼をすると気分転換になり、日々の生活にもメリハリが生まれます。その間を趣味の時間にあてるのもいいですね。
「やらないことリスト」に入れた家事についても、やらないことでストレスが溜まらないように、「これはお金を出して人にお願いする」と割り切ってしまえば、家族も自分も気がラクになるはずです。
40代に入ると職場では上からも下からも頼られる立場となり、家庭ではさまざまなライフイベントが続きます。40代女性は更年期などで体調を崩したり、多忙や睡眠不足からストレスや疲労をためこんだりしがちです。
そのような時は「自分ファースト」や「やらないことリスト」などで自分の気持ちを優先させることも考えてみてください。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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