2024年04月09日
「あの新人は要領が悪い」「私は要領が悪いから……」他人を評価する際も自分に対して使う場合も決していい意味の言葉ではありません。そんな「要領が悪い人」に共通する5つの特徴と背景に隠れた問題について考えます。
要領とは「物事の要点」や「最も大切なところ」を指す言葉です。また、重要なポイントをつかみ、物事をうまく対処する手順やコツでもあります。
そこに「悪い」という形容詞がつくと、要点が理解できないために物事をスムーズかつ効率的に進めることができず、結果的に時間がかかったり周囲との調和がうまく取れなかったりする状態を意味します。
その他に「要領」がつく言い回しでは、説明が拙く話の筋道が立たなかったり、要点がはっきりしないことを「要領を得ない」、一方で物事の要点を理解し、手際のよいやり方で仕事をこなしたりする様子を「要領をつかむ」などと表現します。
要領が悪い人には、周囲から見ても分かりやすい特徴がいくつかあります。ここでは代表的な5つの特徴を紹介します。
要領が悪い人は、決断を下すのに時間がかかる傾向があります。選択肢を検討するのに時間をかけすぎたり、失敗を恐れるあまり行動を起こせなかったりするためです。
早めに周囲に協力を求めれば、すぐに解決するような事案なのに、なぜだかひとりで抱え込んでしまうケースも……。
本人は頭の中で必死に解決策を考えているつもりでも、周囲から見ると決断力のなさが目につき「計画性に欠けている」と思われがちです。その場で必要な判断を先延ばしにすることで、さらに大きな問題へと発展してしまう可能性もあります。
目の前に積みあがった仕事や書類の山。一気に片づけてしまいたいところですが、一度に取りかかれる作業量には限界があります。そのような場合は、より優先度の高いものから段取りよく片づけていくのが仕事の鉄則です。
しかしながら、要領が悪い人は目の前の状況に途方に暮れて、「何から手をつければいいのか」を決めかねてしまいます。
結果的に重要なタスクが後回しになったり、自分の能力や作業量を見誤って同時に多くの仕事を抱え込みすぎたりと、本人にとっても不利益な状況に追い込まれて困ったことに……。その結果、最初の“仕事の山”ができあがってしまうのです。
その場で、何が最優先されるのか分からない――。要領が悪いと言われがちな人の一番の特徴です。
情報の整理が苦手な人が多いようです。パソコンやデスクに保存したフォルダや書類などを雑多にしてしまうせいで、いつも探し物に無駄な時間を費やしています。後のことを考えて、アクセスしやすいシステムを考えたり「効率的にやろう」という意識がなかったりするためです。
そのせいで重要な情報を見落とし、必要なファイルにすぐたどり着けないなど、放っておくと大きな問題に発展してしまうかもしれません。すぐに必要なもの、いつか必要になるもの、不要なものがすべてごっちゃになっています。
ある調査によれば、人は1年間で約150時間も「探し物をすること」に費やしているそうです。ひとつの探し物にかける時間はわずかでも、積み重なるとこれだけの時間を失っているわけです。それが職場であれ家庭であれ、作業の生産性を落としているのは間違いありません。
要領が悪い人は周囲の人に対し、自分の意見や考えをうまく伝えられないことがあります。
伝えたいことやアイデアはたくさんあっても、「わかりやすく伝える」のが不得意で、周囲からは空回りしているように見えてしまうことも……。周囲に協力を求めることができない“甘えベタ”で、チームワークに苦手意識を持っている人も少なくありません。
語彙や読解力がないわけではありませんが、必要な場面でそれを「うまく引き出せない」という問題を抱えています。ところが関係の薄い相手にとって、そんな事情は知りようがないため「あまり有能な人ではないのかな」と思われてしまうなど、どちらかというと損な性格かもしれません。
時間をかけて信頼関係を築くのは得意ですが、短時間でのコミュニケーションでは「決め手に欠ける」と思われ、ビジネスなどでの関係構築においては不利になることがあります。
予期しない問題に対してすばやく反応するのが得意ではありません。
「Aが発生した場合はBのやり方」などのマニュアル通りであれば問題ありませんが、そこから外れた事態が起こった際、臨機応変な対応ができないことがあります。
予定外の事態に直面すると、「いつものやり方と違う!」とパニックに陥って対処が遅れがち……。なかなか頭を切り替えることができず、状況の変化に対応する柔軟性に欠けるようです。
とはいえ、ビジネスでは常に最適解が変わるもの。物事の流れを先読みし、相手や状況に応じて対応や提案を変えるフレキシブルな動きが求められるため、それができないと「融通が利かない」「マニュアル通りにしか動けない」と低評価を受ける可能性があります。
物事の見通しが甘く、計画性が足りず優先順位をつけられない――。その背景にはどのような問題があるのでしょうか?
