2024年03月29日
地頭(じあたま)という言葉を耳にしたことはありますか? 頭の回転が早い人を「あの子は地頭がいい」などと表現することがありますが、そもそも地頭とはどういう意味なのでしょうか。 地頭がいい人の特徴や、意識して鍛える方法についても紹介します。
明確な定義はありませんが、1を聞いて10を知るような優れた理解力や臨機応変な問題解決能力など、その人の「本来の頭のよさ」を指す言葉です。学校教育などで得たのではない、個人の際立つ能力を表現する際によく使います。
また、新しい情報や状況を即座に把握し、適応する能力の総称として用いられることもあります。目の前で起こる出来事だけでなく、その背景や要因までをも含んだ全体を多面的、かつ俯瞰して見ることができるのです。
このようなタイプの人は、得てして直感的な思考力や柔軟な発想力など、倫理的かつクリエイティブな考え方も備えています。
しばしば「洞察力」「倫理的思考力」などと比較されますが、これらの能力を統合し、さらに直感的な理解や状況適応能力を含む、より広範囲な概念について「地頭」と表現することが多いようです。
洞察力は状況や人物の本質を見抜くことに特化しているのに対し、倫理的思考力は情報を整理し、倫理的に結論を導き出す力です。地頭のよさはこれらを自然に統合し、瞬時に最適な判断を下すことのできる総合的な能力を指しています。
スマホやパソコンで単語を検索すれば、誰でも気軽に欲しい情報を得られる時代になりました。しかしながら、その中から短い時間で「本当に必要な情報」を選び出すのは簡単なことではありません。
これからの時代は知識を蓄積するだけでなく、膨大な情報の中から正しく必要なものを選び出し、それを応用して新しい価値を生み出す「応用力」が求められます。正確な判断力に加え、時代の変化に追いつくため、自分自身をアップデートしようとする柔軟な思考力も重要です。
突発的に複雑な問題が持ち上がることは、ビジネスの現場だけでなく日常生活でも多々ある状況です。
その大小は別にして、新たな問題に直面した際にスムーズな解決に導くためには、問題の本質をすばやく理解し、もともと持っているスキルや倫理的思考を働かせる必要があります。「地頭がいい人」は問題解決能力が高く、解決に向かうための最短の道のりを思い描き、実行へと移すことができます。
あふれる情報の中から重要なものを選び出し、客観的かつ正確な判断を下すためには、目に見える事実だけでなく、その背景をイメージすることが大切です。
「SNSに書いてあったから」「偉い人がこう言っていたから……」などと他人の意見を鵜呑みにするのではなく、ソース(情報源)やデータの信憑性を確かめるのはもちろん、さまざまな要素を考慮しながら、相手や状況に合わせて臨機応変に対応する必要があります。
これまでにない新しいアイデアを生み出すには、柔軟な思考力が求められます。アートや農業などの分野をテクノロジーと組み合わせたり、小さな地方自治体がインバウンドに向けてグローバルな発信を行ったりするなど、これまでにない斬新な発想で、異なる分野をかけ合わせたことで注目される事例が増えています。
このような「ひらめき」は、普段からさまざまな分野に対してアンテナを張っているからこそ生まれるもの。異なる視点や文化に対する理解度が高く、柔軟で革新的な発想ができる人も、また「地頭がいい人」といえるでしょう。
それでは「地頭がいい」といわれる人は、具体的にどのような特徴があるのでしょうか? 5つの特徴をみていきましょう。
「地頭がいい人」は、新しい情報をすばやく理解し、自分の知識と結びつけるのが得意です。物事の芯を捉えるのがうまく、複雑な問題もスピード感をもって処理することができます。
例えば、同じ授業を受けても、周囲の人たちよりも一段階深いところで内容を理解していて、そんなにガリガリと勉強していないにも関わらず、なぜかいつもテストの点数が良かったという人はいませんでしたか。
