リーダーに求められる人間力とは?~働きながら人間力を高める方法も解説

ECブログ

「自分でやったほうが早いのに、人に動いてもらうってほんとうに大変……」。

リーダーの経験者なら誰しも一度は、このような気持ちを抱いたことがあるのではないでしょうか。どうすれば、めざす方向に向かってメンバーを動かすことができるのか。上から目線で人を操作する強権型リーダーが社会の支持を失い、同じ目線でメンバーと心を結ぶ共感型が必要とされる今、リーダーには高い人間力が求められます。

では、その人間力とはどのような能力で、どうすれば高めることができるのでしょうか。詳しく解説します。

目次△▼△

人間力とは

まずは「人間力とはどんな能力なのか」から見ていきましょう。内閣府が立ち上げた専門の研究会では、人間力を「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義づけています。

「総合的」とは、いくつかの要素がまとまって構成される力ということです。

その要素は次の3つであるとしています。

「知的能力的要素」と「社会・対人間力的要素」、そして「自己制御的要素」の3つです。

1 知的能力的要素

1つ目は「知的能力的要素」。具体的には、学校で身につけるベーシックな知的能力および専門的な知識やノウハウを活用する力であり、またそれらを継続的に高めていく力のこと。また、その応用として、筋道を立てて考え合理的に答えを出す「論理的思考力」や、従来の枠組みにとらわれず独創的な答えを出す「創造力」を含めたものが「知的能力的要素」です。

2 社会・対人関係力的要素

2つ目は「社会・対人関係力的要素」。身近な人との関わりだけでなく、異なる文化・世代・立場の人ともよき関係性をつくり、協働、連携していく力です。また、社会という大きな関わりの中に自分は存在するという自覚のもと、自分だけでなく、相手や社会全体がよくなるよう選択や判断ができ、積極的に行動できる力を含めたものが「社会・対人関係的要素」です。

3 自己制御的要素

3つ目は「自己制御的要素」です。思い描く目標に向かって、自分を正しく方向づける力です。誰しも生きていれば大小の試練や困難に出くわします。思い通りにいかない現実を前にして自分を見失わないためには、あるがままの自分を素直に受け容れ、拠り所となる信念を意識し、前向きに取り組む意欲を回復させる必要があります。衝動、欲求が暴走しないよう制御し、逆境を耐え抜く力、目標に向かってやり抜く力を含めたものが「自己制御的要素」です。

リーダーに求められる人間力とは

次に「リーダー」に求められる人間力の要素について見ていきましょう。

人や組織をめざす方向へ導くリーダーには、通常より高い対人影響力が必要です。「この人についていこう」と思われるような信頼度、「『あの人は嫌な人だ』という人がいない」というような好感度がなかったら、どのようなメッセ―ジを発しようとメンバーの心には届かないでしょう。そうしたポジティブな影響力をもつためには、まず「信頼できる人であること」が大前提です。そのうえで、異なる文化・世代・立場の人ともよき関係性をつくり、協働、連帯していくことができる「コミュニケーション能力」、さらに状況を打破するための「決断力と実行力」。この3つの要素が欠かせません。順にみていきましょう。

1 信頼できる人であること

共感型のリーダーに最も求められるのは「信頼できる人であること」。周囲から不信の念を持たれたり、疑いの目を向けられるようでは、いくら言葉を尽くしたところで影響力は発揮できません。そのリーダーが信頼できる人であるかどうか。それが最も試されるのは、思いがけない逆境に直面した時です。困難を前にして真っ先に自己保身に走ったり、原因を他に求めて感情をあらわにするようでは当然、人の心は離れていくでしょう。リーダーの高い「自己制御的要素」は、どのような時も「誠実な姿勢」を貫く人として評価され、周囲の信頼を集めることにつながります。あわせて余裕がない時でも、相手を尊重し、人の話に誠実に耳を傾ける対人関係の姿勢も重要です。

