異年齢の関わりの中で育つ思いやりの心や責任感 ~がんばる先生奮闘記~

 以前勤務していた幼稚園型認定こども園は、3歳から5歳、全園児で10名あまりの小さな園でした。異年齢で一緒に遊ぶ姿が日常的に見られ、年上の子どもが年下の子どものお手本になったり世話をしたりする活動も、様々な機会に無理なく行われていました。
 松江城に行った遠足や「忍者修行」の種目を取り入れた運動会など、行事をきっかけに始まった「忍者村で遊ぼう」の活動でも、全園児が一緒になって遊んでいました。巧技台を使った修行場、手裏剣や額当てなどの忍者の道具作りなど、遊びはどんどん盛り上がっていきました。4、5歳児が1学期に作っていた段ボールの家は、塗り替えられて「忍者屋敷」になりました。「お城も作りたいな」。教師が持ち込んだ大きな段ボールはお城の壁になりました。自分たちが色を塗り、石垣も描いたその壁を、子どもたちは大きな積み木を積み上げて挟んでみたりひもで結んでみたりと、試行錯誤しながら組み立てました。
 次に4、5歳の子どもたちがしたことは、3歳から5歳までみんなが楽しめるように、巧技台の修行場を、毎朝組み替えることでした。はしごや一本橋の高さなど、3歳の子どもたちも安全に、でも少しは挑戦できるようにと話し合い、担任と一緒に組み替えていました。修行場では、子どもたちは感心するくらい整然と並び、安全に遊んでいました。ゆっくりしか進めない友達を待つ子どもたちからは、「がんばれ」の言葉は聞こえても「速く!」という言葉は聞こえませんでした。
 さらに、もっと3歳に楽しんでもらいたいと、4、5歳の子どもたちが考えた遊びは「宝さがし」でした。「探していいよ」の声を合図に、遊戯室を飛び出した3歳児。「近い、近い」「このへんだよ」と4、5歳児。次々と宝が見つかっていく中、A君はなかなか宝を見つけることができません。それで5歳児のB君が「ここにあるよ」と宝の隠し場所を教えてあげたのです。その場所は4、5歳児の保育室にある「色画用紙の切れ端を入れておく箱」でした。保育室中に散らばった色画用紙の切れ端。その真ん中にA君。「うわあ、片付けるの大変だあ」。私は思わず心の中でつぶやきました。一方、A君は「あった!」と、満面の笑みを浮かべていました。それを見ている教員も子どもたちもみんな笑顔です。「見つかってよかったねえ。」「がんばったねえ。」だれもが一緒になって喜んでいます。「宝さがし」のお宝がやっと見つかったのです。A君は散らばった色画用紙はそのままに、「あったよお!」と大喜びで遊戯室にいる先生に宝物を見せに行きました。
 宝さがしが無事に終わり、片付けの時間です。「あの色画用紙はだれが片付けるのかなあ。」と私は4、5歳の保育室に行ってみました。そこにはB君がいて「ここはぼくが一人でかたづけるから、みんなは他のところをかたづけてください。」とはっきりと宣言していました。保育者たちもB君の思いを認め、片付けの時間を十分にとるようにしました。B君は散らばっていた色画用紙をみんな元の箱に入れ、保育室を掃き、最後の最後まで、自分一人の力で片付けたのです。
 この活動では、まず、教師が子どもたちの思いを受け止め、そこから一緒に遊びをつくっていくことを大切にしました。また、4、5歳の子どもたちが、3歳の子どもたちの気持ちを考えながら、自分たちが主体的に遊びを進めていくことのできる場も多くありました。そのような経験を通して、年上の子どもたちは、3歳の子どもたちの気持ちに寄り添いながら、自分たちがどのように行動すればよいのかを考え、思いやりや責任感のある姿を見せてくれたのだろうと思います。子どもも教師も心温まる「忍者村で遊ぼう」の活動になりました。

(『がんばる先生奮闘記』より)