また、人との会話などで、相手からの情報が足りなくても「この人はきっと、こういうことを言いたいのだろう」と必要な情報を補完して考えることができるのも、地頭がいい人の特徴です。
物事の因果関係を正確に見抜き、倫理的に考えることが得意です。複雑な問題に直面した場合も、すぐに問題の本質を理解して必要な情報を収集・分析することができます。正しい判断を下すことに重きを置いて問題解決に取り組むため、数字やデータと向き合うような専門的な仕事でも力を発揮します。
新しい環境や状況に対して柔軟に対応し、その場に合わせた行動をとる適応力があります。予想もつかなかったハプニングが起こっても、その場でやるべき優先順位をすぐに導き出して、冷静さを失いません。
また、コミュニケーション能力についても同じことがいえます。頭の中で考えたことを分かりやすい言葉にして伝える力に長けている上、知識や雑学が豊富で、相手に合わせた説明もできるので、周囲からは「頭がいいのに話がわかりやすい」と重宝されます。
表面的な情報だけでなく、その背景にある事情を想像するなど、物事の本質を見抜く力を持っています。深い洞察力は正確な分析と有効な戦略を立てるのに役立ちます。
ミステリーや探偵映画などで問題解決の糸口になるのは、だいたいの人が見落とすようなちょっとした違和感だったりします。表面的な情報に引っ張られることなく、小さな違和感に意味を見出し、頭の中で必要な要素と要素をつなげて問題解決へと導くのも、また「地頭がいい人」といえるでしょう。
地頭がいい人は、年齢に関係なく、新しい情報やスキルを習得するのに積極的です。「次のテストでいい点数を取るため」などの一時的な目的のための努力ではなく、内から湧き出る「知りたい!」という知的好奇心に従って能動的に動けるのが、「地頭がいい人」の特徴です。
周囲の目には、学びに貪欲で成長し続けることをやめない努力家や野心的な性格に映ることもありますが、本人としては自分の興味のあることに対して自然体で向き合っているだけ。好奇心が強く、一度「どうして?」と疑問を持ったことを、そのまま放置しておけないタイプです。
その上、自分の仕事や専門に関わることだけでなく、趣味などの幅広い分野に対しても真剣に取り組むので、人によっては音楽やアートなどの分野でひそかにプロ並みの技術を持っていることもあります。
そんな「地頭」ですが、もし鍛えることができるとしたら? 続いては日常生活で意識したい習慣や考え方を紹介します。
さまざまなジャンルの本を読むことで、知識の幅を広げ、倫理的思考を養うことができます。それと同時に「行間を読む読解力」や「語彙力」も自然と身につくことでしょう。
名作と呼ばれるような過去の文学作品は、現代とは異なる当時の生活や人々に興味を持つきっかけになりますし、雑誌から最新の経済ニュースやファッションのトレンドを取り入れるのも楽しいもの。時には難解で前衛的な小説から刺激を受けることもあるかもしれません。
1冊の本との出会いが人生を変えることは少なくありません。多くの成功者は座右の銘のように、人生の節目で何度も読み返すような愛読書を持っています。読書はいつも私たちに「新しい視点」を提供してくれる存在。特に若い頃は選り好みせず、さまざまな年代やジャンルの本を手に取ってみることをお勧めします。
ITにかかわるエンジニア職の人で、トライアスロンやフルマラソンなどのハードなスポーツに夢中になる人たちがいます。パソコンやプログラムを動かすためのコードと向き合う普段の仕事とは一見、真逆のようにも見えますが……。本人たちは、「体を動かすことで新しいアイデアが生まれる」と考え、トレーニングを「自分に向き合う時間」と捉えているといいます。
このように、仕事や家庭とは別のところで取り組む趣味は、クリエイティビティ(創造性)を刺激し、精神的な満足感をもたらします。趣味を通じて、家と職場の往復だけでは出会えなかったような人と会話をしたり、新しい体験をしたりすることもあるでしょう。そういった経験は自分の世界を深める一方、新しい視点に立ってアイデアを生み出す原動力にもなります。
