2025年08月02日
「人生が楽しくない」「毎日がつまらない」、そんな気持ちを抱えたまま、なんとなく日々を過ごしていると、ときに時間が過ぎるのが永遠のように感じるものです。明確な原因があれば解決のしようもありますが、実際は「なんとなく楽しくない」という人が大半ではないでしょうか。
ですが、「人生が楽しくない」という感じをただ放っておいたところで、時間が経てば「勝手に楽しくなる」ことはありません。この機会に自分自身の課題を掘り下げて、その背景にある考え方や行動パターンを自覚することから始めてみましょう。
人はどのような時に「人生が楽しくない」と感じるのでしょうか。そもそも人の一生には浮き沈みがあり、いいときがあれば悪いときもあるのは当然ですが、その揺らぎさえも受け入れない心情になってしまうことがあります。
自分の中に問題がある場合もあれば、学校や職場などの人間関係のストレス、仕事や家庭での自分の立ち位置に悩むなど、外的要因が影響している場合もあるでしょう。さまざまな要因が複雑に絡み合う中で、具体的な理由はないけれど「毎日がつまらない」「生きている意味が分からない」と静かに絶望している人もいるかもしれません。
まずは、人生が楽しくないと感じてしまう理由について、分かりやすいものを5つご紹介します。
朝起きて仕事や家事をこなし、夜はスマホを見ながら寝落ち。そんな毎日をただ無気力に繰り返していては新しいことに挑戦する意欲が湧かず、刺激や喜びに鈍感になっていきます。「変わらない日常=安心」と思われがちですが、実は適度な変化や挑戦こそが人生に活力をもたらしてくれるものです。
毎日に停滞感のようなものを感じているのなら、日々に少しだけ“非日常”を取り入れてみましょう。新しい趣味を始めたり、普段と違う道を歩いてみたり、出会いを求めて新しいコミュニティに顔を出してみたり。小さなことでも気持ちをリセットするきっかけになり得ます。
SNSやテレビ、街中で見る他人の「充実した人生」を目の当たりにすると、思わず「自分は全然ダメだな」「私には縁がないこと」と感じてしまいがちです。しかし、SNSに投稿された生活の断片は人に見せるために演出されたものであって、他人の表面的な姿と自分の現実を比較しても意味がありません。
本当に比較すべきなのは、スマホの向こうの「他人の生活」はなく「過去の自分」です。他人からどう見られているかではなく、自分で自分の成長を感じられていることが大切なのです。
「どうせ自分なんて…」「誰の役にも立っていない」。そんなふうに思ってしまうと気持ちが落ち込んで、生きる目的さえ見失っていまいます。自己肯定感が低くなると、他人からの評価に左右されやすくなり「自分の良さ」や「本当にやりたいこと」が見えなくなるもの。そのような状態に陥ると、自分のことを自分で決められず、声が大きい他人の意見に従うことにも疑問を持たなくなってしまいます。
大切なのは「自分の価値は自分で認める」という視点です。他人に認められることをゴールにせず、自分で自分を褒める習慣を持つことで、少しずつ自尊心が育っていきます。
幼い頃に親や教師から、「怒ってはいけない」「泣いてはいけない」などと言われて育つと、子供は「自分の気持ちを伝えてはいけないんだ」と思い込むようになります。そんなふうに感情を抑えつけて我慢ばかりしていると心は疲弊していきます。
本来、自分の気持ちを大切に扱うことは決してわがままではありません。近年、相手を尊重しながらも自分の気持ちや考えを伝えるコミュニケーションとして「アサーション」のスキルが注目されており、企業や学校などでも正しい自己表現の方法を学ぶトレーニングが取り入れられ始めています。
適切な方法での自己表現は避けるべきものではなく、むしろ個人や組織の関係性を円滑にしてくれるという認識が広がっています。
「認められたい」「褒められたい」と感じるのは、人として自然なことです。しかし、それが満たされず続いてしまうと、自分の存在価値に疑問を持つようになります。SNSの“いいね”や他人の評価に過度に依存すると、どんなに頑張っても心が満たされないという悪循環に陥りがちです。まずは自分自身が「よく頑張ってる」と言ってあげることで、少しずつ心の渇きを潤していくことができます。

