継続は力なり~学校のちょっといい話~

 私は中高一貫校で数学を教えています。O君を知ったのは彼が中学二年生のときでした。私はO君のクラスの担当ではありませんでしたが、中学二年生の他のクラスを担当しており、O君の答案を採点する機会がありました。O君の答案はほとんどが空白、たまに書いてあっても間違っていて、どのテストでもとてもよく目立っていました。
 彼が中学三年生になると、私はO君の授業担当になりました。実際にかかわってみると、O君は返事も大きく声はハキハキとして、理解力もあって、そんなにできないようには思えませんでした。ただ覚えることが特に苦手だったようです。漢字や英単語も全く覚えられない様子でした。話を聞くと、数学は中学一年生の途中で分からなくなったとのことでした。一年間授業を担当しましたが、数学の成績はそれほど上がりませんでした。
 中高一貫の学校なので、高校には上がることができます。しかし、高校は一年から二年に上がるために、試験である程度の成績をとって単位を認められなければなりません。O君は数学と英語が特にできなかったため、高校入学前から二年生に上がれないのではないかと、担任の先生や部活動の先生から心配されていました。そこで、部活動の先生から、私の空いている時間に数学を見てやってくれないかという相談を受け、O君に対する特別授業は、高校入学前の春休みから始まりました。中学一年の内容から始め、春休み中に何とか中学二年生程度の連立方程式が解けるようになりました。
 高校入学後、私はO君の学年の担当ではなくなりましたが、「毎日昼休みに私のところへ来い。」というと「はい!」と元気な返事をし、本当に毎日来るのです。月曜から金曜まで毎日十分から二十分程度、土曜日は一時間程度の特別授業です。O君は記憶が苦手なので、昨日できた問題が今日はできないこともよくありましたが、三日ほど同じような問題を続けるとできるようになります。一学期の間は高校の授業についていくのが精いっぱいでしたが、なんとかついていくことができました。夏休みには中学三年生程度の展開・因数分解を特訓し、これまで覚えられなかった公式も使えるようになりました。そして、高校二年になると平均点を超えられるほどになりました。勉強の仕方や、自分もやればできることが分かったのか、数学だけでなく英語や他の教科の成績も伸び、すっかり高校の授業にもついていくことができるようになったようです。
 O君は高校二年生の三月までの二年間、可能な日は毎日昼休みに私の所へ来ました。英語には最後まで苦労しました。進級を心配されるほどであったO君も無事卒業することができました。

(『学校のちょっといい話』より)