「先生って、差別をしない先生だね。」~がんばる先生奮闘記~

 六年生を受け持つことになり、身の引き締まる思いで児童の登校を待ち、始業式の日を迎えました。最高学年になるという生き生きとした表情と、受け持ちの先生は誰かなという真剣な思いが感じられました。やがて校長からクラス名と私の名前が紹介されると、声が上がり子どもたちの喜びと私への期待が感じられ、担任としての責任の重さをかみしめました。
 四十二名の児童の顔と名前を一人ずつ確認し、私の自己紹介とクラスへの強い期待を伝えました。
 入学式のために六年生児童が受け持つ役割の中に、一年生の補助係があります。早速学級指導の時間に児童に聞いてみました。
「女子二名で一年生のお世話をする係を希望する人はいますか。」と聞くと、二人の女子がサッと手を挙げました。そして、「他に希望する人はいませんか。」と続けると反応がないので、「K子さんとT子さん、お願いします。」と話すと、二人はとても喜んで顔を見合わせていました。続いて別の係の人選に進み、授業が終わりました。
 やがて教室に児童が少なくなった時、二人がやってきて、「先生って、差別をしない先生だね。」「本当だね。」と、喜びを込めて話しかけてきました。私が、「本当、嬉しいね」と返すと、「五年生の時は、私たち一回も選ばれなかったから…。」と言い残し、二人はいそいそと教室から外へ遊びに出ていきました。
 私は、子どもの口から「差別」という言葉を聞くのは初めてで、五年目の教員の私には何か深い意味の言葉として心に残りました。
 K子とT子は、「本当に一年生のお世話をする係をやりたかったのだなあ」とつくづく感じました。
 翌日二人は、一年生のクラスへ行き、先生と打合せをした後、準備やお手伝いをしている姿を垣間見ることができました。
いよいよ入学式。二人は可愛い新入生のお世話をしながら少し緊張して入場してきました。私は、音楽部の指揮をしながら様子をみていました。二人が目立たぬようにお世話をしている姿に感心しました。
 翌日からは朝早く登校すると直ぐに一年生の教室へ行き、歌をうたったり、お絵かきをしたりと、楽しく過ごして学級へ戻ってきた。しばらくして教室に戻って来たので、私は二人に「よく頑張ったね、一年生がおねえさんといって喜んでいたよ、ありがとう。」と感謝の気持ちを伝えました。二人は喜びと満足の表情を浮かべました。
 私は、二人の「先生って、差別をしない先生だね。」「本当だね。」という言葉から差別をしないことの大切さを学びました。その後私の教師人生の大切な教育理念となったのです。

(『がんばる先生奮闘記』より)