続いて、人生を「楽しくない」と感じがちな人に表れやすい特徴や傾向を5つご紹介します。どのような特徴が楽しさを遠ざける要因となっているのでしょうか。
「完璧でなければ意味がない」という思い込みが強い人は、自分にも他人にも厳しくなりがちです。少しの失敗でも「ダメだった」と感じてしまい、完璧主義ゆえにせっかくの達成感が「なかったこと」になってしまいます。
何かのテストで70点を取ったとき、あなたはどのような反応をするでしょうか?特に褒められるものでない点数をただ嘆くか、そこに可能性と伸びしろを見出すか。いずれの態度を取るかでその人のその後の人生が大きく変わるのは想像がつくことでしょう。
完璧な人などどこにもいませんから、「完璧であること」を追い求めて自分自身の可能性を信じ切ることができないのは本末転倒です。
優しくて謙虚な人ほど、「嫌われたくない」「迷惑をかけたくない」という思いが強く、普段から他人に遠慮をすることが多いかもしれません。ですが、ずっと本音を言えずに我慢していると、人間関係が良くない状態で固定化されてしまいます。たとえ相手のためを思っての行為であったとして、必ずしもそれが「相手のためになっているわけではない」ということも覚えておきましょう。
「どうせやっても無理だろう」「自分にはできない」という思い込みも自分の可能性を自分で閉ざしてしまうネガティブな思考の癖です。最初からあきらめてしまうことで試行錯誤や挑戦をする楽しさを「放棄している」とも言えます。
とはいえ、自身の考え方の癖やパターンの存在を知っておくだけでも大きな前進。自暴自棄になりそうなときに「またやっちゃった!」と自覚できたのなら、それは自分を客観的に見られている証拠です。
過去のつまずきや後悔を繰り返し思い出し、「また同じことになる」と未来を悲観してしまうと、新しい一歩を踏み出す勇気の灯が消えてしまいます。どんなに後悔したところで過去はもう変えられないのですから、今この瞬間をどう生きるかが、未来の自分につながっていると考えてみましょう。
生きていれば、自分の力ではどうしようもないことに出遭うこともあります。そんなときはシリアスになりすぎず、「まあいいか」「今回はしかたない」とつぶやくと、気持ちを切り替えるきっかけになることがあります。
どんなに良いことが起きても「まだ足りない」と感じている人がいます。不満ばかり言っている傲慢な人のようですが、実際、ポジティブな出来事や小さな喜びには気付きにくく、嫌なことばかりが目に付くのはある意味、自然の摂理です。野生の世界において、過去に危険な思いをした経験をすぐに忘れてしまっては命に関わりますから、厳しい世界で生き残るためにもネガティブな出来事に反応しやすくなっているのです。
一方、人生を楽しんでいる人たちには総じて「自分らしく生きる力」が備わっています。そのような人たちの特徴についてもご紹介しましょう。
目標は「心のエンジン」のようなものです。行き先があるからこそ流されずに確信を持って自分の道を進むことができます。目指すべきゴールがあれば、そこに向かってどのようなことを積み上げていけばいいのか自然と浮かび上がってきます。
「卒業後は海外で働きたい」という具体的な目標があれば、「丁寧な生活がしたい」という抽象的なものもあるかもしれません。実現の可能性に関わらず、毎日がゴールまでの道のりであると考えると、日々の地道な作業にも意味を見出すことができるようになります。
人生を楽しんでいる人はそもそも「誰かに幸せにしてもらおう」とは考えていません。自分の感情や状態を他人任せにするのではなく、自分で自分を満たすことができると考えているからです。
それでいて自分なりの心のバランスを取る方法や気持ちをコントロールする方法も身に付いています。気分が落ち込んだときにお気に入りのカフェで一人時間を過ごしたり、音楽や散歩で気分を切り替えたり。そうした「自分を回復させる術」を知っている人だけが、自分の足で行きたいところに行くことができるのかもしれません。
人生を楽しむ人は「失敗しても学びになる」と考え、挑戦すること自体を楽しもうとするマインドを持っています。新しいことに取り組むとき人は不安や緊張を感じますが、そのプレッシャーは刺激と達成感をもたらしてくれます。勇気を持って一歩踏み出してみると、意外と周囲の人が協力してくれてスムーズに事が進んだりするものです。案ずるよりも生むがやすし。ときにはあれこれ考えず、「やってみたい!」という衝動に素直に従ってみましょう。
