廣池千九郎の72年の生涯における学問的業績と心と魂の軌跡と人間像を、時代背景やエピソードも交えて詳細に描く。モラロジーの創建に対する熱い思いが伝わってくる書。
今日の道徳的な危機を見通して大著『道徳科学の論文』を著し、「普遍的なモラル」「世界平和と人類の幸福を実現する総合人間学」を提示した人・廣池千九郎。本書は、この総合人間学モラロジーの創建者である廣池千九郎の心と魂の軌跡を分かりやすく詳細に描いた初めての伝記です。
学者として、道徳の実践者として世界平和と人類の幸福に尽くした廣池千九郎の軌跡と精神は、本書を通して、後世に生きる私たちに「人としての生き方」「世界と国のあり方」「教育の真髄」等を鮮やかに伝えているといえます。
若い人たちをはじめ、多くの方々にお勧めしたい一冊です。
【主な内容】
1866年、大分県中津市に生まれた廣池は、苦学の末に教育者となり、夜間学校の設立や修身の教科書を編纂するなど、地域の教育改革に取り組みました。その後、歴史学者として数々の論文・書物を著し、法学を学んで早稲田大学講師や神宮皇学館教授を歴任。また、国家的大事業となる日本最大の事典『古事類苑』の編纂に従事し、「東洋法制史」の新学問分野を開拓するなど、学者として多くの業績を残しました。
しかし1912年、独学で東京帝国大学を通じて法学博士の学位を取得すると同時に、死の宣告を受けるという大病におかされます。
この境地の中でみずから精神的な大転換を成し遂げた廣池は、その後二十余年で、それまでの学者としての研究成果と体験を踏まえてモラロジーを創建し、併せてモラロジーに基づく学校教育と社会教育(生涯教育)を展開したのです。
本書は、この廣池千九郎の波乱万丈の生涯を、日記や遺稿(約十七万枚)、研究書等に基づいてまとめられたものですが、時代背景や多くのエピソードも描かれているとともに、引用は現代用語に書き直され、たいへん読みやすく編集されています。