2023年11月17日
私の気持ち、本当に分かってくれているのかな?――人と会話をする中で、そのような不安を感じたことはないでしょうか。
「うれしい」「楽しい」という気持ちで話し始めたとしても、聞き手がまったく共感を示してくれなければ、むなしい気持ちになるものです。一方、「つらい」「悲しい」という気持ちを訴えたとき、共感しながら丁寧に話を聞いてくれる人がいたら、それだけでも張り詰めた気持ちが少し和らぐのではないでしょうか。
プライベートでもビジネスシーンでも、良好なコミュニケーションに必要とされる「共感力」。今回は、その高め方について考えてみましょう。
共感とは、他人の感情や意見・主張などに対して、自分も「まったくその通りだ」と感じることをいいます。英語のシンパシー(sympathy)、あるいはエンパシー(empathy)に相当する言葉とされます。
相手が自分の話に共感してくれると、会話が弾み、あっという間に時間が過ぎてしまうものです。その会話は単に楽しいというだけでなく、自分の気持ちが楽になったり、相手に対する親しみが増したりする効果もあるのではないでしょうか。そして自分も相手に共感を寄せていけば、人間関係はますます深まることでしょう。
相手に対する共感を示すときは、何に気をつけたらよいのでしょうか。そのポイントは、主に以下の3点です。
「相手の意見を否定しないこと」が大前提であることは、言うまでもありません。
もし自分は相手と異なる考えを持っていたとしても、相手の話を遮るようにして頭ごなしに否定すれば、相手は口も心も閉ざしてしまうのではないでしょうか。意見を伝えたい場合は、相手の話をいったん受け止めた上で、「こういう考え方もあるんじゃないかな」というように、相手の心情に十分配慮しながら行いたいものです。
「昨日は、この仕事だけで3時間もかかっちゃって……」
「3時間もかかったんだ! それは大変だったね」
このように、話し手が使ったフレーズの一部を繰り返すと、話し手は「自分の話をきちんと聞いてくれているな」と感じることができます。それが「自分の気持ちを分かってもらえた」という実感につながっていくのではないでしょうか。
この「繰り返し」は、お互いの認識にズレがないかを確認しながら話を進めていく上でも有効といえるでしょう。
これも基本的なことですが、「相手の顔をきちんと見る」というのも大切なことです。
家庭の中でも、相手が自分に向けて話していることは分かっているのに、スマホに目を落としたまま生返事……などという態度では、「ちょっと! 聞いているの!?」と、相手の怒りを買ってしまいますよね。
話し手のほうをきちんと向いて、目を合わせたりうなずいたりしながら聞いてこそ、話し手は「自分の話にしっかり耳を傾けてくれているんだな」という安心感を持つのでしょう。
相手の顔をしっかり見ると、表情の変化にも気づくことになります。それもまた、相手の心情への理解を深めることにつながっていくのではないでしょうか。
「この1週間くらいで、急に寒くなってきたよね。もうコートを着たほうがいいかなって、毎朝出かける前に迷っちゃう」
相手がこう言ったとき、皆さんならどのような言葉を返すでしょうか。例えば……。
「ほんと、寒いよね! 朝晩は特に冷え込むから……」
このような共感を示したら、きっとお互い笑顔になって、その後の会話も弾んでいくのではないでしょうか。
一方、悪気はなかったとしても、無愛想に「まだ11月だよ?」とか「寒いなら、着れば?」などという一言で切り返したら、おそらく相手は「この人、私とは話をする気がないのかも……」と感じて、会話を続けにくくなってしまうでしょう。その場の雰囲気も気まずいものになりそうです。
自分も相手も気持ちよく会話を楽しむ上では、共感が不可欠なのです。
皆さんが「一緒にいると安心できる」と思う相手は、どのような人でしょうか。
「自分の存在を心から受け入れてくれる、と感じられる」
「ちょっと話をしただけで、なんだか心がすっきりしてくるし、勇気づけられる。だから、また話をしたくなる」
そのような人が「共感力の高い人」といえるのではないでしょうか。そうした人たちの共通点を探ってみると、主に以下の2つの特徴があるといえそうです。
共感力の高い人は、常に周囲の人たちに関心を持ちながら接しています。相手は今、どのような気持ちでいるのか。何に関心を持っているのか。どういった考え方をする傾向があるのか……。そうしたことに心を寄せる習慣がある人は、時と場合に応じて、一人ひとりに寄り添った受け答えができます。一人ひとりにしっかりと心を向けてこそ、今の相手が必要としている言葉も、相手が何を望んでいるのかも、さらには相手の長所や美点も見えてくるものです。共感上手――それは「一人ひとりを尊重する姿勢の現れ」ともいうことができるでしょう。
共感力の高い人は、相手の話を表面的に聞くだけでなく、その言葉の裏側にある心情を感じ取り、相手はなぜそう思ったのかまでを想像しながら話を聞くことができます。
話し手の心の内を理解する上では、話そのものの内容だけでなく、表情の変化や声のトーン、身振り手振りなども重要な手がかりになります。これは、裏を返せば「話を聞く側」の表情や声のトーン、態度なども、相手に「あなたの話をちゃんと聞いていますよ」という安心感を与える材料になるということでしょう。共感上手な人は、そうしたことをよく理解し、適切な表現ができているからこそ、周囲に「話しやすい人」という印象を与えているのではないでしょうか。
日々に接する人たちと、どのような姿勢で向き合うのか。そうした自分自身の考え方と行動次第で、人間関係は良くも悪くもなります。
私たちが自分の人生を喜びの多いものにするためには、やはり周囲の人たちも笑顔になった上で、その相手との間に「潤いのある人間関係」を築いていく必要があります。そのためにはまず、みずからが率先して身近な人たちに対する思いやりの心を行動で示していくことが大切ではないでしょうか。
そこでは「相手の人格を尊重し、受け入れる心」や「相手の喜びや悲しみに共感する心」が欠かせません。日常の人間関係の中でも、相手の心に寄り添う「共感」という思いやりがあってこそ、心のつながりが深まっていくのです。
そして身近に接する人たちに対する「共感」を心がける中で、相手の笑顔に触れることができたなら、きっと自分自身も喜びを感じることになるのではないでしょうか。
今よりもほんの少しだけ、心の中の優しい思いを「共感」という形で表してみませんか。そうした日常の小さな心がけが、周囲の人たちの心を温めるだけでなく、みずからの人生を潤していくことになるのです。
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