2024年03月16日
子供の頃、親に「勉強しなさい」と急かされた思い出、きっと誰にでもあるのではないでしょうか?
「今からやろうと思っていたのに!」と言い返してけんかになったり、「理由や目的も説明されず、ただ“勉強しろ”とだけ言われても……」と当時はモヤモヤしたりしたはずなのに、そんな自分が大人になって、今度は自分の子に同じことを言っていたら――。
子供たちにどうやって勉強する意味を伝えたらいいのでしょうか。
「勉強」という言葉は「学習する、努力する」という意味ですが、そもそも私たちはなぜ勉強するのでしょうか?まずは勉強する目的について考えます。
小学校に上がる際、子供がまず習得するのは文字の読み書きです。読み書きができるようになると、子供は本の内容を理解し、自分が伝えたいことを文字に書き起こせるようになります。
読み書きという能力を得た子供は、本を読むことによって思考力を養います。そして「もっと知りたい」という意欲が生まれていくように、ひとつの学びが、次の学びへとつながっていくのです。
新しい知識や技能を身につけるために勉強していると、「世界がどんどん広がっていく」感覚を覚えることがあるでしょう。
それは自身が「成長している」という実感でもあります。自分の成長を感じるとそれが自信につながり、学ぶことに対するモチベーションが高まります。
学んだ知識やスキルは、将来のキャリアや人生の選択肢を広げるのに役立ちます。特にひとつの分野に関する専門知識はプロフェッショナルや専門職への道を切り開くのに欠かせません。
必ずしも学んだことを仕事にする必要はありませんが、何かを真剣に勉強した経験は人生の思わぬタイミングで助けになるはずです。
自国の歴史や芸術などの一般的な教養を身につけることは、集団としての絆を深め、社会的責任を担うためにも必要です。学校や会社などコミュニティーでの意思決定にも役立ちます。
勉強は人間が持つ創造性を刺激し、社会にイノベーション(革新)を起こす原動力になります。
一人の力では成し遂げられないようなことも、さまざまな分野の知識を持った人々が集まることで、新しいアイデアや解決策が生まれて実現することがあります。
子供にまっすぐな目で「どうして勉強しなくちゃいけないの?」と問われたら、あなたはすぐに答えられますか?
大人にとっても難しい質問ですから、できるだけわかりやすく説明することを意識しましょう。
年齢や成長に合わせて、子供が理解しやすいよう具体的な例を出しながらシンプルに話すことを心がけましょう。
日常生活や興味がある分野と関連づけながら話すと、子供も「自分ごと」としてとらえやすくなります。
わが子の好きなものを知っていますか?
動物、乗り物、アニメ、アートなどなんでも構いません。子供の好奇心を刺激する内容を意識して説明すると、学ぶことへの興味を引き出せます。
普段から子供が好きな分野に対するアンテナを張っておけば、自然と学びの面白さを伝えることができるでしょう。
ある程度の年齢になったら「目標を持つこと」を意識させるのも効果的です。
目の前に目標があると、子供が自分の中で勉強する目的を明確にする手助けになります。
受験勉強や成績、テストの点数などは結果が目に見えてわかりやすいですが、「いつかこんな人になりたい」「宇宙についてもっと知りたい」など抽象的な将来の夢も、子供にとっては十分なモチベーションとなります。
勉強以外で子供がこれまでやり遂げたことを一緒に思い出してみましょう。
初めて補助輪なしで自転車に乗れた日、初めて25メートルを足をつかずに泳げた日……。最初はうまくできなくても、努力してできるようになった喜びはきっと格別だったはず。
達成感や「自分ならできる」という自己効力感は、大きな課題を乗り越える際の手助けになるはずです。
過去の偉人やテレビや新聞のニュースで見かける“あの人”も最初から天才だったわけではありません。
どの人も、もともとの素質をストイックな努力によって磨き上げ、失敗や挫折を経て今の姿があることを伝えてみましょう。
憧れの人物の成功までの道のりを知ることは子供のやる気を刺激します。
人によって学ぶ内容や分野はそれぞれですが、学校で勉強した経験はさまざまな場所で役立ちます。
学校で学んだ知識はその後の人生において進学やキャリア形成の基盤となるだけでなく、人との関わりや家事などの日常生活でも応用できるはずです。
進学や就職の際に、「自分に向いた学校に行きたい」「向いている仕事がしたい」と思っても、そもそも勉強をしていなければ、「自分は何に対して興味があるのか」「何が得意で何が苦手なのか」もわかりません。