要領が悪い人は圧倒的に「経験」が足りません。知見があれば「あの時はこうした」とすぐに行動を起こせますが、初めての事態にすぐに対応できないのは当たり前のこと。一度目は手際よく動けなかったとしても、二度、三度と回数を重ねていくことで改善されることも少なくないでしょう。
また、普段から新しい知識やスキルの習得につとめ、自分の中の引き出しを増やしておくと、想定外のことにも対応しやすくなります。
要領が悪い人は、何ごとにも完璧を求めて細部にこだわりすぎてしまい、全体の進行が遅れることがあります。そして、他人から見るとこだわるポイントがズレていることも少なくありません。
後から修正・変更できる箇所は後回しにして、まずは物事の全体像を俯瞰して眺めると、「今やるべきこと」が見えてきます。
ところで、上司に締め切りがある仕事を任された際、早めに70%のものを提出するか、ギリギリまで100%を目指すか。あなたはどちらのタイプですか?
クリエイティブ職など業種によって考え方は異なりますが、前者のほうが効率がいい場合もあります。もし誤認があったとしても、早めに確認しておけば軌道修正ができますし「もっとこうしてみたら?」とアドバイスされた内容も盛り込めるでしょう。後者のやり方で差し戻されてしまった場合、期限までに修正が間に合わないかもしれません。
自己管理ができないと時間の割り振りがうまくいかず、物事を段取りよく進めることができません。
自己管理というのは計画通りに物事を進めることだけでなく、自分自身の健康や精神状態を管理することも指します。普段からできるだけ、自分のコンディションについて意識することを習慣にしたいものです。
要領が悪い人は、必要以上のストレスやプレッシャーを感じている場合があります。
適度なストレスは仕事やスポーツでのパフォーマンスを向上させ、実力以上の力を発揮したり、成長をうながしたりするなどのプラスの効果が知られていますが、過剰なストレスやプレッシャーは逆に判断力や集中力を低下させます。そういう人は、もう少し肩の力を抜く必要がありそうです。
他人のちょっとした仕草が気になり「あの人に嫌われているかも」「何か失礼はなかっただろうか?」などと些細なことで悩むなど、普段の生活でも「気にしすぎる」傾向があるようです。対人関係でのストレスをためがちで、実際には起こっていないことまで気に病んでしまいます。
上司や周囲からの評価が気になり、職場でも自然体で振る舞うことができず、かえって仕事の効率を下げてしまう可能性も。苦手なことに目を向けすぎて自己評価が低く、それがさらに仕事が進まない原因にもなっています。
これを読んでいる方は「秘書」という仕事についてどのようなイメージがありますか? 経営者の一番近くでサポートをする人たち、あるいは政治家の“カバン持ち”をする議員秘書を想像する人もいるかもしれません。
秘書の仕事は航空券の手配などの事務的な作業に始まり、来客の対応、会食や接待の手配、スケジュール管理など多岐にわたります。企業としての意思決定など、自分自身が表に出ずともキーパーソンの傍らで大きな役割を果たす機会もあるでしょう。
上司のペースを尊重しながら、その行動を先読みし、最大限のパフォーマンスを引き出すのは決して容易ではなく、さまざまな分野への高いスキルが求められるハードな仕事です。
続いては、そのようなビジネスの現場で「日本一の秘書」を受賞した女性が、仕事をする上で意識するスケジュールの立て方や考え方を紹介します。
「ココイチ」として知られている「カレーハウスCoCo壱番屋」の創業者、宗次德二氏の秘書を長年にわたり務めた中村由美さんは、著書『仕事に差がつく気配りの教科書』で次のように述べています。
