ちょっとしたつぶやき~学校のちょっといい話~

 A中学校の三年生の学級担任をした時のことです。
 進路指導で大切な二学期に、私の学級の生徒で学校の番長であるN君が「先生、俺だって本当は高校へ進学したいんだ。」と私につぶやきました。「そう、何とか先生も君の願いに協力しましょう。後で連絡するからね。」と言って、私は職員室にもどりました。そこで、私は、「N君が、高校へ行きたいと言ってきました。私一人では無理だから誰か協力してくれませんか。」と同学年の先生方に呼びかけました。すると、S先生が「応援するよ。」と応えてくれました。そして、S先生と二人で特別に教えることになりました。このことをN君に話すと、「俺、やってみる。」という返事があり、やることに決まりました。放課後は仲間と一緒に帰宅し、七時ごろ彼一人が再登校して勉強の特訓を受けるものでした。彼はしっかりとやり通しました。今思うと「よくやったなあ。」と思います。
 ところが、受験した高校の合格発表の日に、彼はなかなか発表を見に行けずにいました。午後になると、「俺は不合格でも仕方がない。でも、面倒を見てくださった先生をがっかりさせたくない。」と言いながら、合格発表を見に行きました。その日の夕方遅く、彼は合格の通知の入った封筒を持って学校に帰ってきました。残っていた私たち教員は彼を全員で胴上げし、一緒に喜びを味わいました。このできごとは、下級生にも伝わり、その年以後、番長の継続がなくなり、学校の荒廃を止めるきっかけとなりました。

(『学校のちょっといい話』より)