人生を楽しむ人の多くは信頼できる人間関係を築き、そのつながりを大切にしています。大切なのは知り合いの数ではなく、そこにある関係の“深さ”。本音で話せる人や悩みに共感してもらえる人がたったひとりいるだけでも驚くほど心が安定します。頻繁に会うことができない相手であっても、「あの人ならこう言うだろうな」とその存在を近くに感じられると、大きな心の支えになります。
麗澤大学特任教授の廣池慶一さんが監修した書籍『とことん優しい人はうまくいく』では、感謝を阻む要素のひとつに“慣れ”があるとして、人間について「良くも悪くも慣れてしまう生き物」と表現しています。
出典:とことん優しい人はうまくいく いい人で損しない3つの原則
目の前の小さな幸せに気づける人は、それだけで人生を楽しむセンスを持っていると言えます。ふとした瞬間に幸せを感じられる。そんな感性を育てていきたいですね。

「毎日を楽しまなきゃ」と無理をする必要はありませんが、自分が変わると見える景色も変わります。ここからは、「人生が楽しくない」という状態から抜け出すための方法をいくつかご紹介します。
人生を楽しいと思えないのであれば、これまでの自分であればやらないような“新しいこと”に挑戦してみませんか?いつもと違う行動を取ると脳細胞のつながり(シナプス)が強化され、メンタル面にも好影響を及ぼすと言われています。
「新しいこと」といっても、自分にとってあまりにもハードルが高いことに取り組む必要はありません。いつもと違う道で出勤する、少し違うテイストのファッションに挑戦する、いつもの店の店員さんと一言二言だけ会話を交わしてみる。週末の過ごし方を見直して、いつもの自分なら行かない場所を訪れてみるのもいいでしょう。
いろいろと考えた結果にいつものお店に落ち着いたとして、普段注文するメニューとは違うものに挑戦するだけでも十分です。
ヴィム・ヴェンダース監督の映画「PERFECT DAYS(パーフェクトデイズ)」は東京を舞台にトイレ清掃を生業とする主人公の日常を描いた映画です。
俳優の役所広司さんが演じる主人公は、寡黙ながら誰よりも丁寧に仕事と向き合う男。決して積極的に人と交流することはありませんが、朝早くから盆栽に霧吹きで水をやり、仕事に向かう車の中でお気に入りのカセットテープをかけ、仕事の合間に訪れる公園では頭上の木漏れ日にカメラを向けて撮影することが日課です。
仕事帰りに通う銭湯といきつけの飲み屋を持ち、夜には布団の中で文庫本を読んで眠るなど、規則的な日々の中に、自分なりの「小さな楽しみ」を見出しています。木漏れ日の写真はまるで主人公の中での「美しい瞬間」を切り取っているようです。人生が楽しくないと悩む人の目には、何気ない日々を愛でる主人公の姿が新鮮に映るのではないでしょうか。
自分と他人を比較して落ち込んでばかりいてもいいことはありません。人の人生は一方向から評価できるような単純なものではなく、さまざまな要素が複雑に絡み合い成り立っています。
誰かにとっては価値ある要素が、違う誰かにとっては価値を持たないということも少なくありません。お互いの違いを理解しようとすることなく、いわゆる世間体や肩書などの一般的な「普通」や「正解」の基準を追い求めても、逆に幸せからは遠ざかっていくことでしょう。
もしも、「正解」というものがあるとするならば、それは人によってまったく違う形をしているはずです。人と比べてその優劣を競うのではなく、自分のペースで目的地にたどりつく方が理想的ではないでしょうか。
私たちが想像する以上に心と身体は密接につながっています。6時間未満の睡眠不足が続くと情緒不安定になり、いつもは気にならない他人の言動に心が乱されるなど感情のコントロールが難しくなるといわれます。
規則正しいタイミングでとるバランスの良い食事は健康管理や1日のリズムを整えるのに有効であるだけでなく、近年はメンタルヘルスにも関連があることが知られるようになりました。