「仕事はさまざまなかかわりを持ちながら完結していきます。例えば、順調に資料を完成させたとしても、確認したり、その資料を活用したい人とのコンタクトが取れていなければ、期限内には完了しません。かかわる事柄の状況が分かっていれば、最短で完結させるためのルートを、どのように取ればよいかが見えてきます」
「ですから、業務を自身の仕事だけこなせばよいと思わないこと。流れを滞らせないように上司や同僚、他部署との連携を図りながら進めることができれば、すべての事柄が迅速に時間内に完結するはずです。つまり、仕事を『点』で考えるのではなく、『線』で捉えることです。点をつなげていくことで、より迅速な処理ができます」
目の前の業務だけではなく、どこでどのような仕事が進行中なのかを把握することで、結果的に自分の仕事の最短ルートが浮かび上がるというわけです。
そんな中村さんは、「第三者的視点があなたを成長させる」といいます。
「もし、何か問題が起きたとき、客観的に物事を捉えることができたら、効率が上がることは間違いないでしょう。なぜなら、仕事で失敗したり、できなかった経験をすると、多くの場合、そこに感情が入り、『いやだ、恥ずかしい』『やりたくない、つらい』という感情に支配され、失敗の修正に向かおうとする意欲を遮ってしまうことが多いからです。
また、つらいと思いつつ、なんとかしようとしても、より悪くなったり、応急処置が取れただけで、解決や改善策に至るまでに多くの時間を要してしまいます」
「そこで、深い傷にしないためにも、冷静に自身の過ちを捉えて、第三者の自分を登場させ、打開策を検討させるのです。『〇〇を間違えたから失敗したんだ。では△△を最優先で行えばよいな』というように。そして、この失敗事をすべて事例集としてまとめるのです。
そうすれば、次に同じようなことが起こっても、『確かこの場合は……』と確認すれば、次の失敗は回避できる可能性が高くなります」
一度目の失敗は予測できないものですが、その時点で問題点を洗い出して早めに改善に取り組めば、同じような失敗は避けられます。
また、中村さんは「感情が入ると時間がかかり、何よりつらくなります。つらくなっても解決には至りません」とネガティブな感情にとらわれることなく、客観的に物事を見て、解決策を考える重要性も強調します。
「そうすれば、効率的かつ迅速に処理しようとする自分しかいないことになりますし、修復はあらゆる手段を考え、その中から選ぶわけですから。処理が早くなります」
ここまで「要領が悪い」と評される人について考えてきました。
決断力がない、優先順位がつけられない、情報整理が苦手、コミュニケーションが不得意――などの代表的な特徴をあげましたが、言い換えれば、それらの要素さえ改善すれば成長の可能性は無限大。むしろ、伸びしろたっぷりです。
「要領が悪い」と「能力がない」は同義ではなく、仕事のやり方やコツをつかむまでのスピード感、そして処理能力の問題でしかありません。
最初は想定外に思えたことも、回数を重ねれば自然と自分の中で“事例”として積みあがっていきます。決断力や優先順位などの問題は多くが経験によって改善されるもの。
気にしすぎて自分らしさを見失うことなく、人生の先輩のアドバイスや周囲の人のやり方を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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