「仕事をする上で大切なこと」 西岡常一氏に学ぶ

こんにちは。広報出版部『所報』担当の前川です。
今から38年ほど前に、ある匠から「仕事をするうえで大切なこと」を教えてもらったときのエピソードをご紹介します。

当時、『れいろう』誌の「心に残る話」を担当していた私は、外部識者に原稿の執筆をお願いするため、執筆要項のほかに原稿用紙と返信用封筒も同封していました。
ある日、見覚えのある封筒で一通の原稿が届きました。その差出人(執筆者)は、鵤(いかるが)寺(でらの)工(たくみ)・薬師寺工で知られる西岡(にしおか)常(つね)一(かず)氏でした。原稿依頼からすでに2年ほどが経過していたので、さすがに驚いたと同時に、“ありがたい“と感謝の気持ちで受け取り、すぐ開封しました。中には丁重なお手紙まで添えられており、そこには人格者・西岡常一氏の姿を見るようでした。

いただいた原稿のタイトルは「木の命 木の心」

その内容は、「日本の文化は木の文化といわれておりますが」の書き出しで始まり、「純木造の法隆寺伽藍、薬師寺東塔、唐招提寺、法起寺三重塔等は、創建よりより千数百年、大自然の風雪に耐えて、今日なお巍(き)然(ぜん)として国の歩みを無言のうちに語り続けております。私はここに現実としての木の命を見、木の心魂を見る心地がいたします」(昭和58年9月号掲載)と続いていました。

西岡氏は、厳格な祖父(常吉氏)の薫陶を受け、大工としての道具の研ぎ方をはじめ、棟梁としての基本はもちろん、礼儀作法も徹底的に叩き込まれたそうです。祖父の勧めで農学校に進み、実習を重ねるうちに「土の命」も知ることになります。祖父は、西岡氏に生命の尊さと土の性質によって生命も変化することを学ばせようとしたのです。こうして農学校時代は、西岡氏にとって、将来、棟梁としての必要な資質を涵養する貴重な時期となったようです。

西岡氏の記事が
『ニューモラル 心を育てる言葉366日』にも登場!!

ここで、西岡氏の記事が『ニューモラル 心を育てる言葉366日』(12月24日)“物には「いのち」がある”の表題で掲載されていますので、ご紹介します。

―― 宮大工の西岡常一氏(1908~1995)は、木には二つの「いのち」があると言っています。一つは、木のいのちとしての樹齢。もう一つは、木が用材として生かされてからの耐用年数のことだそうです。西岡氏は言います。
「木は大自然が生み育てた命ですな。木は物やありません。生きものです。人間もまた生きものですな。木も人も自然の分身ですがな。この物いわぬ木とよう話し合って、命ある建物に変えてやるのが大工の仕事ですわ」(『木のいのち木のこころ(天)』草思社)
この言葉からは、自然に対する謙虚さ、さらに「いのち」を活(い)かしていく自分の仕事に対する責任感と誇りを感じます。 ――

西岡氏の奥深い名言から学ぶ

「物いわぬ木とよう話し合って、命ある建物に変えてやるのが大工の仕事ですわ」

この奥深い名言に、現在、「法人機関紙」の編集に身を置く者として、あらためて

  • 1)読者が何を求めているかを把握
  • 2)文字(活字)を通して、必要とする情報を分かりやすく、かつ正確に伝えることを常に意識し、ベストを尽くす

      という、「仕事をするうえで大切なこと」を教えられた気がします。