食事や生活リズムを整えることは、同時に「心を整えること」という認識が広がってきたとも言えます。運動不足による筋力の低下なども、活動意欲を減退させることにつながりますので、日頃からウォーキングやストレッチなどの適度な運動を習慣にしておきましょう。
小さな部屋の中でひとり悩みを抱え込んでいると、その存在が実際よりも大きく感じられてしまうものです。そのようなときは信頼できる誰かに、少しだけ心の内を明かしてみてはいかがでしょうか。頭の中にぼんやりと浮かんだ気持ちを改めて言葉にすることで感情が整理され、話す前よりも少しだけ心が軽く感じられることも少なくありません。
人によっては悩み相談を受けた際に「何か解決につながることを言わなければ」と考え、良かれと思ってあれこれと口出しをしてくれる人がいます。その気持ち自体は有り難いことですが、特に具体的な対応を求めていない場合は「アドバイスはいらないから、ちょっと話だけ聞いてくれないかな?」と素直な気持ちを伝えて頼んでみましょう。
どうにも気持ちが晴れないのであれば、思い切って環境を変えてみるのはいかがでしょうか。現実的に可能であれば、部署異動の希望を出したり、引っ越しをしたり、やむを得ない場合は離婚や別離などの関係性の見直しも選択肢です。そこまで踏み切れないという場合は、部屋の模様替えや小旅行などの小さな取り組みでも十分に効果が感じられるはずです。
「何をしても楽しくない」「涙が止まらない」「朝起きるのがつらい」という状態が2週間以上続く場合は、うつ病や不安障害などの症状が影響している可能性があります。
精神的な不調は自分では気づきにくく、我慢しようとするほど悪化してしまうケースも少なくありません。普段の生活で「何かおかしいな」と思ったら、自分ひとりで抱え込むのではなく、心療内科やメンタルクリニック、カウンセリングなどに相談することをお勧めします。
どこに相談したらよいか分からないという方は、以下の厚生労働省の相談窓口を利用してみましょう。
https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/(働く人のメンタルヘルス·ポータルサイト「こころの耳」)
「人生が楽しくない」と感じる背景には、マンネリ化した日々や積み重なったストレス、心身の疲労や思い込みなどさまざまな要素が影響しています。「人生が楽しくない」という思いが頭から離れず、ずっと深い穴の中にいるような感覚でいるという人もいるかもしれません。
そのようなときは、ぜひ「人生に激しく浮き沈みがある時期があれば、波のない凪(なぎ)の時間もある」ということを思い出してください。いま「楽しくない」からといって自暴自棄に過ごすのではなく、再び泳ぎ出すための力をためる時期と考えてみると少しだけ心が軽くなるはずです。

\ この記事の監修者 /
ニューモラル 仕事と生き方ラボ
ニューモラルは「New(新しい)」と「Moral(道徳)」の掛け合わせから生まれた言葉です。学校で習った道徳から一歩進み、社会の中で生きる私たち大人が、毎日を心穏やかに、自分らしく生きるために欠かせない「人間力」を高めるための“新しい”考え方、道筋を提供しています。
ニューモラルブックストアでは、よりよい仕事生活、よりよい生き方をめざす、すべての人に役立つ本や雑誌、イベントを各種とりそろえています。あなたの人生に寄りそう1冊がきっと見つかります。



自分を変えるための方法とは?人間は自分を変えることはできる?
2025年07月28日
2025年06月16日
2025年06月11日
自分は何もできないと思ってしまうのはなぜ?抜け出すためには?
2025年03月18日
2025年02月28日
2024年08月14日
自己中心的な人と上手に付き合う方法は?自己中心的になってしまう要因や直し方も紹介
2024年05月29日
品がある人の特徴とは?絶対にやってはいけない品がない行動も紹介
2024年02月21日
気配りができる人、できない人の特徴とは?身につけるための方法も紹介
2024年02月09日
2024年01月24日
2024年01月13日
存在意義を感じられない理由とは?見出すための具体的な方法を紹介
2023年12月20日
2023年12月11日
2023年10月31日
礼儀とマナーの違いとは?人間関係を豊かにする日本特有のマナー
2023年10月13日