世の中の仕組みや一般的な知識を知ることは、自らの興味の方向性や適性を知る足がかりになります。
母国語を学ぶのが大切なのはもちろん、算数や化学、家庭科など、実は日常で役立つ科目はたくさんあります。
スーパーで合計金額をイメージしながら予算内で買い物をし、買った食材と調味料を使って人数分の料理をする……。夕食の準備ひとつとっても、家庭科だけでなく算数や化学の知識も必要なことがわかるでしょう。
歴史や社会学、文学、芸術などの教養は、自国だけでなく世界の多様な文化や社会的事象を理解するのに役立ちます。
特に思春期において読書はある意味、“話し相手”のような存在でもあります。親にも友達にも言えない悩みを本の世界やその書き手たちと共有することができるからです。
学校で行うグループワークやディスカッションの経験は、コミュニケーション能力とチームで動くスキルを高めます。
人は誰しも一人で生きることはできませんから、これらのスキルは社会に出た後も職場や家庭などのさまざまな場で役立ちます。
学校の課題や定期的な試験は、習得度の確認だけでなく「問題解決スキル」を養うのに役立ちます。
特に定期試験前は、ある程度の期間内で結果(点数)を伸ばす必要がありますが、なんでもかんでもやろうとしても間に合いません。自ら「どこを重点的に復習したらいいのか」を考えるなど、きわめて合理的な取捨選択が求められます。
理科の実験でやったような、先に仮説を立てて、実験して試す(検証)などの方法や、物事の本質を正しく把握し、自らで判断しようとするクリティカルシンキング(批判的思考)の能力は社会に出てからも役立ちます。
教育を受けることは、その人の将来のキャリアの選択肢を広げ、より多くの機会を得るなど精神的、経済的な安定につながります。
さらにもう少し視界を広げてみると、個人的な利益にとどまらず社会としても大きな価値があることに気づきます。
長年、青少年の教育に携わり九州大学名誉教授を務められた岩橋文吉さんは著書『人はなぜ勉強するのか』(モラロジー道徳教育財団刊)で、幕末に多くの人材を育てた吉田松陰の実績から次のように述べています。
「松陰は、人はどんな人でも真実な人生を生きるために学問・勉学をすべきであるとの主張に立っていましたが、その主張は、天が各人すべてに授けた『天性』を確信し、これを尊重することに基づいていました。(中略)松陰はまたこの天性を純金にたとえ、人は誰でもその内面に天性の純金を含んだ金の鉱石のようだと説いています。人は誰でも尊ばれねばならないのは、それがただの石ころではなく内面に純金を含んだ金の鉱石だからです」
自分の内にある「純金」を見つけ出し、それを一生かけて磨き上げ、その輝きを社会や人のために役立たせようとすることこそ、本当の「勉強の意味」といえるのかもしれません。
目標の設定や時間の管理、集中できる場所など「自分に合った学習スタイル」を早い段階で見つけておくと、ストレスなく勉強に取り組みやすくなります。
近年は先生が黒板に書いた内容をノートに書き写すだけでなく、オンラインでの授業やタブレットを使った学習など、学びの方法やツールも広がっています。
インターネットの利用に関しては適切なリソースの活用などの注意点もありますが、新しいツールを取り入れながら上手に活用したいものです。
「千里の道も一歩から」の言葉の通り、日々のわずかな一歩の積み重ねが大きな力になるのが勉強です。
モチベーションを維持するには、目標を明確に設定することが効果的ですが、「どこの大学に合格する」「この会社に入る」
「今日はこのページまで進める」「いつまでにできるようになりたい」などの小さな目標も設定しながら、達成したことをその都度祝うなど、勉強することが義務的にならないよう本人も周囲も心に余裕をもって取り組むのがおすすめです。
「勉強する意味がわからない」。考えたことのある人は多いはずです。
子供に質問された際、「つべこべ言わずにやりなさい!」などと頭ごなしに叱りつけては、そこでお互いに思考停止してしまいます。勉強する意味について疑問を感じた子供は、その意味を知り「もう一歩先に進みたい」という思いを内に秘めています。
親としては物事の本質について考え始めたわが子の成長を感じなが
\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
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