自分の考えや感情を日常的に言語化する習慣をつけておくと、倫理的な思考力を高められます。また、他人との討論や決められたテーマに対し、「賛成か反対か」に分かれて議論するディベートは、「自分はなぜそのように思うのか」を深く考え、異なる視点を持つ他の人の意見にじっくりと耳を傾ける訓練にもなります。
「善悪」や「勝ち負け」では説明できない複雑な問題に取り組み、みんなで力を合わせて「最適解を導き出した」経験は社会や物事が一面的ではないことを理解するきっかけにもなるはずです。
さまざまな人と積極的にコミュニケーションを取ることも、価値観のアップデートには欠かせません。学校の授業や会社などの格式ばったシチュエーションだけではなく、カフェや居酒屋などプライベートでのちょっとした交流も大いに意味があります。自分とは違う立場や年齢、違う文化を持つ人々と接することで、改めて自分の強みや足りない部分が見えてくるものです。
パズルやブロック、謎解きゲームなど頭を使って問題解決を目指すゲームは倫理的なスキルを向上させます。
プロ棋士の藤井聡太氏は幼少期、「キュボロ」という知育玩具で遊んでいたそうです。キュボロは溝や穴のある木製ブロックを組み合わせてルートを作り、そのルートにビー玉を転がして遊ぶスイス製のおもちゃです。
ゴールにたどり着くためには、トンネルなどの見えない部分でのビー玉の動きをイメージし、試行錯誤する必要があります。子供の遊びではありますが、これも課題解決のために「仮説」を立てて、それを検証していくシミュレーションのプロセスです。このような遊びは思考を刺激し空間認知能力を高めます。もしかして、キュボロで遊んだ経験が現在の藤井聡太氏をかたち作っているのかもしれません。
生じてしまった事態を再びもとに戻すことはできませんが、未来に向けて積極的に事態の改善に取り組むことは、誰もが簡単にできることです。
日々の行動や決断について、1日の中で少しだけ「何が良かったのか」あるいは、「どう改善できるのか?」を考える時間を作ってみましょう。意識しなければ時間は決められた方向に流れていくだけですが、少し時間を置いて、冷静な頭で自分の行為や判断を振り返ってみると、その時には見えなかった課題や問題点が浮かんでくるものです。
もし、現在進行中で問題が起こっているのであれば、なんの作戦もなくただ丸腰でぶつかっていくのではなく、「いまの自分には何が足りないのか」「それを補うために何をすべきか」など、できるだけ具体的なプランを描いてから課題に取り組みましょう。
情報やテクノロジーなどの最新技術をただ理解するだけではなく、それらをかけ合わせた応用力が求められる時代。新しい知識や情報に触れ、それを問題解決に生かすなど、さまざまな場面で「地頭がいい人」が求められています。
地頭とは学歴や専門的なスキルだけでなく、異なる視点や文化を理解し柔軟に対応する能力です。その字面から「持って生まれた才能」のような印象を受けますが、大人になってからも、日々の過ごし方や考え方次第で十分に鍛えることができるといえるでしょう。
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
ニューモラルブックストアでは、よりよい仕事生活、よりよい生き方をめざす、すべての人に役立つ本や雑誌、イベントを各種とりそろえています。あなたの人生に寄りそう1冊がきっと見つかります。
歴史を学ぶとメリットがたくさん!過去の教訓を未来に生かそう!
2024年04月03日
「勉強する意味がわからない」と言われたら?子供に響く伝え方のポイント
2024年03月16日
心豊かな生き方が見えてくる
自分をアップデートする月刊誌
ちょっとの心づかいが鍵
人生の困ったを解決する月刊誌
自分・相手・第三者よしをめざす
リーダーのためのビジネス誌