「先⽣のクラスにはなりたくありません。」 ~がんばる先生奮闘記~

「⼆度と先⽣のクラスにはなりたくありません。」
 退職を控えた⼆⽉の個⼈懇談で、ある保護者に⾔われたこの⼀⾔により、私の教員⼈⽣は⼤きく変わることになりました。
 退職まであと⼀ヶ⽉となっていた時に、まさかの⾔葉でした。
「先⽣はとても素晴らしい⼈だと思うけど、うちの⼦のことをちゃんと⾒てくれていない、他の⼦たちと同じようにしっかり愛情を注いでくれていない、⼆度と先⽣のクラスにはなりたくない。」そう⾔われ、懇談後に職員室で、泣き崩れたのを昨⽇のことのように覚えています。
 悲しさや悔しさ、毎⽇⼀⽣懸命に心を尽くしてきたつもりなのに、なぜ?どうして?という気持ちがあったものの、このままこの⼦の⼀年を終わらせるわけにはいかない。そう⾔われるということには私に責任がある、そう思い直して、次の⽇からどうやって関わっていくべきか、主任や恩師に一緒に考えていただき、⾃分なりの答えを導き出し、残りの時間を過ごすことにしました。まず、毎⽇その保護者に、幼稚園での⼦どもの様⼦を伝えること。どんなに些細なことでもいいから、「こんな遊びをした。こんな発⾔をした。」、と細かく伝えるようにしました。そして、その⼦とは、今まで以上に丁寧に関わるようにし、⼀⽇⼀回必ず抱きしめた。クラス全員に同じように愛情を注いでいたつもりでしたが、いつの間にか「しっかりしているから私がいなくてもできるだろう。」と思っていたことにも気づきました。
 きっとそのお⺟さんも、私に伝えることに勇気が必要だっただろうに、最後の懇談で伝えてくれ、私に最後のチャンスを与えてくださったんだと思うと、感謝の気持ちがわきあがってきましあた。そして何より、ご家族みなさんが、どうか今⽇⼀⽇幸せに過ごせますように、と毎朝お祈りすることができました。
 そうして迎えた終業式の⽇、退職の挨拶を終えた私の元にやってきて、「先⽣のクラスになれて、本当に幸せでした。いつも愛情いっぱいに⾒てくれて、本当にありがとうございました。来年もうちの⼦を⾒てほしかったです。」とお⾔葉をくださった。先⽣とはどうあるべきか、どう関わっていくべきかなど、いろいろなことを考えるきっかけをくださり、私を本当の幼稚園教諭にしてくれたそのお⺟さんと⼦どもに、今はとても感謝しています。

(『がんばる先生奮闘記』より)