2 決断力や実行力があること

めざす方向へ向かってメンバーのやる気を高め、チームの連帯をつくりだす実行力、そして、リスクを踏まえつつ迅速かつ的確な選択をくだす決断力が、リーダーには求められます。そうした決断力と実行力を身につけるには、筋道を立てて合理的な答えを出す論理的思考力や、大義のためには自らの狭い利益にとらわれず、正しい選択ができる道徳的能力を日ごろから意識して高めていくことが必要です。

3 コミュニケーション能力があること

リーダーがどんなに優れた構想、ビジョンを持っていたとしても、それがメンバーに伝わらなければ、誰も共感せず、自ら動こうとはしないでしょう。現状や課題を共有し、なぜ変革の必要があるかを伝え、ありたい未来像を共に分かち合う。リーダーには、確かなコミュニケーション能力が求められます。それはメンバーを説得する話術というより、メンバーの納得と共感を引き出す思いの力であり、表現力ともいえるでしょう。

リーダーシップがあること

リーダーシップと聞くと「それは組織の上位者だけが発揮するもので、自分には関係がない」と思う人が少なくないようです。リーダーシップとは、人や組織をめざす方向へ導いていく働きのことをいいます。そこにはカリスマ性や権限は必ずしも必要ではありません。

それは信頼できる人であること、リーダーとして決断する覚悟があること、周囲の声に耳を傾け、受け容れるコミュニケーションがとれること。要は、上位者であるか否かに関わらず、周りに「ついていきたい」と思わせる人間力さえあれば、誰もが発揮できるのがリーダーシップです。

リーダーの人間力を高める方法

ではリーダーが自身の人間力を高めていくには、どのような方法があるのでしょうか。

それがもし日常の暮らしや仕事を離れ、特別な場所で特別な修養を必要するものだとしたら、限られた人にしか高められないことになってしまいます。ここでは誰もが日常の生活の中で、また働きながら、人間力の向上に取り組むことができる方法を、ステップ別にご紹介します。

【ステップ1】省みる(自分を理解する)

人間力を高める第1ステップは「自分を理解する」ことです。リーダーシップは唯一絶対の正解のないものであり、状況に応じて最適なものが決まるといわれますが、人間力にも同じことがいえます。仕事も人生も常に変化の連続であり、危機的な状況もあれば、変動の少ない穏やかな時もあるでしょう。自分と価値観の合うメンバーばかりの状況には強いが、合わない人ばかりでは人間力は発揮できないとなると、効果が限定的になってしまいます。

どのような状況でも、リーダーが安定して人間力を発揮するには、まず自分自身の強みや弱み、日ごろどのような基準や価値観に基づいて判断をしているか等、理解しておくことが重要です。

変革に挑むリーダーは、未知の困難に直面することが少なくありません。思い通りにいかない現実を前にしてひるんだり、自分を見失うことがないよう、自身の考え方のクセや物事の受け止め方の傾向などを客観的に分析し、理解しておくのです。

具体的には、1日の中に自分の行動や感情を客観的に観察する「自己反省」の時間を持つようにしましょう。一代で世界的企業をつくりあげた松下幸之助(1894-1989)の言葉に「朝に発意、昼は実行、そして夕べに反省」とあります。朝に考えを起こし、日中をその考えを実行に移し、1日の終わりには、よかったことよくなかったことを振り返って反省する。

そのサイクルを松下幸之助は自身の習慣としていたといわれます。

反省は後悔とは違い、過去を消極的に回想することではありません。自分自身を冷静に省みて「不完全な自分」を自覚すること。それは言葉を変えれば、自分の現在地を確認し、未来に向けてポジティブな軌道修正をしたり、成長の“伸びしろ”を発見したりするための積極的なアクションです。

【ステップ2】与える(他者に配慮する)

人間力を高める第2のステップは「他者に配慮する」ことです。

リーダーがめざす方向へ向かって、チームの実行力を上げていくためには、独断専行ではなく、メンバーの理解と納得、共感のプロセスを積み上げていくことが重要です。一人ひとり個性も価値観も異なるメンバーと心を通わせるには、相手に応じて伝え方やフォローの仕方を柔軟に変えていく「相手主体」の対応が求められます。

他者との関係性をよくする基本は、自分がされたらイヤなことは人にもしないこと、自分がされて嬉しいことは人にも与えること、この2つです。自分が「よかれ」と思ってやっている行動が、本当に相手のニーズや満足につながっているのか。「何をするか」という行動面だけでなく、「なぜするのか」という自身の動機や目的それ自体が、自分本位ではなく、相手本位になっているかを確認する習慣をもちましょう。

一方、リーダーは変革へとチームを先導するのが役目であり、メンバーに気を使いすぎて勢いを弱めたり、最大公約数的な落としどころで事を収めていては、めざすところにたどり着けません。時としてメンバーの意に反する決断を下さねばならない時も、心の中ではメンバーへの感謝やその将来の幸せを祈る姿勢が大切です。自分の方針に賛同しないメンバーを心の中で遠ざけたり、不幸を祈っていると、それが知らず知らず表情や態度に表れてメンバーに伝わり、関係性を壊します。

ここでいう「祈り」とは、特定の場所や形式にとらわれません。脳裏に相手の顔を浮かべ、そっと心で手を合わせるイメージです。どのような時も、周囲にポジティブなエネルギーを与え続けられる習慣が、リーダーの人間力を高めます。

【ステップ3】高みをめざす(考え方の転換)

人間力を高める第3のステップは、リーダー自身の「考え方の転換」です。

メンバーにどれだけ指示され、信頼してフォローされるかどうかは、最終的にリーダーの「本気さ」にかかっています。目標に至るまでやり通す姿勢、そのビジョンを必ず実現させるという情熱や覚悟が、どれだけあるか。美辞麗句ばかり語り、本気さが見えないリーダーは、誰も本気でついていこうとしないものです。

では「本気さ」を感じるリーダーとそうでないリーダーの差はどこにあるのでしょうか。

それは人生の「目的」をどこに置いているかの違いです。

世界のハイクラスがひそかに実践する「人間力」の高め方を、独自にまとめ上げ、発信を続ける作法家の三枝理枝子さんは著書『幸せを感じる人間力の高め方』の中で、次のように述べています。

「人間力のある人は、心はいつまでも成長できることを知っています。歩く道にも高い道と低い道があります。自分自身の心と向き合い、自分を慎み、良心をきちんと働かすことができただろうかと自分に問いかけ、自分の心を掘り下げていく。そんな『高みをめざす歩み』ができるかどうかが、人間力の分かれ目です。人に善きことをしたときに、自分の利益や自己満足という『利』のためにやったのか、それとも人や世の中という『義』のためにやったのか。人間力の高い人は、『義』のために行動します。人に認められなくても、賞賛を得られなくても、感謝されなくても、よいことを人知れずしていこうと努力し続けるのです。高いところに目的を置いて生きようとします」

(三枝理枝子『幸せを感じる人間力の高め方』モラロジー道徳教育財団刊)

高いところに目的を置く生き方。それは言葉を換えると、偶然と思える不運や困難をも自分の考え方や行動が招いたものであると受け止め、考え方の改善を通じて自分の運命を変え、未来を積極的に切り開いていこうとする生き方です。

自分が発した言葉、行った行動に責任をとらないリーダーは信頼されません。

考え方が変えると言葉が変わり、言葉が変われば行動が変わります。行動はやがて習慣をつくり、習慣が人格をつくり、そして人格が運命を変える。考え方の変革に挑む姿勢と生き方が、リーダーの人間力を高めます。 

まとめ

「人間力」は、内面的な能力のため、努力の成果を定量的に測定したり、確認することが難しい一面があります。人間力を確実に高めるコツは、何が獲得できたかという結果ばかりに注目せず、よい習慣を日々コツコツと積み上げる、その行為自体に集中することです。

高みをめざして人生に向き合い、人間力を積み上げるプロセス自体を楽しんで、取り組みましょう。

この記事の監修者

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